表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妹大好き姉の内緒のお手伝い  作者: 蔵河 志樹
第五章 アニスとシズア、初めて旅に出る
88/329

5-21. アニスとシズアは調査を進める

「では、あの被害者はザンデと名乗っていたのですね」

「はい。あの防具をザンデが着けていたのは良く見ていましたしも、防具に付いている印にも見覚えがあります」


「しかし、冒険者プレートにはカマルンドと書いてありましたけど」

「その名は聞いたことがありません。この村に来る前に使っていた名なのかも知れませんが、ここではずっとザンデと名乗っていました」


村長のエヴァンスは、シズアの問いに丁寧に答えた。


ここはサリエラ村の村長の家の応接間。

アニス達が死体を発見したのは二日前の夕方。日が(かげ)りつつあったため、本格的な現場検証を行ったのは翌朝になってからだった。

春告草とも手分けして、辺り一体を隈無く調べたものの、証拠になりそうなものは何も見付からず。


仕方なくその場での調査は切り上ることとし、往きと同じ経路を反対方向に辿って、一日半かけてサリエラ村へ。

真っ直ぐ村長の家に行き、エヴァンスに事情を説明した後、青年団長のヤエルも交えて死体の検分をした。


それで得られた手掛かりが、冒険者登録したときに渡される冒険者プレートだったのだが、そこに書かれた名前には心当たりが無いらしい。


「では、ザンデについてご存知のことを教えて貰えますか?」

「彼がここに来たのは五年ほど前のことでしたか。それまでは冒険者をやっていたそうですが、年を重ねて衰えを感じてきたところに、足を怪我したので引退したと話していました。何故ここにと尋ねたら、米が旨いからだとだけ。それ以来、ここに住みついたのです。

ご承知のように村の特産品は米ですが、彼は米は作らずに季節の野菜を育てる程度で。でも、たまに魔獣の駆除をやってくれましたから、儂らとしては助かっていました」


「彼を最後に見たのは何時ですか?」

「三週間ほど前でしょうか?今年は例年に増して雨が少ないと話していたときに、川の水量も減っているように思うと話していたのを覚えています」


ふんふんと頷きながらシズアは手帳にメモを取る。


シズアの隣に座っているのはアニスではなくリョウとカズ。アニスはシズアの後ろに立っていた。

シズアの目の前にはエヴァンス。だがそこで、シズアはエヴァンスの隣に目を向ける。


「では、ヤエルはどうですか?」


死体検分のあと、ヤエルも村長の家に来ていた。


「俺も、その話をした時が最後だったと思う」

「そうですか」


メモを取る手を止めて、シズアは二人の様子を伺う。


「その時に、巨大(せき)に行く話はしていましたか?」

「何も言ってなかったな」

「ですね」

「ふむ」


シズアは手帳を眺めながら、手にしていたペンの柄で頬を二度ばかり叩く。


「ザンデは魔法は使えましたか?」

「風魔法が使えると聞いたことがある」

「探索魔法が得意だと言ってました。近くに魔獣がいれば確実に分かると自慢してましたよ。実際、何度も魔獣を狩っていましたし、本当の話だと思います」


「ザンデは風の探索魔法が得意、と」


口に出しながらメモを書くと、上目遣いに二人を見る。


「魔獣狩りは一人で?」

「大抵はそうですね。若いのを鍛えて欲しいと頼んだのですが、冒険者をやっていない奴は使えないから駄目だと言われまして」

「あいつが連れていっていたのはテッドくらいだな。テッドは冒険者をやっていたことがあるし、ゴーレムを使えるんで役に立つからと」

「なら、テッドが何か知っているかも知れませんね。後でテッドにも話を聞いてみましょう」


シズアは眼鏡のつるを摘まみ、眼鏡の位置を直す仕草をすると、再びペンを握った。


(ちな)みに、ザンデとテッドの仲はどうでしたか?」


「あまり親密には見えなかったな」

「そうですね。まあ、ザンデは誰にもぶっきらぼうで、テッドについて特別何かあるようには見えませんでしたが、テッドはあまりザンデに近付きたがりませんでしたね」


「でも、一緒に魔獣狩りには行っていたと?」

「魔獣狩りは村のためでしたし、ザンデの腕が立つのは分かっていましたから、テッドとしては仕方なくだったのかも知れません」


シズアはメモを書き終えると、手帳を閉じた。


「お話ありがとうございます。それで、ザンデの家の中を調べたいのですけど、誰に許可を取れば?」

「彼には身寄りがありませんから、村の管理になります。なので、私の許可があればですが――」


そこでエヴァンスは一旦言葉を切った。


「貴女方は冒険者でしたよね。何故ザンデが死んだことについて調べているのでしょうか?」


まったくもってごもっともな疑問だ。

シズアは至極当然のように聞き取りをしているのだが、アニスから見れば、何の権利も無さそうに見えていたし、エヴァンスもそう思ったのだろう。


しかし、そんな質問にもシズアは怯まない。


「勿論、私が名探偵シズア先生だからです」

「あの、素人さんですよね?」

「素人でも名探偵ですが、何か?」


凄い。ビクともしない。


「あの、これがもし事件なら、捜査するのは憲兵の仕事ではないかと思うのですが」


シズアの勢いに押されつつも、エヴァンスはしっかりと聞き返す。


「そうですね。私は憲兵の仕事をするつもりはありません。ただ、真実を明らかにしたいだけです」


そこでシズアは姿勢を正す。


「ねぇ村長。貴方は憲兵が来るまでこの件を放置しておきたいのですか?遅くなればなるほど、真実が明らかになる可能性が遠退きますが」

「それは――でも、憲兵が――」


エヴァンスの表情に迷いの色が見える。


「では、こうしましょう。私達は憲兵が来るまで調査をする。憲兵が来たら、それまでの調査結果を憲兵にお渡しして、憲兵の指示に従います。それで問題ないですよね」

「――分かりました。それでお願いします」


結局、エヴァンスが折れた。


シズア達はヤエルにザンデの家まで連れていって貰うことになり、ザンデと共に村長の家を出た。


案内役のヤエルとシズアが先に歩き、そこにアニスがくっ付いて行く。その後ろに春告草が続く。

ヤエルの家は、同じ村の壁の中。それほど遠くはない。が、途中、ヤエルは前方から好都合な人物が来るのに気付いて声を掛けた。


「ようテッド、こちらの探偵の先生がお前と話したいそうだ」


テッドは、ヤエルが指し示したシズアを見て、眉を潜めた。


「先生、俺に何か用か?」


どうやらテッドの魔法を破ったことから、シズアが先生であることは認めているらしい。

となると、何かを警戒されているのだろうか。


「貴方は川の上流に巨大な(せき)()き止められた湖があることは知ってますよね?」

「い、いやぁ、俺は知らない」


そう言うテッドの目が泳いでいるように見える。


「そうですか」


そんなテッドの様子を気に掛けること無く、シズアは話を続ける。


「その湖の底の堰のすぐ脇のところで、ザンデの水死体が見付かりました。貴方はザンデとたまに魔獣狩りに出掛けていたと聞いたのですが、何か気付いたことがないかと思いまして」

「お、俺はあいつとは親しくは無いし。すみません、先を急ぐので」


そう言うと、テッドはそそくさと立ち去ってしまった。


「シズ、行っちゃったけど、良いの?」

「うん、まあ。それより今はザンデの家に行かないと」


シズアがヤエルに視線を向ける。と、ヤエルは再び歩き始めた。


ザンデの家は村の北西部、村を囲う壁の近くにあった。

古びた平屋建ての家は、最低限の手入れしかされていないように見える。


ヤエルが玄関の扉を開け、先に中へと入っていった。

続いてアニス、それからシズアと春告草の面々。


玄関から入ってすぐは、リビング兼ダイニングのような部屋で、食卓やソファが置いてある。暫く人の出入りがなかったために少し埃っぽいが、汚れてはいない。


その部屋には、幾つかの扉があった。

各々が違う扉を開き、その向こう側の様子を見ていたところ、エイミーが声を上げた。


「この部屋、紙が散乱してる」


そのままエイミーが中に入ろうとするが、シズアの声に阻まれる。


「エイミー、待って。証拠が見つかるかもしれないから」


呼び止められて固まったエイミーの脇から、部屋の中を覗き込むシズア。


「何かを探していたのかも知れないわね」

「何を探してたのかな?」


シズアの更に後ろから覗き込もうとするアニス。


「さぁ。これだけ散らかっていると、探し物が見付かったかどうかも分からないわね。でも、証拠を残してくれているかも知れないわ」

「証拠って何?」


首を傾げるアニスに、シズアが笑い掛ける。


「それは、これよ」


シズアは、右手の人差し指を伸ばしてみせた。

シズア先生、強いですね。名探偵とか言い切ってしまっていましたが、凄い度胸と言うか、何と言うか。それくらい肝が座っていたから、村長を言い任せたのかも知れません。


連日投稿は終わりと言いつつ、書けてしまったので投稿します。が、今度こそ次は間が空きます。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ