表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/10

その10 ~ゲーム本編~

※こちらはカドゲ・ボドゲカフェ企画の参加作品となります。

全部でその10まであります。本日6/15はその7からその10までを投稿します。

その4からその6までがゲームのインスト、その7から実際にゲームが始まります。

それでは最後までどうぞお楽しみくださいませ(^^♪

 指でトントンッと机をたたきながら暗算して、ウリリンはふーっとため息をつきました。それを聞いて、ブーリンがブーッと思わずほえるように鳴きました。


「よっしゃあ! ウリリン、お前やるじゃないか! とりあえずじゃあこれで、わしらは食べられずにすむんだな。そして一位はわしだ! いくつか家を壊されても、まだまだ大量にあるからな。ウリリン、わしに感謝しろよ」


 ブーブーッとうれしさのあまり鳴きまくるブーリンでしたが、ウリリンは申し訳なさそうに口をはさみました。


「いや、あの……悪いけど、子ブタ村のプレイヤー同士で勝ち負けを決めるときは、家の数だけじゃなくて、家の種類も得点にからむから、多分ブーリン兄ちゃんは一位じゃないと思うよ」


 先ほどまでブーブーッと喜びの鳴き声をあげていたブーリンが、ピタッと止まってしまいました。しばらく固まっていたあとに、ようやくウリリンをふりかえって問いただします。


「おい、それ、どういうことだよ?」

「うん、とりあえずさっきいったような動きをすれば、おれの計算だと多分一位はプリンになると思うんだよ。だってプリンは、最初に5軒も木の家を建てていたんだからさ」


 ウリリンの言葉に、ブーッと非難するように鳴いて、ブーリンが食い下がります。


「だけどよ、わしのほうがわらの家の数は多いんだぜ!」

「でも、子ブタ村のプレイヤー同士で勝ち負けを決めるときは、わらの家は1点にしかならないよ。それに対して、木の家とレンガの家はそれぞれ2点ずつだ。だからブーリン兄ちゃんのほうが家が多くても、点数でいえばプリンのほうが上になるんだよ」


 ウリリンの説明がよほどショックだったのでしょう、ブーリンはよろよろとあとずさって、ドサッといすに座りこんでしまいました。さすがのウリリンも気の毒に思ったのでしょう、えんりょがちにつけくわえます。


「あ、でも、おれの計算が合ってたら、おれとブーリン兄ちゃんは同点だから、ビリじゃないんだしいいだろ?」

「ビリじゃないからいい、だって? バカッ! わしは世界一の大工を目指しているんだ! たとえゲームでも、家を建てるゲームでわしが負けるなんて絶対あっちゃいけないんだ!」


 ウリリンになぐさめられたのがよっぽど腹にすえかねたのか、ブーッ、ブーッと何度も鳴いて、それからブーリンはギロッとフィールドをにらみつけたのです。


「……こうなったら、レンガの家なんて建てないぞ! ウリリンのいう通りになんてするもんか! もっとうまいやりかたを考えて、わしが一番になってやる!」


 わらの家トークンをつかんでフィールドをねめつけるブーリンを見て、ウリリンがあわてて止めに入りました。


「ちょっと、ダメだよやめて! もし今山にレンガの家を建てて、オオカミトークンの進路をふさがなかったら、もう囲むことはできないんだぞ! そうなったらおしまいだ! どんどん家を壊されて、猟師トークンを手にするチャンスすらなくなるよ。それでどんどん差をつけられたところで、最後のオオカミトークンを出されて終わりだ。ブーリン兄ちゃん、落ち着いてよ!」

「うるさいうるさい! わしは一番にならなくちゃ気がすまないんだ! ……一番になれないんなら、わしはワオンに食われたほうがましだ!」


 わらの家トークンをフィールドに置こうとするので、ウリリンもとうとう立ち上がってその手をがしっとつかみました。


「どうしてそんなに意地っ張りなんだよ! そんなこといって、もし本当に食べられちゃったらおしまいなんだぜ! 勝ち負けどころか、死んじゃうんだよ!」

「離せ、わしは自分で考える! もっとうまいほうほうが絶対あるはずだ! わしが一番になる方法が、絶対あるはずなんだ!」


 取っ組み合いのけんかの一歩手前まで来ている二人に、ワオンもルージュもおろおろするしかありませんでした。


「どうしよう、どうしよう、どうしよう! あぁ、おいらがこんなゲームをしようっていったばっかりに……」


 頭をかかえるうちに、ワオンはプリンと目がありました。プリンもやっぱり、二人の剣幕に押されて固まっている……と思ったのですが、プリンは眉間にしわを寄せて、ありったけの大声で二人をどなりつけたのです。


「誰が一番かなんて関係ないよ! ううん、ぼくたちはチームだ! あとちょっとでワオンさんに勝てる、チームが一番になれるんだ! だったらぼくたちみんなが一番じゃないか!」


 突然声を張り上げたプリンに、さすがのブーリンとウリリンもビクッとなって腕を離してしまいました。しかし、プリンはもう止まりませんでした。


「だいたい、ぼくが一位だって? そんなのおかしいじゃないか、だってぼく、ただ木の家を建ててただけだよ! ブーリン兄ちゃんみたいに、たくさん家を建てて猟師トークンを手に入れたりしていない。ウリリンみたいに、いっぱい考えて勝てる道筋を見つけたりしていない。ぼくはなんの役にも立っていないよ。……だからぼくは一位なんかじゃない。一位は、ブーリン兄ちゃんとウリリンの二人だよ」

「いや、でもよ、点数じゃ、お前が一位になるんだろう?」


 いつもはおどおどしているだけの、プリンの迫力に押されて、ブーリンがこわごわ質問します。しかし、プリンはブンブンッと首をふって答えました。


「ぼくはなんにもしてないよ。……それは、ゲームだけじゃない。大工の仕事だって、ぼくはブーリン兄ちゃんとウリリンのことを見てるだけで、なんにも役に立ってなかった。ブーリン兄ちゃんみたいに、仕事が早いわけじゃないし、ウリリンみたいに、丁寧な仕事はできないよ」

「プリン……」


 プリンはさらにありったけの思いを口にしていきます。


「だけど、ぼくね、二人といっしょに仕事していたい! 二人といっしょのチームにいたい! だって、二人ともすごい大工さんだから、いっしょに仕事しててとても楽しいから……。だから、こんなところで食べられて終わりだなんていやだし、二人がケンカしているのを見るのもいやなんだ! 二人とも、ぼくの大好きな兄弟なんだから!」


 最後はもう、のどがはりさけてしまいそうなくらいの勢いでさけぶプリンを、ブーリンもウリリンもなにもいえずに見ていましたが、やがてブーリンはコトッとわらの家トークンを手元に戻しました。そしてレンガの家トークンを手に取り、だまってウリリンが指示した山へ置いたのです。


「ブーリン兄ちゃん……」

「勘違いするなよ、ウリリン。わしはお前に負けたわけでもないし、今でも仕事には手際の良さが大事だって思っている。……だが、このゲームはお前のいうことを聞くよ。わしも食べられたくはないし、食べられたらわしの夢が、世界一の大工になる夢がかなわなくなってしまうからな」


 へへっと笑うブーリンを見て、ウリリンはゴシゴシッと目元を腕でこすりました。そして一言、「ありがとう」とだけいって、プリンを見ました。


「それじゃあ、さっきおれがいった通りに、レンガの家を建てていってくれ」


 さけび疲れて肩で息をしていたプリンは、ウリリンの、そしてブーリンの顔を見ていきます。しばらく言葉を探して迷うプリンでしたが、見つけたのはウリリンと同じ言葉でした。


「ウリリン、ブーリン兄ちゃん……ありがとう」




 結局『子ブタ村と目覚めるオオカミ』ゲームは、ウリリンが予想した通り、子ブタ村プレイヤー側がなんとか1点差で勝つことに成功したのです。


「よっしゃあ! さぁ、この性悪オオカミめ、約束通りルージュちゃんは返してもらうぞ! それにお前は、この森から出ていってもらうからな!」


 ブーリンが鼻息荒くワオンを問いつめますが、ウリリンがあきれたように止めました。


「ブーリン兄ちゃん、もういいってば。ワオン……さんも、お芝居はもういいだろう?」


 ウリリンの言葉に、ワオンは「おぉっ」と思わず声をもらしました。


「なんだ、ウリリン君は気づいてたのか。がんばって悪いオオカミを演じてたのに、気づかれてたなんて」

「ワオンさんったら、全然悪いオオカミになんてなれてなかったじゃないの。ま、でも、そこがワオンさんのいいところなんだけどね」


 うふふと笑うルージュを、ワオンもジト目で見かえします。


「それをいうならルージュさんもじゃないか。人質役なのに、縄をほどいてほしいなんていうし、ケーキと紅茶を楽しんでたし。あれじゃあおいらががんばって演技しても、バレちゃうよ」

「あら、わたしがおとなしくしてても、どうせバレてたわよ。あ、そうだ、わたしクルミとはちみつのマフィンが食べたいわ。それに紅茶……ううん、ミルクティーをいただけるかしら?」


 ちゃっかりお願いするルージュを、目をぱちぱちさせて見るワオンでしたが、やがてアハハハと笑ってうなずきました。


「さ、ネタばらししたところで、みんなも飲み物のおかわりはどうだい? それに今度は、ルージュちゃんがオオカミプレイヤーでやってみようか? おいらとマーイ、ブラン君の三人が子ブタ村のプレイヤー側でやったときは、全然勝てなくて大変だったんだよ。だけど、君たちの今のチームワークだったら、ルージュちゃんにも勝てるんじゃないかな?」


 ワオンにいわれて、三人はお互い顔を見合わせましたが、すぐに照れたように笑い合ったのです。ワオンのおとぎボドゲカフェに、みんなの笑い声がひびきわたりました。

最後までお読みくださいましてありがとうございます(^^♪

ご意見・ご感想、特に今回のインスト(ルール説明)が分かりやすかったかどうかについて教えていただけるとありがたいです、そのほかにも良かった点、気になった点などお待ちしております。

カドゲ・ボドゲカフェ企画は6/30まで開催しておりますので、どうぞ企画をお楽しみください(^^)/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 今回のゲームも面白そうですね。 見た目にも楽しそうで、映像で見たくなってしまいました^^ [一言] こんにちは。 こちらも遅ればせながら読ませて頂きました。 バラバラの3人はどうなるんだ…
[良い点] 前作のゲームよりもさらに複雑なルールのゲームで、ウリリンの視点を軸に描かれた戦略と駆け引きにハラハラしました! ですが、やはりそこは、ゲームを舞台に人間模様が展開するのがこのシリーズの醍醐…
[一言] ボードゲームといえば、人生ゲームとすごろく、オセロにダイヤモンドゲームくらいしか経験がないのですが(しかもダイヤモンドゲームは未だにルールが覚えられない)、もうハラハラドキドキしてしまうゲー…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ