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Nostalgia
「なんで?」
「ねえ、なんで?」
彼女は僕の胸で泣いた。
所詮僕はこんなものだ。
たとえ好きな女性が他の男にふられて泣いていても、胸を貸すだけ。
それ以外は何もできない。
彼女にとって、僕はこの程度の存在でしかないのだから。
僕は、車のドアにそっと凭れかかった。
彼女が愛した男、勇次。
僕と勇次と彼女とひとみの四人はいつも一緒だった。
しかし勇次が愛したのはひとみだった。
浜田麻里の“Nostalgia”。
開けっ放しのウインドゥに流れていた曲。
今でも僕のオーディオから流れている。