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マリッジ
もう少し…、
もう少しだけ、このまま歩いていたい。
やっと会えた週末だもん。
せめて…、
せめて最終の新幹線まで…。
じゃなきゃ私、待てなくなっちゃうよ。
「君は強いなぁ…」
私が悪いのはわかってる。
さびしいのにさびしいと素直に言わず、いつも強がっていたんだから。
でも…。
でもね、もう、それも疲れたよ。
だって…、
7年だよ。
彼女はそっと彼を見上げた。
しかし、彼はその視線に気づくこともなく前を向いている。
………。
彼女は俯いた。
イチョウ並木の下を歩く二人に、イチョウの葉が舞った。
「結婚しよ?」
翌日かかってきた彼からの電話。
受話器から聞こえた彼の声は優しかった。