表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妹大好き姉の内緒のお手伝い  作者: 蔵河 志樹
第七章 アニスとシズア、王都の祭りに参加する
165/303

7-8. アニスとシズアは専門家に頼りたい

「つまり、私を呼ばなかったのは、私がどこまでのことを知っているのか分からなかったからってこと?」

「そゆこと。神の巫女として、ザナウス神絡みの話は慎重に進めたかったみたい」


「そう言うことなら、まぁ仕方が無いわね」


少し詰まらなそうではありながらも納得顔で頷くシズアを見て、アニスはホッとする。


時計塔での話が終わった後、アニスはリリエラを神殿まで送り届けてから、宿へと戻った。

遅い時間ではあったが、シズアは寝ずに本を読みながらアニスの帰りを待っていた。

なので、そのままシズアへの報告会となった。


最初に話したのは、アニスだけが呼ばれた理由。

リリエラにはリリエラなりの理由があったことを伝えたかったのだ。

どうやら分かって貰えたようで嬉しい。


「それで、リリエラの用事は何だったの?」


シズアは何気なく次の話題に移ろうとしたが、そこでアニスは少し身構えて、恐る恐る口を開いた。


「えーと、調べものの依頼だったんだよね。だけど、調査の時には誰に頼まれたか言わないで欲しいって」

「何それ。内緒の調査ってこと?」


「そそ。そんな感じ」


実は当初、リリエラにはシズアにも話すなと言われたのだ。

それに対してアニスは、シズアは自分よりもしっかりしているし、口も堅いし、頭の回転も速いし、などなどアニスの思い付く限りのシズアの良いところを滔々(とうとう)と話して聞かせ、加えてシズアは勘が良いから直ぐに察してしまうだろうし、きちんと話しておいた方が問題が起きないだろうとまで主張したところで、頷いてくれた。


そんな経緯を伝えると、またシズアが不機嫌になりそうなので、アニスは口にする気はない。

余計なことを話して波風立てる必要は無いのだ。


「依頼人の秘密は守れってことね。情報屋の基本と言えば基本だけど、何で私達なの?それに何でアニーだけ呼ばれたの?」

「ザナウス神が私のことを(ほの)めかしたらしい」


「ああ、アニーに魔術眼を与えたことに関係しているのね」


やっぱりシズアは理解が早い。説明が(はぶ)けて助かる。


「それで何を調べて欲しいって?」

「自分に掛けられた呪いを解く方法」


「アニーには解呪できないの?」


アニスが解呪できないとは思わなかったようで、シズアは首をちょこんと(かし)げてみせた。


「うーん、軽く試してみたんだけど、魔力が無効化されちゃうような感じで、解けそうになかったんだよね」

「どう言うこと?アニーより魔力が多いと言うことではないわよね。熟練度がアニーに(まさ)っているとか?」


「そう言うのとは何かちょっと違う気がするんだよね。そうだなぁ、近いのは黒魔獣を相手に魔法を使った時のような感じ。あぁ、そう言えば、リリエラに言われたんだ」

「何て?」


「魔導国が絡んでいるかも知れないって」

「ああ、そう言う話なのね」


シズアは腕を組んでうんうんと頷く。

そしてそのまま下を向いて、黙った。

考え事をしているように見える。


(しばら)くしてシズアは顔を上げ、アニスに視線を向けた。


「魔導国となると情報屋の素人の私達の手には余るわ。専門家に頼らない?」

「専門家?誰?」


「情報屋イルージオをやっているキョーカとスイよ。あの二人以上の情報屋を私は知らないわ」


確かにあの二人は頼りになる情報屋ではある。


「でも、二人はパルナムだよ」

「それはそう。だけど、私達が勝手も分からずに王都の中を動き回るより、二人に助言(アドバイス)を貰った方が良さそうには思わない?特に魔導国のことなら」


「えっ、魔導国?そなの?」


実際、あの二人は魔女だから、魔導国の動きは良く知っている筈とは思う。だが、そのことはシズアは知らないのではなかったか。


「そう言う話を耳にしたことがあるのよ」

「ふーん、そなんだ」


パルナムには一か月以上滞在していたが、その間、シズアとずっと一緒だった訳でもない。

アニスの知らないところでキョーカ達と話していたのだろう。


「分かったら、遠話具を出して貰える?」

「えっ、もう真夜中だよ。明日にしない?」


そろそろ眠くなってきたし、シズアも寝かせたいと考えたアニスは、シズアを止める。


「そうね。なら、明日の朝に話がしたいって、手紙だけでも送っておいて」

「おけ」


アニスの作った遠話具には遠写具の機能が含まれている。

それでアニスはキョーカ達に手紙を送ると、シズアと共にベッドに入った。


* * *


翌朝。


宿で朝食を取ったアニスとシズアは、早速、遠話機でキョーカ達に連絡を取った。


『おはようにゃ。朝っぱらからどうしたにゃ?』

『急に呼び出して、何かあったのです?』


キョーカとスイ、二人(そおろ)って出てくれた。

遠話具の鏡の部分に二人の顔が映っている。

キョーカは相変わらず猫耳のカチューシャを頭に付けていた。


「手紙にも書いたけど、キョーカ達に聞きたいことがあってさ。そう言えば、昼行灯(ひるあんどん)商会って知ってる?パルナムにあるらしいんだけど」

『ああ、よく知っているにゃ。もしかして、奴らと出会ったにゃ?手荒い歓迎ではなかったにゃ?』


「結構手荒い歓迎だったよ。って、何で知ってるの?」

『それが弱い者に対しての奴らの流儀なのにゃ。この前、お前達二人について、奴らに聞かれたことがあったにゃ。その時、まだまだ駆け出しのヒヨッコで弱っちょろいと教えておいたにゃ。で、勿論(もちろん)、返り()ちにしたよにゃ、姉妹(きょうだい)?』


「あー、あれってキョーカのせいだったんだ」


そう言えば、リリエラも下調べを行っていたようなことを口にしていた。

キョーカが嘘を()いたのが悪いのか、キョーカの嘘を見抜けなかった彼らが悪いのか?

何にしても迷惑な話である。


「ともかく、ちゃんと返り討ちにしたよ。キョーカに教わった通りにね」


パルナムにいる間、シズアとスイは算盤教室の講師などをしていたが、その時間、アニスはキョーカに戦い方を教えて貰っていた。

相手の得意属性ごとの対策も教えて貰ったし、その中にはゼントの使っていた時空魔法も含まれていた。

だから、対応できて当然だと言われたのだ。


『うむ。それで良いにゃ。で、お前達の話は、奴ら絡みのことにゃ?』

「えーと、そこは関係ないってことで聞いて欲しいんだけど。魔法で解けない呪いって知ってる?多分、神でも解けない奴」


『それは神が掛けた呪いではなくてかにゃ?』

「違う。もしかしたら、魔導国が関係しているかも知れないって言ってた」


『そうか』


そこでキョーカは黙ってしまった。


『魔導国のことには、首を突っ込まない方が良いと思うのです』


スイが代わりに後を引き継いだ。


「危ないから?」

『はいなのです。あの人達は用心深いですから、変に近付くと命を狙われかねないのです』


うーむ、どうしたものかな、とアニスは悩む。

自分はともかく、シズアは巻き込みたくない。

でも、いつも一緒に行動している以上、自分が関わればシズアも同じく関係者に見られることは避けようがない。


だからと言って諦めてしまうと、リリエラの依頼が果たせない。


と、そこでシズアが話し出した。


「魔導国の人達に近付かない範囲で調べるのは無理ですか?例えば、呪いが魔導国の呪具によるものなら、その呪具について魔導国以外の人が情報を持っているいるかも知れませんよね?その人と話をするのならどうですか?」

『それでもあまりお勧めできないのですけれどぉ』


スイは気乗りしない様子。


「それってそういう人達を知ってるってことですね?何人くらい知ってますか?三人くらいはいますよね?一番良く知っている人でなくても良いです。三番目でも。三番目の人に合わせて貰うことはできませんか?」


ん?どうしてシズアは三番目が良いのだろうか、隣で聞いていたアニスには分からなかったが、スイの眼がぴくぴくしているような。


『わ、分かったのです。魔導国のことを調べている人達には心当たりがあるのです。接触の方法を教えますので試してみて欲しいのです。でも、会って貰えるかは保証できないのです』

「ありがとう、スイ。三番目の人によろしく」


勝ち誇ったように微笑むシズア。


シズアがトゥリレ(数字の3)に会ったことを知らないアニスは、状況が分からずにポカンとしていた。


シズアがトゥリレと話したのは、割りと最近の6-31.でしたね。


トゥリレはシズアにあまり関係しないようにと言ってましたが、シズアは気にしていないようです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ