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妹大好き姉の内緒のお手伝い  作者: 蔵河 志樹
第四章 アニスとシズア、転機を迎える
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4-7. アニスとシズアは手頃な依頼を見付けたい

アニス達は冒険者ギルドに来ていた。

小ダンジョンに潜るなら、ついでに何か依頼でも受けようかと考えたからだ。


「アームドバッファローの素材集めとかあれば良いのになぁ」


掲示板の依頼を眺めながら、アニスが残念そうに話す。

アームドバッファローなら狩り方は分かっている。しかし、楽ではないのでシズアには丁度良い練習台になるし、倒せばD級に一歩近づく。更に依頼にもなっていれば一石二鳥か三鳥かと言うところだ。

だが、そんな都合の良い依頼が転がっていたりはしなかった。


「アームドバッファローね。この前は何とか倒せたけど、私にはまだ難しい相手な気がするな」


シズアの言葉にアニスはどう反応しようかと考える。

相手と自分との力量の差を正しく把握することは、冒険者にとって死活を分けるほどに重要なこと。

そしてシズアは正しく見極められている。

だから、それを否定するようなことは言いたくないが、かと言って肯定もしたくない。


「ねえ、シズ。この前の戦いで不味いなって思ったことはある?」


「そうね。一番の課題は体力かな。緊張してたせいか、突進を避けるだけのことなのに思ったより疲れが溜まって、アームドバッファローより私の方が先にへばりそうになってしまったし」

「そうだね、シズはよく分かってる。この前は、もしかしたら運が良かったところがあったかもだけど、悪いところを直していけば安定して狩れるようになるよ」


「この前は運が良かった?」


少し気を悪くしたのか、シズアが目を細めてアニスを見る。


「いや、ギリギリだったかなってことで」


アニスは冷や汗をかきながら言い直しを試みた。


「まあ、アニーから見ればギリギリだったよね。アニーは、あっという間に倒しちゃったし」


シズアの後にアニスがアームドバッファロー狩りに挑んだ時の話だ。

アニスは思いっきりのウォーターショットを標的の頭に当て、相手がふらついている間に大急ぎで駆け寄って急所を突いて倒してしまった。

水魔法も使えず、アニスほどの体力もないシズアには真似できない芸当だ。


「私の方が年上だから、仕方がないよね?シズだって、剣を振り続けて何年かすれば、私と同じようになれると思うんだけど」

「別にアニーと同じになるつもりはないよ。もっと魔法主体で戦うスタイルを目指したいかな。でも、今は魔法の熟練度もまだまだだし、これからもっと頑張るつもり」


これからに向けたやる気をみせるシズアの様子に、そこまで気を悪くしてなさそうだとアニスは安心した。


そして、改めて掲示板に貼ってある依頼を眺め始める。


「手頃な依頼がないね」

「プレーリーボアでも狩る?」


プレーリーボアはE級の魔獣で、既にE級に昇格しているアニス達の点数稼ぎには使えないが、食材としては有用だ。家で食べても、アニスの契約魔獣のアッシュの餌にしても、ギルドに買い取って貰っても良い。


シズアの提案に、それくらいで妥協しておくかとアニスの思考が傾きつつあったところで、掲示板の隅の方に貼ってあった、とある依頼の紙が目に入った。


「廃墟ダンジョン二層の案内役、泊まり掛けで、って言うのがある」


アニスの言葉に、シズアもその依頼に目を向ける。


「案内だけすれば良いの?」

「そうみたい。ダンジョンの中で泊まることになるみたいだけど」


「夜のダンジョンって行ったことがないよね?昼間より危険だからって言われて」

「そうなんだよね、そこがイマイチ心配なんだけど、でもまあもう何度も二層には潜ったし、そろそろ行けるんじゃない?」


「あのう」


後ろから声がして、二人は思わず振り返る。


「私達?」


見ると、杖を持った冒険者姿の猫人族の少女が立っていた。見た目は少女だが、醸している雰囲気からアニスより年上ではないかと思われた。


「はい、あの、お二人は冒険者をされているのかと思って」

「まあ、そうですけど」


「あの、私、虹色の翼のチャウって言います。私達、そこのダンジョン案内の依頼を出したのですけどぉ」

「チャウ?チャウ・チャウは犬なのにチャウは猫なのね」

「ん?何のことですかぁ?」


不思議そうな表情のチャウに、シズアが慌てる。


「ううん、何でもない。こっちの話」


相手の名前に変に引っ掛かっているシズアは置いておいて、自分が話をしようとアニスが前に出た。


「このダンジョン案内の依頼主って貴女達?でも、貴女達は冒険者のパーティーなんでしょう?どうして他の冒険者に依頼なんか出したの?」


「私達、プラナラの街でD級の冒険者をやっているんですけど、まだこちらの廃墟ダンジョンには入ったことがなくて。それで、案内役を頼もうと考えたんですぅ」


プラナラの街は、今いるザイアスの街から領都に向かって三つ目にある街だ。


三つ目の街とは言え、間には軍の砦が三つあるから街道にある中継地としては六つ先、領都からだと二つ目で、プラナラの街からはザイアスに来るより領都に行く方がよほど近い。

領都の周りにもダンジョンはあった筈で、こちらの(廃墟)ダンジョンに入った経験がないことは十分にあり得るものの、それだけですべての疑問が解ける訳でもない。


「どうしてプラナラから遠くにあるここのダンジョンにわざわざ入ろうと思ったの?それにダンジョンに入って何するつもり?しかも二層なのに泊まり掛けって」


アニスはぐいぐいと立て続けに質問を投げ掛ける。


「私達、プラナラで護衛依頼を受けたんですぅ」


懸命な表情でチャウは説明を始める。


「子爵様のお抱えの芸術家のご夫婦の護衛なんですけどぉ」

「うん、それで?」


「その人達は、最初は街道沿いの森で動物や鳥を探したり、丘に登ったり川へ行ったりしていたんですけど、星爪(ほしづめ)コウモリを捕まえたいって言われまして」

「星爪コウモリ?あー、そう言えば、コウモリの中に爪の先が淡く光るのがいるよね。それのことかな?」


「きっとそれだと思うんですけど、見たことあるのですかぁ?」

「うん、あると言えばあるけど」


アニスが困った顔をする。


「けど?」


チャウにはアニスがどうしてその表情をしたのかが分からない。


「私達がそれを見たのは夕方早くでまだ明るい時間だったから、爪先の光が全然分からなくて、ただのコウモリに見えんだたよ」

「それは本当にただのコウモリだったのではないですかぁ?」


「確かにただのコウモリも飛んでいるんだけど、爪先が光るのはE級だけど魔獣だから」

「だからぁ?」


アニスの言葉の意味していることが分からずに、首を傾げるチャウ。

その様子を見て、アニスは口が滑ったことに気が付いた。パッと見て魔獣だと分かるのは魔力が見えるからだが、魔力眼を持っていることは秘密だからだ。


「魔獣だから、ちょっと違うと言うか」


焦るアニス。


「アニー、それって輪白コウモリのことだよね?胸元に白い線のある」


アニスの様子を見かねたシズアが助け船を出した。


「ああ、そうそう、胸の辺りに細い月のような線が付いているだけだったよね。だから、ただのコウモリと区別が付き難くて」


わたわたと言葉を付け足しながら、アニスは愛想笑いを浮かべる。


「けれど、アニーの言う通り、明るい時に見たらただのコウモリにしか見えないのよ。そんなのを捕まえて嬉しいのかな?」


「そうなんですねぇ。でも、あの人達は幻想的って言っていたようなぁ。うーん、そうなると、あの人達の夢を壊さないように、明るいうちにダンジョンに入るは止めた方が良いのかも知れませんねぇ」

「確かに夜になってから入れば、ただのコウモリは見えなくなってしまうし良いかも知れないわね。それに何となく悪女っぽい考え方で好きよ」


シズアのツボに(はま)ったらしい。


「ねぇアニー、この依頼、受けてみない?」

「良いけど、泊まり掛けで行くなら、父さん達に言っておかないとだよ」


いつも夕方前には戻っているアニス達が、黙って外泊したらきっと両親を心配させてしまう。


「ええ、分かってる。今から一旦家に帰りましょう。どうせダンジョンに入るのは夜なんだし、夕飯を食べてからでも余裕で戻って来られるわよ」

「まあ、確かにそうだね。って何?暗い道を戻って来るってこと?」

「そうよ?風の探索魔法があるから問題ないと思うわ。心配なら二輪車にヘッドライトを付ける?」


既に超乗り気になっているらしく、シズアの目がキラキラと輝いていた。


「それ、自分で運転する気満々ってことだよね」

「夜道の運転って楽しそうよね?」

「私は怖いけど」


でも、もしかして、何も見えなければ却って怖くなくなるかも知れないかな、と前向きに考えるアニスだった。


チャウ・チャウは勿論、シズアの前世の記憶にある犬種です。だから、アニスには何のことやらでした。


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