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慟哭
「なぁ、聞けよ」
「いやよ」
「そんなこと言わず、聞けって」
「いや」
だって…、知ってるもん。
あたし、避けられてるかもしれない…。
そんな予感、それとなく感じてた。
なのに久しぶりの声が、
「話があるんだ」
だなんて…。
もしかして、あたし愛されてるかもしれない。
って期待、かろうじて繋いでいたのに。
「なぁ、どう思う?」
離れたテーブル。
視線の先にはあなたの愛する女性。
「そうね、いいんじゃない」
「―でもあんな女性、どこに隠してたの?」
「ハハハハハハハ―――」
あたし、なんで笑ってるの?
「ねぇ、なんかここ暑くない?」
「―あっ、そうか、二人の前だからか」
「おいおい、照れるじゃん」
なんで二人をひやかしてるの?
一晩中泣いて、泣いて泣いて泣いて、
あなたへの想いに気がついたのに、
なんで?
ねぇ、なんで一番先に知らせたのがアタシなの?
これじゃぁ、まるで皮肉みたい。
「だからさぁ、おまえも早くいい男、探せよ」
「そうね、そのうちね」
もう、彼女の前でからかうのはやめてよ、偉そうに。
いつしか、美雪の笑いには涙が混じっていた。