13/32
DEPARTURES
ゲレンデに雪がちらついた。
「わあ、ねえ、見て」
「空は青いのに雪が降ってきたよ」
僕の横で彼女がはしゃぐ。
神立は何度も来ている。
彼女とのペアリフトもこれが初めてではない。
でも、こんなに鼓動が強いのは、ここに僕と彼女の二人だけだから。
もう、前を見ても振り返っても、仲間の顔はない。
リフトに乗るたびにジャンケンをする必要もない。
出会ったその瞬間に、僕は彼女を好きになり、でも、結果を恐れて距離を置いた。
彼女が僕を好きだとも知らずに。
だから、これが初めてのペアリフト。
同じシュプールを描く。
雪をかけあう。
これからは二人だけ。
これからは、ずっと一緒。