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Happy Birthday
ずぶぬれの雨の夜、アパートの錆びたポストに届いたエアメイル。
君からのだった。
そういえば…。
もうじき君の誕生日がやってくる。
去年は、みんなで騒いだ。
でも、二人きりになった帰り道、別れ際に君は不自然な微笑みを残して、それきり振り向くことはなかった。
それが君との最後だった。
あれからいくつもの夜が過ぎ去ったのに、僕はまだ人波の中に失くした影を探してる。
君がエアメイルに書いたこの住所に立ち止まったまま…。
僕の心とはうらはらに何の迷いもないエアメイル。
ずぶぬれのYシャツの胸にしわくちゃになってにじんだ。
「Happy Birthday To You」
いま、一番言いたい言葉が、
いま、一番遠い…。