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secret base ~ 君がくれたもの ~
「そうかぁ、ここもとうとう…」
―あれは確か…彼からだったんだよな。
「一緒に帰ろう?」
不意にそう言われて、なんか照れくさくってな。
―でも、嬉しかったなぁ。
彼は夏休みの少し前にやってきた。
転校生ということもあって、気にはなっていたが、
ひとみしりと友達付き合いがあまり得意ではなかった自分には、
声をかけることができないでいた。
だから、とても嬉しかったんだ。
そして、彼は夏休みの終わりとともにまた転校していった。
俺は彼とあの夏の終わりを忘れない。
あの、二人の秘密基地を。
ここでのことを。
10年後の夏、また会えることを信じて、涙をこらえたことを。
ありがとう、タカシ。
最高の思い出を…。
二人の秘密基地。
今は重機によって整地が進んでいた。
―あれ? タカシの名字、なんだっけ…。