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獣と共に夢の中  作者:
奏(そう)
46/60

三日目夕方2

休憩の後、全員が足取りも重く椅子へと戻って来た。

これが最後の会議だ。このまま投票になるので、皆の足も自然重くなるのだろう。

二十時まで、もう後半時間ほどだった。

司は、皆が座ったのを見て、言った。

「じゃあ、続きだね。今日はグレー吊りだ。それで、投票対象は弘、亜子さん、克己、征由、昴の五人。もちろん、占われている中に囲いが発生しているかもだけど、狼は四人、狐は二人だ。この中にまだ、人外が残っていると思って、投票しよう。」

神が、口を開いた。

「ちょっと思ったんだが。」皆が神を見る。神は続けた。「霊能から吊るという事を推す占い師が居るので、どういうことかと考えた。もし霊能からだったら、間違いなく美奈子さんからだろう。私は今日の時点なら黒を打っている玲史が妥当だと思っていたが、村の疑い先はそこだからだ。で、美奈子さんが真であった時、光一は白。だが、それで人外が吊れていないと考えるのは時期尚早だ。」

どっちも真の可能性があるのを皆に念押しするためだなと、奏は頷いた。

「光一が狐であれば、ですよね。」

神は頷いた。

「そうだ。だとしたら美奈子さんが残り吊り縄を軽視していてもおかしくはない。とはいえ、美奈子さんがそこまで考えが至っていないのは知っている。ただ単に浅はかな人外なのか真なのかもしれない。だが…もし、人外が美奈子さんを真だと知っていたら、さっさと処分してしまいたいだろう。白黒出ているので、狼には真贋が分かっているはずだ。だから狼なら、霊能を吊って欲しいのではないか?ローラーになるとしても、私目線玲史は白なので偽でも狂人だ。狼は別に、両方吊られても良いわけだ。霊能者さえ居なくなれば、占い結果は打ち放題になる。黒が出てそこを吊ってもそれを証明出来る術がない。村は呪殺の他に真占い師を特定出来る術がなくなるのだ。」

渚の真を、更に落としておく算段だろう。

渚が狼で、明日出す黒のために霊能を今日から吊りきって、明後日の結果を出させないつもりではないかと言っているのだ。

「…渚さんが、狼かもしれないと。」

司が言うと、神は頷いた。

「あくまでも私の主観だがね。それに、どうせ吊りきられるのならどっちからでも狼にとっては良いだろうしな。美奈子さんが真だと言ってるわけではない。単に仮説として、まだ美奈子さんにも真である可能性があるのだと言っているのだ。なので、やはり今夜霊能吊りを推すのはおかしいと思うのだ。」

渚は、神に金切り声で叫んだ。

「また!自分が攻撃されたからって、私をはめようとしてる!そんなの、屁理屈でしかないわ!」

ああうるさいな。

奏は思ったが、口に出しては言わない。

しかし神は、うるさそうに手を振った。

「これは私目線の仮説だ。それを採用するかしないかは村が決めること。ただ、私が今これを話したのは、渚さんを吊るためではない。」と、亜子を見た。亜子がびくりと肩を震わせた。「…その、私から見て疑わしい発言をしている渚さんが、亜子さんを庇っているのが気に掛かる。今日吊られるのは、村の空気的にグレーの中では亜子さんか征由だろう。だが、私はこれまでの議論で、征由は人狼にはめられているような印象を持った。なので占い対象で良い。なので、私目線は今夜は亜子さんを吊るべきではないかと思っているのだ。」

「そんなの飲めるはずない!あなたこそ征由さんを庇ってるんじゃないの?!征由さんを吊って、亜子さんを私が占うわ!そうしたら分かるじゃないの!」

渚が言うのに、奏は首を振った。

「仮に亜子さんを残すとしても、占うのは君じゃない。白しか出ないのが透けて見えるからね。神さんか亨さんだろう。」

神は、頷いた。

「同じ理由で征由が残ったとしても、占うのは私ではない。亨か渚さんだろう。ま、亨になるだろうがね。渚さんは黒を嬉々として打つ可能性がある。」

渚は、鬼の首を取ったように笑った。

「ほら!尻尾を出したわね?私が真だから黒を見破られるのを知ってるんでしょ?!あなたが狼なんだわ!」

征由が、息をついた。

「オレは狼じゃねぇ。というか、黒塗りされたり庇われたり忙しいな。まあ考え方は変わって来るから、状況でオレが白いと分かってくれたなら良いんだ。別にオレ吊っても白しか出ねぇから、もうどっちでも良いけどよ…発言が全く伸びない女と比べられて、黒いって言われて吊られるのは我慢がならねぇ。オレを吊るなら、そっちの女も吊ってくれ。」

…うーん、亜子は狐だと思ってるんだけどなあ。もしかしたら征由はただの村人なんだろうか。やたら亜子と対立姿勢だなあ。

奏は、考えた。どっちかが吊られそうだから、明日の吊りを逃れるために、対立を演出しているのか?

それとも、あまりにも不甲斐ない相方に失望して諦めたのか。狐だったらどっちみち、今夜占われてその占い師が真だったら消えるし。

それでも、亜子はだんまりで発言する様子はなかった。

「待ってよ!なんだってそうなるのよ!あなた明日、黒が出て仲間も吊られるのよ?それなのに吊られて良いですって?!」

渚が征由に言う。征由は、ふんと鼻で息を吐いた。

「オレは白しか出ねぇよ。もしかしたら霊能に狂人が居て、明日黒を打てって指示してるつもりか?あんた、ほんとに怪しいな。あんたこそ、ボケッとしてる仲間を庇って大丈夫なのか?それとも昨日光一が吊られてて焦ってるのか。三人も露出しちゃあな。残りの一人に同情するよ。」

まあ君はどのみち白だよね。

奏が思って聞いていると、声が響いた。

『10分前です。』

全員が、息を飲む。後、10分…。

「言い残した事はないか?」神が、グレー達に言った。「村のために。自分が白なら生き残る努力をしろ。皆で生きて帰るためにも、村人なら吊られるんじゃない。最終日まで余裕を持たせるために、足掻くのだ。」

弘が言った。

「オレは生き残る。村人だからな。これまできちんと考えて来て、村に落として来た。みんなを信じる。」

昴も、それには頷いた。

「僕だってそうだよ。言う事は言った。でも、亨さんがずっと黙ってるのが気になってるけどね。」

そういえば、占い師同士の戦いになっているのに、亨は一言も発しなかった。

皆が亨を見ると、緊張したように皆を見返した。

「…オレにもどっちが仲間なのかそうでないのか分からない。だから、どっちの味方も出来ないから黙っていたんだ。」

亨目線ではそうかも知れない。

だが、自分に火の粉が来ないように潜んでいる人外にも見えた。

『1分前です。』

残り時間が1分を切り、容赦なく減っていく。

皆は、腕輪を開いて前に構えた。誰を信じて誰に入れるかは、自分自身にかかっている。

『10秒前、9、8、』

今夜は亜子吊り。

奏は、落ち着いていた。

『3、2、1、投票してください。』

全員が、思い思いの番号を入力した。

思いの外今日は全員が上手く入力したようで、エラー音声が聴こえて来る様子はなかった。

『投票が終わりました。結果を表示します。』

1(神)→15

2(奏)→15

3(永二)→18

4(玲史)→15

5(由佳)→18

6(司)→15

7(弘)→15

8(渚)→18

10(里美)→15

13(良樹)→15

14(克己)→15

15(亜子)→18

16(美奈子)→15

17(亨)→15

18(征由)→15

19(早苗)→18

20(昴)→15

そして、大きく『15』と表示された。

…うん、安定進行だな。

奏は、満足して亜子を見た。

『No.15が追放されます。』

「いや!」亜子が叫んで立ち上がった。「いやよ!私は人狼じゃないの!」

亜子は、リビングの扉に向かって走り出した。

「ダメだ、走ったりしたら…!」

あちこち怪我したら、後が面倒だ。

なぜかそう思った奏が止めようと腰を浮かせたが、亜子は扉まで行き着く前にどうと倒れて、変な形にぐにゃりと手足を折り曲げて転がった。

バキッという嫌な音が同時に聴こえる。

機械音声が、無表情に言った。

『No.15は追放されました。夜行動に備えてください。』

そうして、音声は途切れた。

…最悪。足が折れたな。

「今の音なんだ…?」

司が恐る恐る言うと、神が答えた。

「脚の骨が折れたのだ。」皆がヒッ!と声を上げる。神はため息をついて立ち上がった。「これでもしこの子の陣営が勝利しても、生き返ったとして脚に激痛が走るだろうな。皆も、追放対象になっても被害を抑えるために、じっとしている方がいい。」

奏は、亜子に近付いて体を上向きに寝かせて、脚の様子を見た。思った通り、伝わって来る感覚は、腓骨がばっきり折れている様子だった。

「…ああ、変な形に受け身もなく倒れたから。やっぱり左の腓骨が恐らく斜めにいってますね。」

神は、頷いた。

「ボルトで固定しなきゃならんから、脚に大きな傷が残るな。女性にはキツいな。」

奏は亜子の様子を見ながら、続けた。

「…このまま移動させたらもっと骨がずれて筋肉が傷つくから、誰かシーツを持って来てくれないか。それでハンモックのようにして、静かに運ぼう。」

弘が頷いて、サッとリビングを出て行った。

渚が、わなわなと震えて、言った。

「そんな…今さらそんな気遣いしたって無駄よ!あなた達が、寄ってたかってこの子を殺したのよ!どうせこの村は人狼の言いなりで、滅びて亜子だって生き返って来られないわ!あんた達のせいよ!」

司が、険しい顔で渚を見た。

「言い過ぎだぞ。じゃあ君は今日征由を処刑していたら、自分が殺したんだと皆に責められても良いんだな?君だって投票してるじゃないか。自分がルール違反で追放されないために。だったら、明日の投票は君はしなくて良いよ。他の皆で考える。君は居ないものとしてね。」

基本穏やかな司だったが、どうやら腹が立ったようできつめの言葉だ。

全員、自分が死なないために誰かに投票しているのに、他を責めるのはおかしいのだ。

弘が、シーツを持って降りて来て、険悪な空気を感じて立ち止ったが、すぐに奏にシーツを渡した。

「亜子さんの部屋から持って来た。これでいいか?」

奏は、頷いてその脇にそのシーツを広げて置いた。

「じゃあ、ここへ移動させよう。ゆっくりね。良樹、昴、君達も手伝って。」

男性達が、そちらへ寄って行く。

渚は、司に責められて返す言葉がないようで、立ち上がってそこを出て行こうとしたが、神が言った。

「部屋へ帰るのか?占い先を決めなければならないぞ。それとも君は、真占い師ではないと認めて逃げるのかね?」

渚は、グッと拳を握り締めたが、叫んだ。

「…私は、征由さんを占うわよ!あんた達が殺した亜子の対抗でしょ?私が占うわ!」

「そんな一方的な!」

司が止めようとしたが、渚はサッサとリビングから出て行った。

まあ、君は真占い師だから征由を占ってくれたら助かるけどね。

奏は思いながら、運ぶ準備を終えて言った。

「…待っててください。オレ達で亜子さんを部屋へ連れて行って来るんで。」

そして弘、良樹、克己、昴、征由と一緒に亜子を乗せたシーツを囲んで掴み、持ち上げた。

司は、奏たちに頷いた。

「よろしくお願いします。」

六人は、亜子の19号室へと、亜子を運んで行ったのだった。

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