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妹大好き姉の内緒のお手伝い  作者: 蔵河 志樹
第三章 アニスとシズア、ダンジョンに潜る
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3-13. アニスはポーション作りを学びたい

アニス達が扉を開けた音に気付いて、奥のカウンターの中にいた店主が顔を上げる。そして、二人の姿を確かめると顔を(ほころ)ばせた。


「あら、いらっしゃい。先週は不在にしていて悪かったわね。わざわざお店に来てくれたのでしょう?」

「はい。でも、あの日は別の用事もあったから」


アニスは控え目に返事をする。


「それでエルザ。今日はポーションの作り方を教えて貰えますよね?材料はちゃんと持って来ました、ほら」


そう言って、収納サックの中から魔力草や魔石を取り出してみせた。


「ええ、問題ないわ。それで、教えるのはアニスだけで良いのかしら」


エルザの視線はシズアを捉えていた。


「はい、私に何か?」

「悪いのだけど、店番をお願いできるかしら。お客様がいない時は、一緒に見学していて良いから」

「それくらいなら、構いませんよ」


シズアはエルザに微笑み返す。


「では二人ともこちらに。ポーション作りのための魔具は、この裏にあるわ」


二人はエルザに促されてカウンターの奥の開けっ放しの扉を通り、廊下を経て隣の部屋へと移動した。


その部屋は作業部屋のようで、様々な器具などが見えている。そして壁沿いにはシンクのような物が置いてあった。


「もしかして、これが魔具なんですか?」

「ええ。ポーションの錬成器。私達は単に錬成器と呼んでいるけれど」


錬成器の上面は机くらいの高さで、金属製の浅いシンクの形をしていた。

だだし、中央に円形に盛り上がった部分があり、また左右の手前側に器具が取り付けられているあたり、普通のシンクではない。


「ポーションを作る時は、この真ん中の高くなっている部分に材料を入れた調合瓶を置いて、錬成器を操作していくの。まずは私がやってみるから、見てて貰えるかしら」


エルザは透明な調合瓶を棚から取り出して、錬成器の上に置いた。そして隣の作業台に移ると、ティーカップより一回り大きなすり鉢とすりこ木を用意して治癒草を二枚まとめてすり下ろし、そこに水を加えて混ぜ合わせたものを調合瓶へと移す。そして治癒草の欠片が残るすり鉢にもう一度水を入れると、鉢を洗うように擦り、その水も調合瓶へと流し込んだ。その上で、エルザは調理瓶に描かれた目盛りに合わせて水を加えていく。


「これがポーションの元になる魔力草水。今回の場合は治癒草水ね。水の量は葉っぱ一枚に付き300ccが適量。後はこれを錬成すればポーションになるわ」


エルザは錬成器の前に座り、左手前にあるグリップを握る。右手前には、ボタンやらツマミが並んでいた。


「この錬成器は、左手から魔力を流し込んで、右手で操作するようになっているのよ。初級ポーションを作るときは、『溶解』『強化』『安定化』の三つの工程が必要だけれど、この錬成器でその三つがすべてできるようになっているわ」


エルザは右側にあるツマミの向きを『溶解』に合わせてから、左手から魔力を流し込み始めた。それに呼応する形で、調合瓶の下が円形に光ると共に魔法の紋様が現れる。


「調合瓶の下が円の形に光っているわよね。これが光れば魔力量は十分よ」


エルザの言葉から察するにエルザには魔法の紋様は見えていないようだ。本来は魔法の紋様が現れていれば問題ない筈だが、それは魔力眼持ちにしか分からない。魔力眼が無くても判別できるように円形に光らせているのだろうとアニスは推測した。


「ほら、暫く魔力を掛け続けていたら、濁っていた水が透明になってきたでしょう?そうして瓶の向こう側が見えるようになったら『溶解』は終わり」


調合瓶の様子を観察しながら魔力を流し込み続けること数分、エルザは瓶が透明になったところで「もう良いわね」と魔力を止めた。


「次は『強化』よ」


エルザはツマミの位置を『強化』に合わせてから、再度左手から魔力を流し込み始める。すると『溶解』の時と同じように調合瓶の下が円形に光るが、同時に現れた魔法の紋様は『溶解』とは別の物だった。


「この『強化』が一番大切でタイミングが難しいのよ。やり過ぎるとポーションの効果が弱まってしまうから。魔力を籠めて、一番色が濃くなったところで止めるの」


説明を聞いて、どうしてやり過ぎると効果が弱まるのかと疑問を感じたアニス。何が起きているのかを見極めようと錬成器の上の調合瓶の中をジッと覗き込む。


『強化』をやっている間、魔法の紋様からは常に魔力の湯気のような物が湧き出している。それが調合瓶の中の治癒草水の成分に反応すると消えていき、消えた分だけ治癒草水の青色が濃くなっていく。なので時間と共に治癒草水が濃く青くなっていったのだが、あるところから色の変化が小さくなった。しかし、魔力の湯気が反応して消えていく量は変わってはいない。


「ティファーミット現象」


アニスはゼペックから聞いた話を思い出していた。

魔法の効果を増幅する魔法付与があるのだが、それによって増幅できる量には限界があると。それ以上付与しても却って増幅効果が下がってしまう。それがティファーミット現象。


「あら、何か言った?」


エルザに問われ、アニスは口に出してしまっていたことに気付く。


「いえ、何も。面白いなって言っただけで」


ともかく平静を装って返事をする。


「そう」


『強化』の作業を終えたエルザはそれ以上アニスに問うことなく、最後の作業に入った。

ツマミの位置を『安定化』に変え、魔力を籠める。


「ポーションの効果が時間と共に下がるのを抑えるのが『安定化』の役目なのだけれど、『安定化』でも効果は下がるから長くやらない方が良いの。30秒から一分やれば、半月から一月は持つからそれで十分よ。収納箱などで保管しておけば、もっとずっと長持ちしますからね」


すべての作業を終え錬成器から手を離したエルザは立ち上がると、完成したポーションが入った調合瓶を手に取り収納箱へと仕舞った。


「それでアニス、初級ポーションの作り方は分かったかしら?今は治癒草でやりましたけれど、魔力草ならどれも同じ作り方よ。今度は貴女が自分でやってみなさいな」

「はい、大体分かったと思います」


錬成器を使ったポーションの作り方ならば。

しかし、アニスは錬成器の動作そのものも知りたかった。


「あの、ポーションを作る前に自分の魔力量で足りるか、確認したいんですけど?」

「ええ、良いわ」


アニスは錬成器の前に座らせて貰い、左手でグリップを握る。

エルザに申告した通り、魔力量が足りるか不安があったのは事実だが、これで堂々と魔法の紋様を観察できる。


ツマミを『溶解』にして、魔力を流し込むと、エルザと同じように錬成器の真ん中が円形に光り、魔法の紋様が現れた。そのまま魔力を流し続けても紋様が消えることはない。アニスの魔力量と魔力回復速度で十分そうだと分かる。


ツマミを『強化』や『安定化』に変えて試してみても同じだったが、『強化』の時は魔力の消費量が大きく、駄目ではないがギリギリだと感じた。

それに、『強化』は別の意味でも問題がある。


どうしようかと考え、上手くいく確信は無かったものの、アニスは一芝居打つことにした。


「ねえ、エルザ。魔力が足りない時は魔石を使うんですよね?どうやって使うか教えてくれますか?『強化』の時に少し足りない気がして」


さらに駄目押しとしてエルザに向けて不安げな表情をしてみせる。


するとエルザは、作業台の引き出しに手を伸ばし、中から器具を取り出した。薄い金属製の丸い筒で、中央に穴が開いている。エルザはそれを錬成器の真ん中の台の上に載せた。


「魔力が足りない時は、この台座の中央に魔石を置いて、その上に調理瓶を置くのよ。その時には右奥のツマミを『補助有』にするのを忘れないで」


エルザの説明にアニスは神妙な面持ちで頷く。内心では上手くいったとほくそ笑んでいたが、それを顔に出さないように精一杯努力して。

そしてアニスは魔石を台座の中央の穴の部分に置き、魔力を注いでみる。すると、台座の上に『強化』の紋様が現れた。魔石を通したお蔭でアニスの魔力の消費量は減っている。


魔法付与された場所から離れたところで発動する遠隔起動式の付与魔法は、魔石による起動補助ができる。付与魔法の使用者の魔力消費は減る一方で、魔石の魔力が使われるため、魔石は徐々に小さくなり、最後には消えてしまう。


魔石も安くは無いから、使わないに越したことはない。が、アニスはそんなことは百も承知であり、魔石を使ったのはある目的のためだ。


「やっぱり、魔石を使った方が良さそうですね」


ある意味当たり前の結果を伝え、確認が終わったものとして台座と魔石を錬成器から下ろし、魔石は収納サックに仕舞う。代わりにシズアと採取してきた魔力草を取り出した。


「それじゃあ、ポーションを作ってみたいので、調理瓶を貸して貰えますか?」


アニスが手に持っていた魔力草が三種類だったので、エルザは調理瓶を三本出してくれた。

それを使い、魔力回復ポーション、治癒ポーション、解毒ポーションと、イラに指示されていた三つのポーションを作成する。勿論、『強化』の時には魔石を使うことを忘れずに。


「これでどうでしょうか?」


アニスは三つの調理瓶を作業台の上に並べてエルザに示す。

エルザは一つ一つを確認していたが、最後に大きく頷いた。


「三つとも、きちんとポーションになっているわ。初級ポーションの作り方はそれほど難しくないとは言っても、一回見ただけでここまで作れるなんて貴女には才能があるのかも知れないわね」

「ありがとうございます」


アニスは嬉しそうに微笑む。


「小分けにするための小瓶を出してあげるわ。一つ25ccだから、ポーションの種類ごとに色違いで24個ずつ。ただし、貴女の作ったポーションを小瓶二つずつと引き換えにね。スポイトは付けてあげる」

「私が使った調理瓶も付けて貰えませんか?」


多少図々しいかなと思いつつ、アニスは要求してみた。ポーションの値段を考えれば、無理な要求ではない筈だ。


「ええ、良いわ。貴女も商売上手ね」


微笑みながらエルザは応じてくれた。交渉成立だ。

アニスはエルザと共にポーションを小瓶に小分けし、後片付けをしてから店の方へと移動する。


その店内ではシズアがカウンター越しに若い女性に詰め寄られていた。


「ちょっと、シズ、どうしたの?」

「あっ、アニー。丁度良かった。この人に言い寄られてて、困ってたの」


シズアは途方に暮れた表情でアニスに目を向けていた。


錬成器を使ったポーション作りは薬師のお仕事ですが、錬成器を作るのは魔具職人のお仕事。


どうやらアニスの魔具職人の血が騒いでしまったようです。


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(2023/12/30追記)

しまった。後書きに書くべきものを前書きに書いてました。


と言うことで、後書きに移動させてます。

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