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Good night
「映画、面白かったね」
「そうだね」
別に映画じゃなくてもよかった。
君と一緒にいられるなら。
「ねえ、今度はどこに行こうかぁ」
「そうだなぁ―」
今度は僕の好きな場所に連れてくよ。
君にもっと僕のことをわかってもらえるように。
―いや、本当は君の好きな場所に連れていってあげたい。
でも、どんなに君を笑わせても、僕は君のことを知らなすぎるから…。
二人の車内に静けさが漂う。
ただ、時間だけが流れていく。
「きもちいぃ」
助手席でウインドウを下した美咲の火照った頬を冬の冷気が撫でる。
「あっ、青だよ」
「…うん」
はぁ、
あの角を曲がれば、それで今夜も「おやすみ」だ…。
まだまだ君が遠い…。