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妹大好き姉の内緒のお手伝い  作者: 蔵河 志樹
第四章 アニスとシズア、転機を迎える
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4-8. アニスとシズアは夜のダンジョンに潜る

アニス達は二輪車に股がり、真っ暗な道を小ダンジョンに向けて走っていた。

運転しているのはシズア。ヘッドライトは点けているものの、後部座席に座っているアニスには、まったくと言って良いほど関係なかった。


もっとも、目で見えなくとも、ウィンドサーチ(風の探索魔法)を付与したイヤリングに魔力を通して周囲の様子は把握できている。それはシズアも同じだろう。

ヘッドライトはどちらかと言えば、道の上にいる動物などに対して近づくものがあると知らせるため。シズアはライトを取り付けていたアニスにそう話していた。


街の門は閉じられていたが、門番に頼んで脇の小扉を開けて貰った。

子供が何故この時間にと訝しく見られても、冒険者証を見せてダンジョンに行くと伝えれば簡単に納得して貰えた。冒険者と言う身分は、結構便利なものだ。


「シズ、小ダンジョンの入口って割りと直ぐだよね」


街の西門を出たところで、シズアの後ろからアニスが声を掛ける。


「ええ、もうすぐそこに見えてくる筈。あっ、あった看板、ほらっ」


起動していたウィンドサーチの魔法が左前方に何かがあると教えてくれている。アニスがシズアの左脇から顔を出し前方に目を向けると、二輪車のヘッドライトに照らされたダンジョン入口の看板が視界に入った。


シズアが二輪車の速度を落とし、左に体重を寄せて看板の手前を左に曲がる。そこからシズアは二輪車の速度は上げず、そのまま先へと進ませた。

それから少しして廃墟となった村に二輪車が差し掛かった辺りで、奥の方が明るくなっているのが見えた。


「あの明かりは何だろう?」

「さあ」


二人の疑問は廃墟の奥へと進む中で解消した。

小ダンジョンの入口となっている昔の祈祷所の前に幾人かの人が立っていて、その辺りを照らすように複数の光の玉が宙に浮いていたのだ。


その集団の中に、昼間冒険者ギルドで出会ったチャウもいた。

チャウは二人の到着に気付き、手を振っている。

そのチャウの右隣りは、チャウより背が高いが同年代と思われるブロンドで巻き毛の女性冒険者、反対の左隣りは壮年に差し掛かったくらいに見える旅装束の男女、その隣に若い冒険者姿の男性が二人。


きっと旅装束の男女がチャウ達の依頼主の芸術家夫婦、両脇がチャウのパーティー仲間なのだろう。

そんなチャウ達が並んでいる前にシズアが二輪車を停めると、芸術家の二人が前に出て来た。


「おおっ、もしかして噂の魔動二輪車と言うものではないですかっ?何と言うかトキメキを感じまっす。これを眺めていると新しい曲のイメージが湧いて来そうでっす」

「あーら、なんてエレガントなボディなの。早速デッサンをしなくては」


妙なテンションで舞い上がっている男性に、クロッキー帳とパステルを取り出し絵を描き始める女性。


予想も付かない二人の動きに、若干引き気味のアニスとシズア。

そこにチャウが近付いて来る。


「約束通りに来てくれてありがとうございますぅ」

「時間には遅れていないよね?建物の中で待っているかと思ったら、皆で外にいたから吃驚したよ」


アニスは後部座席から降りて、チャウに向き合う。


「はい、まだ集合時間にはなっていないんですけど、お二人がアニス達の到着を外で待ちたいって言われたので」

「そうなんだ。それで、後ろの三人はチャウのお仲間なんだよね?」

「はい。こっちが虹色の翼のリーダーのアマンダで、そっちはマイケルに人狼族のジェフですぅ」


チャウの紹介を受けて、一人ずつ前に出て来てアニスと挨拶を交わす。アマンダは土魔法が得意、マイケルは水魔法、ジェフは闇魔法とのことで、それはアニスの魔力眼で視た通りだった。チャウは光魔法を得意としていて、この場を照らす明かりもチャウの出した光の玉だそうだ。


さて、シズアは相変わらず夫婦に囲まれて動けずにいた。

困った表情でアニスを見ているので、そろそろ助け出すかとアニスが歩み寄る。


「あの、全員集まったので、ダンジョンに向かおうかと思うんですけど」


そう語り掛けながら魔力眼で夫婦を観察する。夫の方は魔力が殆ど感じられず、妻の方は風魔法が得意そうだ。


「ああ、そうでっす。私達は星爪コウモリを捕まえに来たのでした。ハニー、名残惜しいところではありますが、ダンジョンに行きますよ。おっと、申し遅れましたが、私はプラナラ子爵様お抱え音楽家のペーターと申しまっす。こちらは妻で画家のパティでっす」

「よろしくどうぞ。可愛い冒険者様方」


「あ、どうも。アニスです。こっちは妹のシズア」


アニスは夫婦の感性が良く分からないまま声を掛けたので、もう少し粘られるのかと予想していたが、想定外に聞き分けが良くて拍子抜けした感じだった。お蔭で幾分ぞんざいになってしまった挨拶についても、夫婦が気にして無さそうなので助かった思いでいた。


一行は、それから昔の祈祷所の建物に入り、奥の階段をダンジョンへと下りていった。

順番は、案内役のアニスとシズアが先頭で、次がアマンダとチャウ、それからペーターとパティの依頼主夫婦に最後がマイケルとジェフの男性陣。

護衛依頼を受けていたアマンダが先頭に手を挙げてくれたのだが、ダンジョンに慣れているから任せて欲しいとアニスが主張し、アマンダが引いた形だ。


ダンジョンの一層、石壁の通路は昼間と同じ明るさだった。この階層は昼も夜も関係なくいつも同じ明るさになっている。そして、出て来る魔獣もいつもと変わりがない。

既に二層へと下りる階段がある部屋までの道順は頭に入っていたし、途中で気が動転するようなトラブルもなく、アニス達は順調にその部屋へと辿り着いた。


しかし。


「ねぇ、アニー」

「シズ、何?」


二層へと下りる階段の途中、シズアが小声でアニスに呼び掛けた。


「何だかとても変な感じがするのよ。アニーは何ともない?」

「私は何ともないけど。どんな風に変とか思うの?」

「それが良く分からなくて。でも、本当に何となくだけど嫌な感じがするのよ。何か悪いことが起きたりしないか心配」


何がシズアを不安にさせているのかは分からない。でも、アニスがやることは一つしかない。


「シズは私が守るよ。だから、私の傍から離れないでいて」

「うん」


シズアが素直に頷く。


夜のダンジョンは、昼間より危険だと言われているが、それ以上に警戒する必要があるかも知れないと、アニスは気を引き締めた。


今回で虹色の翼の全員が出て来ましたね。四人ともプラナラの街の幼馴染です。

アニス達より少し年上の冒険者パーティーですが、まだまだこれからの成長が期待されるところです。


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本話は少し短くなってしまいましたが、区切りが良かったのでここまでにしました。

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