その3
※こちらはカドゲ・ボドゲカフェ企画の参加作品となります。
全部でその10まであります。本日6/13はその3までを投稿する予定です。明日6/14にその4からその6までを、あさって6/15にその7からその10までを投稿します。
その4からその6までがゲームのインスト、その7から実際にゲームが始まります。
それでは最後までどうぞお楽しみくださいませ(^^♪
「ほう、えーっと……許さないなら、どうするつもりだ?」
ワオンがなぜか棒読みで聞き返します。ルージュが非難するような目でワオンを見ていますが、ワオンはテーブルのすみに置かれた、小さな紙のようなものをじっと見つめています。しかし、恐ろしさでいっぱいのブーリンとウリリンは、そんなことには全く気づかず、必死でプリンの腕を引っぱろうとします。ですが、プリンは一歩も引きませんでした。
「ルージュちゃんを食べる前に、ぼくたちと勝負するんだ!」
これにはブーリンもウリリンも、まん丸い目を大きく見開いて固まってしまいました。子ブタがオオカミと戦って、勝てるはずがありません。しかし、ワオンはガッハッハと豪快に笑ってうなずきました。
「いいだろう、それならお前たちと勝負して、もしお前たちが勝ったらルージュさんを解放してやろう。だが、おいらが勝ったら、お前たちも食べちゃうからな!」
またしてもギザギザの牙を見せびらかすワオンに、ウリリンが「ひぃぃっ」と悲鳴をあげました。ブーリンもプリンの腕をぐいぐい引っぱり、早口でどなります。
「おい、なにバカなこといってるんだ! こんな恐ろしいオオカミと勝負するなんて、そんなことできるはずないだろう! 勝てるわけないじゃないか! 早いとこ逃げよう!」
ブーリンの言葉を聞いて、プリンがブーッと怒ったようにうなりました。
「ルージュちゃんを見捨てるつもりなの?」
「そ、それは……」
ブーリンは固まってしまいました。ブーリンはルージュをよくお茶会に呼んでいて、いつもデレデレしているのを、プリンはよく知っていました。ワオンとルージュを交互に見るブーリンでしたが、今度はウリリンが考え深げな顔で質問しました。
「勝負っていったって、いったいなにで戦うつもりだ? それに、おれたちが勝ったら、本当にルージュちゃんを解放してくれるのか?」
「いい質問だね。もちろん、君たちが勝ったらルージュさんを解放するし、もちろんおいらは君たちを食べたりもしないよ。約束する。それで、勝負の方法だけど、おいらとボードゲームで戦ってもらおうか。それで君たちが勝ったら、ルージュさんを解放するよ」
さっきまでの、なんとも意地悪な声から一転して、ワオンが優しい声になっていたので、ルージュがコホンッとせきばらいしました。ワオンはハッとあわてたようにルージュを見てから、ガッハッハと意地悪な笑い声をつけくわえました。
「さあ、どうするんだい? やるのか、それとも逃げるのか?」
「もちろんやるぞ! ぼくたちでルージュちゃんを助けるんだ!」
プリンの勇ましい声を聞いて、ブーリンとウリリンは腕を引っぱるのをやめました。もう一度お互いの顔を見合わせてから、最後にプリンと目をあわせます。プリンがしっかりうなずくのを見て、二人もどうやら覚悟を決めたのでしょう。ワオンのおとぎボドゲカフェの中へと入っていきました。
「よし、それじゃあ君たちはそこにすわって待っていてよ。今からおいらがゲームを用意するからさ」
いわれて三人は、少し広めのテーブル席へつきました。カウンターの奥へ消えていくワオンを見ながら、ブーリンが小声でプリンにたずねます。
「おい、ゲームをするっていったって、本当に勝てるのか? そもそもわしは、ゲームなんてしたことがないんだぞ。勝算はあるのか?」
ふるえる声で聞くブーリンに、プリンは勇気づけるようにうなずきました。
「大丈夫だよ、ぼくたち三人が力をあわせれば、絶対勝てるよ! だから、みんなで協力してがんばろう」
プリンの言葉に、ブーリンはまだ不安げな表情でしたが、こくりとうなずきました。しかし、ウリリンはうーむと、難しそうな顔で考えこんでいます。
「やあ、お待たせ。それじゃあゲームと、ひとまず紅茶とイチゴのショートケーキを用意したよ」
ゲームの箱だけでなく、人数分のケーキと紅茶を用意していたワオンを見て、ルージュはあきれたように小声でツッコみました。
「……ワオンさん、それじゃあどう見ても、良いオオカミさんみたいじゃないですか」
ルージュのツッコミに、ワオンはハッとして、それからあわあわいいながら言い訳を始めたのです。
「あ、そ、その、これは、あの、そうだ! あれだよ、ほら、ケーキを食べさせてから、お前たちを太らせようという作戦だ! だから存分にケーキと紅茶を楽しむといいぞ、ガッハッハ」
ワオンのダメダメな言い訳を聞いて、ルージュははぁっと小さくため息をつきました。ですが、ブーリンはガタガタふるえて、泣きそうな声でワオンに抗議したのです。
「なんてひどいやつだ! それじゃあこのケーキと紅茶にも、毒かなんかしこんだな!」
「ええっ? いや、そんなひどいことしないよ!」
これにはワオンもびっくりであわててブンブン首をふります。見かねたプリンが、パクッと一口ショートケーキを食べたのです。
「うん、おいしい。大丈夫だよ、ブーリン兄ちゃん。それにウリリンも。このケーキはすっごくおいしいよ。紅茶も飲んでも大丈夫だったし、毒なんか入ってないよ」
「えっ、あ、ああ、そうか……。まぁ、プリンがいうなら、そうなのかな」
もともとおいしいケーキには目がないブーリンです。プリンがおいしそうに食べているのを見て、とうとう一口、パクッと食いついたのでした。とたんにまん丸い目がきらきらと輝きます。
「うわっ、うまい! すげぇ甘くて、スポンジはふわふわで、クリームからはほのかにイチゴの香りがするぞ! こりゃうめぇや!」
「ホントに? よかった、うれしいなぁ。生クリームにイチゴシロップを混ぜたんだよ。もちろんイチゴもたっぷり使ってるから、イチゴ好きにはたまらないと思うよ」
ワオンの言葉通り、ブーリンはうんうんうなずきながら、あっという間にケーキを平らげてしまいました。それを見てニコニコしているワオンに、ルージュのツッコミが飛んできます。
「それで、ルールの説明はしないでいいんですか?」
「あっ……。よ、よし、それじゃあルールを説明しよう、ガッハッハ」
またしても意地悪な笑い声をつけくわえるワオンを、ルージュははぁっとため息まじりに見るのでした。
本日の投稿はここまでとなります。
明日もどうぞお楽しみに(^^♪