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十分すぎる程の幸福感

 そして『にほん』では十五歳からの結婚は認められておらず、しかもここ最近では三十代で初婚というのも珍しくなく、その為ソウイチロウ様から見れば、まだ私は異性ではなく子供として見られている可能性が高いという事である。


 それはなんだか、嫌だな……。と思ってしまう。


 そんな事を思いながら一行はショッピングモールと呼ばれる、王城が丸ごと収まってしまいそうな巨大な建物…というより、街? のような建物の中へと入って行くのだけれども、私は未だにミヤーコから教えて貰った極意を実践できずにいた。


 しかしながら、今の私とソウイチロウ様は単なる男女ではなく夫婦なのである。


 ミヤーコの言う通りここで躊躇して何だというのだ。例えミヤーコから教わった極意が通用しなかったとしても夫婦である事が解消されるわけではないのだ。


 そう、ソウイチロウ様の妻は私なのだ。何を怖がる必要がある。


 そう思い私は勇気を振り絞り行動へと移す。


「おぉ……っ」

「だ、ダメでしょうか……?」

「いや、シャーリーが良いのならば別にいいのだが、もし『妻として』だとか『貴族へ嫁いだ者として』という考えならば無理にそうする必要はないぞ?」

「そ、そういうのではなくて……わ、私はソウイチロウ様とこうしたいから、私の意志でこうしているのです」


 そして私は勇気を振り絞りソウイチロウ様の腕に私の腕を絡める。


 ただそれだけの事で私の心臓は壊れたかの様に鼓動が早くなり、足には力が入らず、顔はほてってしまい、まるで私の身体ではないようだ。


「……そうか。分かった。だが、何事にも順序というものがあると俺は思うんだ。だから最初は腕を組むよりも手を握る事から始めようか」

「は、はい……っ」


 そんな私の頭をソウイチロウ様は優しく撫でた後、私の手を握ってくれる。


 たったそれだけの事で、ソウイチロウ様から私の手を握ってくれるだけで私は、とても幸せな感情になる。


 あぁ、本当に私はソウイチロウ様の事を好きなのですね。


 そう確信を得るのには十分すぎる程の幸福感であった。

 




「シャーリー、ちょっと今時間大丈夫か?」

「はい、大丈夫ですけれども……何か私に用事でしょうか?」


 『にほん』を一日体験してから数週間後。


 ソウイチロウ様が珍しく私に用事があるらしく呼び止めてくる。


「急に呼び出してすまんな」

「い、いえ……」

「それでわざわざ呼び出した理由なんだが……」


 来たっ!


 シノミヤ家に嫁いで来て今までいわゆる夜のアレが無かったのである。


 しかしながらここにきてようやっと私はソウイチロウ様に夜、寝室に呼ばれたのだ。


 そしてソウイチロウ様のこの緊張した面持ち、それはまさにそうなのだろう。


 ソウイチロウ様とて男爵とは言えども貴族。


 いつかはそういう行為をして跡継ぎを作らなければならず、貴族である以上その事からは逃げる事はできないのである。


 私もその事は重々承知しており、覚悟は嫁ぐことが決まったその時からしていたのだけれども、いざその時が来た今、私は心臓が壊れるのかと思うくらい鼓動は早くなり、緊張で呼吸もうまくできない程である。


 けれども、私は今日、ソウイチロウ様とそういう行為をするのだと思うと緊張よりも嬉しさの方が勝る。


「は、はい……っ!」

「今日国王陛下から手紙が届いてな……」

「えぇ、大丈夫です。私もその覚悟はしておりましたから…………へ?」

「ほう、さすがシャーリーだな。既にある程度は予想がついていたという事か。なら話は早い。実は来月の半ばに国王陛下の生誕祭のパーティーが王城で行われており俺も招待された。毎年断っていたのだが、今回は国王陛下と相談して参加する流れになっているのだがどうする? 勿論シャーリーが行きたくないと言うのであれば今回も辞退するつもりだし、それに関しては元々俺も行くつもりは無かったから気に病む事は無い。純粋にシャーリーの気持ちを言ってもらえればと思う」


 あれ? 私の早とちり……?


 その事に気付いた私は急に恥ずかしくなり、今すぐにでもこの部屋から逃げ出して布団の中に籠りたくなるのを必死に耐え凌ぐ。


「大丈夫か……?」

「だ、大丈夫ですわ……っ」


 本当は羞恥心から暴走しそうで大丈夫ではないのだが、その理由を説明できるわけもなく私は大丈夫だと返事をする。


「確かにシャーリーにとっては酷な質問かとは思うが……シャーリーの判断を尊重するからどのような理由であり行きたくないと言うのであればそれで良いと思っている」


 そして私はソウイチロウ様に気付かれないように深呼吸をして、今回の話を頭の中で纏めていく。


「因みに、そのパーティーへ行くと国王陛下からの面白いサプライズが見られるから行って見るのも良いとは俺は思うぞ?」


 そんな私を見たソウイチロウ様はパーティーへ出席したときのメリットを教えてくれる。


 恐らくソウイチロウ様は私が、元婚約者と、その元婚約者が私に行った行為にトラウマを抱いていると思っているのであろう事が窺えてくる。


 確かに、婚約破棄された当初であれば、トラウマまではいかないまでも会いたくない、顔も見たくないと思っていた事だろう。



続きが気になる、面白いと思った方は評価とブックマークをしていただけると嬉しいですっ!!(*'▽')ノ

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