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妹大好き姉の内緒のお手伝い  作者: 蔵河 志樹
第三章 アニスとシズア、ダンジョンに潜る
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3-7. アニスとシズアはパーティーを組みたい

アニス達は冒険者ギルドに来ている。


ゴードンの武具屋を出た後、アニス達はそれからの行動について考えた。日が暮れるにはまだ早いものの、魔力草の採集に行くには時間が短かったことから、ゴードンの助言に従って、ダンジョンに潜るためのパーティーを組んでくれる冒険者を探すことにした。


「やっぱり男の人ばかりねぇ」

「女の人もいるけど、強そうで近寄り難いよ」


ギルドの建物に入ったものの、二人は誰にも声を掛けられずにいた。


「そう言えば、アニーには冒険者の知り合いっていないの?マーサの宿に来る人とか」

「いなくもないけど、皆ランクが上か、引退した人達ばかりだからなぁ。近いのはヨゼフだけど、あの人は植物採集専門だし」


アニスは宿の常連の顔を思い出しつつ答える。


「サラは?あの人、冒険者って言ってなかった?」

「え?ああ、そうだね。サラなら手伝ってくれるかなぁ。ただ、連絡取るのが大変なんだよね。だから直ぐにって訳にはいかなくなるけど、誰も見つからなかったらサラに頼んでも良いかも」


魔女であるサラが二人を手伝ってくれるのか確信がなかったアニスは、消極的な言い回しを選んだ。


「だったら、どうするの?ただここで突っ立っていても仕方が無いよね」

「そうだね。誰か話し掛けられる人は居ないかなぁ」


もう一度ギルドの中を見渡して、アニスはある人物に目を止めた。


「シズ、良い人がいた。話しに行くよ」


シズアの返事を待たずに、アニスはさっさとそちらへ向かう。

アニスがどうしたいのか分からないまま、後に続くシズア。


「こんにちは。あの、聞きたいことがあるのですけど」

「はい。あら、アニスとシズア。どのようなご用件でしょうか?」


アニスが向かった先は、受付カウンターにいたナンシーのところだった。


「私達、ダンジョンに行きたいんですけど、一度もダンジョンに行ったことが無くて。それで、一緒に行ってくれる冒険者を探しているんです。それで、私達に歳が近くてダンジョンに行ったことがある女性の冒険者を教えて貰えないかと思って」


アニスが用向きを伝えると、ナンシーは頷いて答えた。


「そうですね。お二人と同年代となると、神殿学校の生徒さんが良さそうですね」

「あの、もう少し年上のお姉さんはいませんか?折角だから、ダンジョン以外のことも教わりたいのですけど」


選択のハードルを上げて来たのは、勿論シズア。


「残念ながら、いないんですよね。神殿学校を卒業した後も冒険者を続けようって人は、大抵王都や領都に行ってしまいますから。なるべく年上の方がよろしいのでしたら、神殿学校の最上級生をご紹介しますが」


「はい。あー、うん。いないのでしたら、それでお願いしいます」


残念そうな表情で少し逡巡したシズアだが、結局は引き下がった。


「シズ、一瞬、もっと年上のお姉さんにしようと思った?」

「まあね。でも、そうなるときちんと指導料とか払わないといけなくなりそうな気がしたから止めておいた。同年代ならお互い様の部分があるからお金が掛からないと思ったし」


「へー、シズ、結構ちゃんと考えてたんだ」


何の気なしに感心したアニスだったが、シズアは頬を膨らませる。


「アニー、私、そんなに考え無しに見えた?」

「あー、ごめん、ごめん。そんなつもりで言ったんじゃなかったんだけどさぁ。気に障っちゃたら、本当にごめん」


アニスは膨れっ面のシズアも可愛いなと暫く眺めていたかったものの、機嫌を損ねたまま話をしてくれなくなるのも困るので、一所懸命に(なだ)めようとする。


「良いわよ、そんなに謝らなくても。そこまで怒った訳でもないから」


視線は合わせて貰えてないが、表情は普通に戻っている。

これなら大丈夫かなとアニスはホッとした。


「あのう、お話を続けてもよろしいでしょうか」


姉妹間のやり取りに口を挟めず黙っていたナンシーだったが、そろそろ頃合いかと二人にお伺いを立ててきた。


「あ、はい、お願いします。誰か良さそうな人いますか?」


元から平常心だったアニスが直ぐに反応する。


「神殿学校の最上級生で、冒険者もやっている女の子は三人いるのですが、ダンジョンに潜ったことがあると分かっているのはその内の一人だけですね」

「それって誰です?」


名前で分かるかはともかく、まずは聞いてみなければ始まらない。


「名前はイラ。陽光青空団と言う神殿学校の生徒四人の冒険者パーティーのリーダーをやっている子です」

「あー、イラ。そっか、この前会った時、小ダンジョンの帰りだって言ってたっけ」


あの時は、二輪車で後ろから追い付いたんだったよなとアニスは思い返していた。


「ご存じなのですね?」

「うん、まあ、ちょっとした知り合いと言うか、何度か会ったことがあるんだよね」


探し人が知り合いと分かって笑顔になるアニスの横で、シズアは渋い顔になる。


「イラの仲間って、あの時の男の子達でしょう?アニスより弱かったよね。大丈夫かなぁ?」

「でも、シズアよりは強いんじゃない?」


「だって、私は魔法も剣も習い始めたばかりだもの。比べられても困るわ」


少し気弱になるシズア。


「思うのですが、お姉さんを基準にはしない方が良いのではないでしょうか」


ナンシーがシズアに向けて控えめに声を出す。


「そう?」


「ええ。ギルマスに一本入れるのは相当大変なことですよ。幸運が作用したとしても、少なくともD級の実力はあるのではないでしょうか。一方で陽光青空団の男子二人はE級ですから、お姉さんのアニスの方が強いのは当然ではないかと。ただ二人はイラとパーティーを組んでからダンジョンには何度も行っていますから、経験はそれなりに積んでいると思いますよ」


「そうなんだ」


シズアは納得して頷く。


「因みにイラはD級ですね。実力的にはお二人と丁度良いのではないでしょうか」

「ねぇシズ、どう思う?私はイラ達と相談してみても良いんじゃないかと思うんだけど」

「ええ、そうね。これから神殿に行ってみる?」


ナンシーの説明でその気になっていくアニスとシズア。


そこにナンシーが追加の情報を提供する。


「今日は水曜日ですから、ダンジョンに行っているかも知れませんよ」

「そうなんですか?」

「はい」


シズアの問い掛けににこやかに応じるナンシー。


「神殿学校は水曜日と土曜日の午後は実習の時間になっているんです。そうした日は陽光青空団の人達は簡単な依頼を受けるか、ダンジョンに行かれてて、今日は依頼を受けてないのでダンジョンに行かれていると思うんです」


「だとすると、神殿に行ってもいないかも知れないんだ」

「はい。それでダンジョンに行っていれば、そろそろ何かしら獲物を納めにくると思うんですが」


「シズ、どうしよか?」


尋ねながらアニスはシズアの様子を伺う。


「うーん、ただ待っていてもいつ来るかも分からないし。一度神殿に行ってみない?」

「うん、良いよ」


シズアが決めてくれればアニスに異論はない。


ならばとシズアがナンシーに目を向ける。


「あの、ナンシー。私達に行き違いでイラ達が来たら、私達が話がしたいからここで待っていて欲しいと言ってたって、伝えて貰えますか?神殿に行って、イラ達がいなければ、まだ戻ってくるので」

「はい、良いですよ」


ナンシーに伝言を頼み、二人はギルドを出て神殿に向かう。


神殿に着いたアニス達は、神官を見付けてイラ達の所在を尋ねてみた。しかし、出掛けていて不在であることしか分からなかった。


「イラ達、いなかったね」


残念がるアニスに、半分予想されていたことだし落ち込むことでもないよとシズアは微笑んでみせた。


「アニー、もう一度冒険者ギルドに行ってみよう?ナンシーから伝言を聞いて、待っててくれているかも知れないよ」

「そだね」


そして再び冒険者ギルドへと向かう二人。

ギルドの扉を潜り、中へと入るとナンシーのいる受付カウンターの脇に、冒険者の格好をした四人の少年少女の姿があった。


その四人のところにアニス達が近づいていくと、一番背の高い少女が前に進み出た。イラだ。

イラはアニスより一つ年下の十二歳だが、発育が良い。アニスも背は低くはないのだが、イラはそのアニスよりも少し背が高い上に、靴のかかとも高めなことから、パッと見てアニスより一回り大きい。


意志の強そうな吊り上がった目、細い眉毛、きりっとした口元、巻き毛のロングの髪を三つ編みハーフアップにしたその整った容姿は、正に美人系のそれだ。冒険者姿で化粧っけはないが、きちんと化粧をすれば大人に見間違えられることだろう。歩き方も様になっている。


「こうして見ると、イラってアニーよりお姉さんっぽいよね」

「シズ、それ言っちゃ駄目な奴だから」


思わず妹の口を塞ぎたくなるアニス。


しかし、シズアの口を止めたとて、事実は変わりようがないのである。


「アンタも五月蠅(うるさ)い」


子供の頃って女の子の方が成長早いですよね。


イラは特に早い方みたいです。

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