22/32
わがままな片想い
TIC TAC TIC TAC ―
あなたに会うたび、私の胸の時計は急ぎ足にときめくの。
でも、「好きです」なんて言えない。
プライドが邪魔するから。
あなたが違う女性といるのはとても切ないけど、
あなたの隣のイスが空いても座ったりしない。
誰かと仲良く話しては、すまし顔で背中を横眼で追うだけ。
声だってかけないわ。
あなたのまわりには優しい娘なら星の数ほどいるはず。
だから、私はとびきりつれない素振りをするの。
だって、その方が目を引くかもしれないでしょ。
―でも、これじゃぁ、やっぱり嫌われちゃうかな。
本当は、こんなにも愛してるのに…。
きっと、屈折してるのね。
走り出せないの。
「あ、ミキ? 今さぁ、みんなで飲んでんだけど、おまえも来いよ」
今日も彼からの誘い。
タクシーの窓ガラスに、街のイルミネーションが流れた。