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89話 「ハーレム」 その8

「……貴女たちの反応でだいたい分かったわ。 少なくともゆいみたいな子は多くはないってだけで充分よ。 男の子なのに女の子にしか見えないだなんて混乱するんだもの」

「そうね。 昔から一定数は居たでしょうけれど……」


「女装も男装も紀元前からあったんですから良いんです!」

「美希ちゃん、最近この話題好きねぇ……」


「とまあゆいくんが特殊だからこそ素敵というのは置いておきまして。 美希さん」

「? どうしたの?」


「美希さんが小学校のころ女の子にモテていた男の子ってどんな感じだったか思いだしてみてください」

「えっと。 ……かけっこが早くておしゃべりで元気な子?」


「千花さんは?」

「私? ……そうねぇ、休み時間も授業中も他の子と楽しそうに話してる子かしら? 距離感も近かったり……あといろんな話題についていける子って言うのは中学でもおんなじねぇ。 テレビから漫画から雑誌から」


「ゆいくん。 女の子の格好してるの除けばそれ、ぜーんぶ満たすんです」


「あっ……」

「……なるほどねぇ」


小学生までには小学生までの価値観がある。


それは単純な元気さであったり親しみやすさ……初対面とでもすぐに友だちになれる度胸だったり、相手への興味だったり。


そして小学生の恋愛というのは単純で淡いもので「少し気になる」程度が「好き」な相手。


……自分たちと同じ格好をしていても会話の内容は男子そのもの。

そんなゆいが同世代の女子たちにモテないはずがなかった。


「貴女もそう単純だったら良かったのに」

「あー。 沙月さん失礼ですよ? 自分が暗黒の小中学生時代を過ごしたからっていって私にやつあたりしないでください」


「私はろくに通わなかったから……確かにそうね」

「そこで納得しないで頂戴、沙月」

「でも実際にそうだもの。 本当のことは感情と切り離すべきよ、だいふく」


「そうねぇ、だから家では楽しそうにしているもの」

「お姉様も……いえ、良いです」


「とにかくゆいくんは同級生の女子にモテる要素を全部持ってるんです。 誰とでもすぐに仲良くなって明るくて楽しくて登校から下校まで誰かと話していますし休み時間や体育の時間も体操着で遊び回ってて」

「みどり」


「少しお話を聞かないところとかも聞いてって言えばちゃんと聞いてくれますし、ゆいくんって根本的に人が好きなのでほとんど誰とでも仲良くなれちゃうんですよ例えば私みたいに静かが好きな根暗な子相手だって合わせて静かにしてくれますしお兄さんやお姉さんが居るので男女の話題どっちにでも着いて行けて」


「みどり落ち着きなさい」


「……あら失礼しました。 沙月さんも思いの丈をどうぞ」

「遠慮しておくわ」


「ならだいふく?」

「あたしも結構ね」


声のトーンを一切に上げずに淡々と話し続ける姿にうっすらとした恐怖を覚える沙月とだいふく。


いつものだと気にしなくなってきた千花に美希、それもかわいいと思っている姉で……この場に居ないゆいなら「いつものみどりちゃん」で終わってしまう。


「みどりちゃんに追加で言うとねー? おっちょこちょいで突っ走るクセがあるのよー」

「知っています。 何回あの子が勝手に出て苦労したか……」

「そうよねー、沙月ちゃんなら分かるわよねぇ」

「ええ」


「そうして危なっかしいところがませてる子とか精神年齢が高い子、後は私たちみたいに年上の母性みたいなのをくすぐるの」

「それは分かりません」

「だいふくちゃんは?」

「分からないわね。 あたしと沙月は苦労をさせられた方だから」


さりげない誘導は姉からも飛んでくる。

言質を避けようと警戒を続ける沙月たち。


「そ……それが、お姉さんが」

「そうなのよー、ゆいくんのこと弟でも好きだっていう理由なのー」

「か、軽いわ……インモラルなはずなのに軽い……!」


「……あたしたちはそれぞれが別個体だからよく分からないけれど、人間にとって同じ家族だと駄目なのでしょう?」

「仕方ないわー、それが好きって気持ちだから。 たとえゆいくんが男の子らしい男の子でもおなじだったって思うものー」


「……そ。 ま、まあゆいってば魂が。 ……なんでもない」

「だいふく?」

「ぴっ!? ……魂とか発せられている魔力が相手を引き寄せるタイプってだけなの! いちいち怖いの!」


「えー。 でもだからだいふくも堕ちちゃったんだよね」

「……知らないわ」



♂(+♀)



「と言うことでゆいくんが女の子の格好が好きで似合っていて普段から男の娘なのは問題じゃありません」

「散々話したことを手軽にまとめたわね」

「だって話しかけるまでは完璧な女の子してますよね?」


「さっちゃんセンパイゆい君にキスされるまで女の子だって思ってましたもんね!」

「……忘れて欲しいのだけれど」

「わたしたちも言われるまで……」


「お母さん譲りの顔と肌とお兄さん仕込みのお化粧……あ、お休みの日だけですけど。 つまりはギャップ萌えだってことです」

「ゆいくんも罪な弟よねー」

「いえ、お兄様のせいで余計に」


「ゆいくんはギャップの塊みたいな男の子なんです」

「みどりちゃん元気ねぇ」

「ゆ、ゆいくんのことが好きだから……」


「だから今の時点で女の子で33人に男の子の15人から少なからず好かれているんです。 もちろん小学生の範囲な恋心を。 あ、もちろん私たちを抜いてですよ?」


「…………………………………………え?」


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