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妹大好き姉の内緒のお手伝い  作者: 蔵河 志樹
第六章 アニスとシズア、火の山に赴く
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6-16. アニスとシズアは試練の門に挑みたい

アニスとシズアの目には、ドワランデの北の門が見えている。


二人が、主にシズアの働きによってだが、カマールの問題にすべて正解すると、カマールは試練の門について教えてくれた。


「ドワランデの街の北の門がそれだ。行けば分かる。門番に案内状を見せれば、挑戦させてくれるだろう」


カマールに礼を言って(やかた)を後にした二人は、街まで下りて北の門を目指した。

と言っても、辺境伯の館を出た時には既に正午を過ぎており、そこから街まで下りて来て食堂で遅い昼食を取ったりしたため、北の門に到着したのは少し遅い時間になってしまった。


「取り敢えず、今日は試練の門の様子見ね。さっきのカマールの問題のことを考えれば、答えさえ分かっていれば二度やっても問題はない筈よ」


既に見切ったかのように自信満々のシズア。


「シズがそう言うのなら、そうしよ。私もできるだけ夜は街の中にいたいし」


アニス達は結界の魔具を持っているので、しようと思えば野宿もできる。

しかし、特に急ぐ理由もないのに野宿する必要もない。宿で寝られるのなら、それに越したことはないのだ。


ドワランデから竜人族までの道は、山道で馬車は通れない。

距離は大体歩いて二日ほど。どの道、野宿は避けられないが、それなら出発前にはゆっくりベッドの上で寝て休みたいところでもある。


「真ん中の門が、試練の門かな?」


二人の目の前には、門が三つ並んでいた。

左右の門は開いていて、たまに人が通っている。なので、使われていない真ん中の門が目的の門なのだろうとアニスは当たりを付けた。


「そうね。両側は一方通行みたいね。左が街から出ていくためのもので、右が入るためのものかな?ただ、真ん中が試練の門だとしても、見た目は両脇の門と一緒ね」

「そだね、何があるんだろ?ともかく、行ってみよ?」

「ええ」


二人は門の前に立っているドワーフ族の兵士のところへと向かう。

そこで案内状を見せながら、試練の門を通りたいとを告げると、兵士は眉をピクリと上げたものの、真ん中の門の鍵を開けてくれた。


「試練の門はこの先にある。挑めるのは両脇の門が閉まる日暮れまでだ。この門はお前達が通ったら閉めるが、右の扉から隣の通路に出られるので、帰りはその通路を使ってここに戻ってきなさい」

「分かった」


代表してアニスが答え、二人は門を(くぐ)る。

門の先は四方が囲まれていて、頭上には天井もあり、部屋のようになっていた。

しかし、密閉された空間ではない。


バタンと先程兵士が門の扉を閉めるが真っ暗にはならず、ほんのりと明るい。

壁の天井近くに隙間が開いていて、そこから外の明かりが射し込んでいる。


その中で、二人の目の前には、入ってきたのと同じ大きさの門の扉が一つ。


「これ、魔具だね」


扉の右側に灯りの魔法が付与された魔石が幾つも嵌め込まれている。


「縦に四つ、横にも四つ、全部で十六個ね。そして左にダイヤルが四つと(ボタン)が二つ」

「左の(ボタン)には『始め』、右の(ボタン)には『確認』って書いてある」


二人に見えているのはそれですべてだ。

観察を終えたアニスが前に出る。


「シズ、『始め』の方を押してみるよ」

「ええ」


『確認』釦を押してみるアニス。が、何も起きない。


「動かないね。どゆこと?」

「魔力切れではない?」


「あー、そか」


改めて、アニス達は扉全体を眺めてみる。


「うーん、何となくだけど、扉の把手(とって)から魔力を流し込むんじゃないかな?そこだけミスリルだから」


動いていない魔具を魔力眼で見ても何も分からないので鑑定してみたアニスが、材質の違いに気付く。

ミスリルは魔力を通しやすい。なので、そこから魔力を入れるのではと推測した。


「なら、魔力を流し込んでみようかな?」


と、シズアが前に出ようとするが、アニスが手で止める。


「何が起きるか分からないから、私がやる」


姉として、シズアに危ないことはさせられない。

アニスは扉の把手を掴み、魔術眼で魔力を集めながら把手に流し込み始めた。慎重に、最初はゆっくりと。


「あ、左下が点滅した」

「そだね」


十六ある魔石のうち、最下段の一番左の物が点滅し出した。


「どゆことかな?」

「魔力を溜めている様子を示しているように見えるわね。あ、隣が点滅し始めた」


それまで点滅していた左下の魔石はずっと点灯したままとなり、その右隣の魔石が点滅をするようになった。


「だとすると、これを続けてれば良いってこと?」

「そう思うわ」


それからしばらくの間、アニスは把手から魔力を流し込み続けた。

魔石の点滅は順番に右へ移動していき、右端の魔石が点滅から点灯したところで、『始め』の(ボタン)が光る。


「始められるってことかな?」

「ええ。もう魔力は十分だと思うから、把手から手を離して『始め』の釦を押して貰える?」

「おけ」


取り敢えず操作はアニスに任せ、シズアは扉の観察に専念する。


アニスともかく何が起きてもシズアを守れるように警戒しながら、『始め』の釦に手を伸ばして押す。

深く押し込まれた釦の奥でカチリと音が鳴り、それと同時に右側の魔石すべてがバラバラに点滅し始めた。


「何これ?」

「何かしらね」


全体が点滅しているおかげで、横の列ごとに色が違うことが分かった。

一番上が緑の列、そのすぐ下が黄色の列、下二列は橙だ。


少しすると点滅が収まり、上二列はすべて消え、下二列がすべて()いている状態となる。


「どうする?」

「目的が分からないわね。何か条件を満足すれば良さそうに思うけど」


「条件?」

「動かせるものと言ったらダイヤルしかないから、ダイヤルの数字の組合せに意味がありそうに思うけど」


アニスは左から順にダイヤルの摘みを持ち、それぞれ一回転ずつ回してみる。


「全部、0から7までの数字だね」

「なら、四つの番号を当てるのかな?試しに1234にしてみたら?」


「ダイヤル回すだけで良いの?」


尋ねながらも、言われた通りにダイヤルの数字を合わせていく。


「回した後に『確認』を押してみて」

「うん、押すよ。あ、光る魔石が変わった」


アニスが釦を押したところで、最上列の一番左の緑と、その下の黄色も灯った一方、反対に三列目の右端の橙が消えた。


「今度は全部1にしてみて」

「変わらないよ。と言うか、『確認』の釦が光ってないけど」


アニスはダイヤルの表示がすべて1になるようにしたが、『確認』釦は光っていない。

その状態で釦を押しても、魔石の表示に変化はない。


「どうしよか?もう一度、把手から魔力を流し込んでみる?」

「いえ、光っている魔石があるから、魔力不足ではないと思う。もう少し待ってみない?」


「うん、まぁ、シズがそう言うなら」


把手に向けて差し出そうとしていた手を引っ込め、アニスも待ちの姿勢になる。


その状態で待つこと数分、『確認』の釦が再び光り始めた。


「どうやら、確認するにも待たないといけないようね」

「一回一回待たなきゃいけないとなると、時間が掛かりそうだね」


「そうね。慎重に考えろってことかな?でも、ともかく全部1で試してみて」

「押すよ。あ、色々消えた」


アニスが釦を押すのに合わせて上二列が消え、更に三列目の右から二番目の橙も消えた。


「なら、次は全部2で」

「うん、ちょっと待って」


頼まれた通りにダイヤルを動かしてから暫く待ち、『確認』釦が光ってから、再度それを押す。

と、最上列の左一つ、二列目は左端から三つの魔石が光った。三列目は左から二番目が消え、一番左だけが点いている状態だ。


「えーと、2が特別ってことかな?」


首を傾げるアニス。


「そうね、何となく分かって来たと思うわ」

「えっ、シズ、もう答えが分かったの?」


「答えと言うか、魔石の灯りが点く法則が分かった気がするってこと。その上で何度も試していかないと答えには辿り着けないと思うけど」

「そか。大変なんだね」


「大丈夫、今日中には突破できるわよ」


アニスには先が見えておらず元気が出ていなかったが、シズアの方は目を輝かせていた。


どうでしょうか。シズアはこういう謎解きっぽいものが好きみたいです。


次話は答え合わせになります。



(2024/3/10追記)

試練の門のなんちゃって再現をブログで公開しました。


●小説「妹大好き姉の内緒のお手伝い」の第六章試練の門の再現

https://tsuretsu.blogspot.com/2024/03/blog-post_10.html


よろしければ、お試しください。


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