三日目昼
食事にはまだ早い時間だったので、狼達は密かに神の部屋へと集まった。
みんな思い思いの場所に居るが、大半が部屋に籠っている時間なのでバレる事はない。
奏は誰にも見られないように気を遣いながら、神の部屋へと入ると、克己と良樹がもう来ていて、神と話していた。
「来たか。で、今後なんだが、まずは征由を疑う。」
奏は、眉を上げた。
「亜子さんじゃなくて?」
神は、頷いた。
「私に考えがあるのだ。皆は恐らく征由を吊ろうと意見を出し合うだろう。そこで、私は彼に味方が居ない事を理由に庇う。もしかしたら庇う者が居るかもしれないが、皆自分を守るために必死だから少数だろう。」
奏は、顔をしかめた。
「どうしてそんな面倒なことを。」
神は、言った。
「村を納得させるためだ。思考の動きを状況を見て決めているように見せかけるのだ。その方が説得力があるからな。皆で見ながら進んで行くから、私に誘導されていると感じさせづらくなるのだ。」
確かに状況の移り変わりを見せ付ける事で村に分かりやすくはなるだろう。
「で?次の日に吊るわけですか?縄消費に使うために生かせるんですね。」
神は、首を傾げた。
「いや…真占い師達のどちらかに占わせて、白なら面倒な奴だから後に噛むし、そうでないなら溶けるだろう。狐ではないかと疑っているのだが…あまり亜子と接触がないので違うかもしれないしな。占わせるのが一番いいのだ。」
良樹は、目を丸くした。
「え、狐?そう言えば神さん、目立つ行動をする一人と、潜んでいる一人が居るだろうとか何とか発言してましたよね。その、狼でも狐でもおかしくない位置が征由だって。」
神は、頷く。
「そう。私は今でもそう思っている。つまり狼ではない以上、征由は狐かもなと思うのだ。もちろん、盤面上そうでは無いかというだけで、確信はない。だが、消しておく事で目線がスッキリするのも確かだ。村人にとっても、狼にとってもな。なので、占わせて確認して、生き残ったら面倒なヤツなので消えてもらうのだ。」
克己は、腕を組んで言った。
「そうかーまあ、狐はネックだしなあ。で、オレこれから玲史の所へ行って来ようかなって思うんだけど、どうしたらいい?明日の結果はこっちが指示するって言ったらいいかな。」
神は、頷く。
「誰が吊られるかで決まるが、亜子さんなら黒を出してもらうと思う。投票は常に事前に言うからそこへ入れろと言っておいてくれ。玲史が狂人だと信頼できるようになったら、私達の事を明かしても良いが、まだ君だけで頼む。」
克己は、頷いた。
「オッケー。じゃ、さっさと行って来る。今夜はじゃあ、流れを見て決めたらいいか?」
神はまた頷いた。
「そうだが、恐らく亜子吊りになるようには誘導する。占いへのあの怯えようは恐らく狐だと思うからな。」
克己は頷いて、扉を薄く開いて外の様子を窺うと、サッと出て行った。
奏は、それを見送って言った。
「そう上手く行きますかね。みんな結構慎重になって来るんじゃないですか。神さん目線が破綻しないようにお願いしますよ。」
神は、笑った。
「誰に言っているのだ。私は先々まで筋書きを考えているぞ?幾通りもな。グレーの中では最後には永二に黒打ちしたいと思っているので、今日から少しずつ怪しい意見を積み重ねておくことにするよ。私の筋書きの一つが、私目線光一、亜子、永二、そして美奈子か克己を黒という設定で進めたいと思っているのだ。上手く行かない物を上手く誘導するのが面白いと思っているので、少し抵抗があった方がいいかもしれないな。そうなって来ると、征由は村人だったら生かして置いて戦う方が良いか…。」
神は、ブツブツと考え始めた。
良樹と奏は、顔を見合わせて苦笑すると、二人で扉の外を窺い、そうして自分の部屋へと帰って行ったのだった。
例によって神の昼ご飯の準備を済ませ、数人とキッチンで合流していろいろ話しながら食事をすると、午後の話し合いに挑んだ。
司が、皆が揃うのを待って、ホワイトボードの前に立っている。
「では、今回は先に役職者達に話を聞いて行こうと思う。その後で、話したい事がある人は話す。無いなら話さなくて良いけど、その分疑われると思ってもらえたらいい。じゃあ、神さんからお願いします。」
神は、頷いた。
「いろいろ考えたのだが、占い師の中に狐が居るのではと思うのだ。」皆が理由はとじっと見つめる中、神は続けた。「なぜなら狼が占い師を噛んだからだ。」
司は、言った。
「でもそれだけじゃ理由が弱くありませんか?」
神は、司を見た。
「仮説を立ててみたのだ。帆波さんが噛まれた理由は、昴と征由の中に狼が居るから、と。だとしたら、占われて黒が出るのは避けたいから噛んだ。なぜ避けたかったのか?昨日狼が吊られていて連日仲間を失う事になるから。いくら疑われていても、黒さえ出ていなければまだ逃れる術はある。仮に占い師に狼が出ていたら、それをすることで吊られる可能性が上がるので出来なかったはず。なので私が思うに、占い師には狐と狂人が出ていて、狼は居ないのではないかという事だ。もちろん、狂人が二人という事も考えられるがね。お互い分からないのだから、二人共占い師に出ていてもおかしくはないし。占い師の真贋は、一人一人の初日お告げ先を見ても囲われた様子はない。もし奏が黒なら帆波さんは噛まれる事はなかっただろう。私目線、ただ一人、亨のお告げ先の永二だけが分からないので、もしかしたら黒かもしれんがな。仮にだ、征由も昴も白だった場合、どうして帆波さんを噛んだのだと考えた時に、村目線でも護衛が入っていなさそうで、尚且つ真ではないかという所を狙ったのだと考えたら妥当なのでは。亨もその一人なのに狙われなかったのは、結果が偽だったからだという可能性もある。」
司は、言った。
「でも、だとしたら永二は白いですよね。昨日黒の光一に入れている事になる。」
神は答えた。
「昨日光一が吊られると、思って投票した奴は居るか?」皆、ぐ、と黙って神を見る。神は続けた。「昨日はグレー幅が広かった。人狼が自分の白を後々アピールするためにも、入れておこうと考えて気軽に入れたら吊られてしまったということもある。なので、あの状態では私は永二の白を拾えないな。そもそも永二が入れて居なくても、光一は吊られただろう。それぐらい票差があった。」
でも、あの感じじゃ光一が吊られるような雰囲気だったけど…もしかして、予想出来ていたのは自分達だけなのか。
奏は、皆と思考の筋と速さが違うので、普通ならどう考えると言われても、自分が基準なので分からなかった。
「でも、それは仮説ですよね。」
司が言うのに、神は、頷いた。
「もちろんそうだ。光一が白であった時、私目線では玲史が狂人になる。ただ、その場合でも永二は疑われ位置に入る。光一に入れているからだ。そして亨も、引き続き疑わしい。永二に白を出しているから。」
奏は、あまり永二を疑う意見が印象深過ぎても逆効果だと思い、流れを変えようと、言った。
「光一をどっちと置くか、決めておいた方が良いですね。思考が二重になって村に分かりづらいでしょう。みんな、どう思ってる?光一は、黒だったのかな?」
司は、皆を見回した。
美奈子が、言った。
「だから!言ってるじゃないの、光一さんは白なの!私は、昨日光一さんに入れた人の中からグレーを吊る事を提案します!私目線では、無駄な事をしているのよ。だって白なんだもの、どう考えても入れた人が怪しいじゃないの!村目線で永二さんが怪しいなら永二さんでもいいわ!明日色を見るから!」
神が、眉を寄せる。
それを見て、奏は神が言いたい事を察して言った。
「光一に入れた中じゃ里美さん、良樹、亜子さんがグレーなのに永二でもいいの?亨さんが真だったら君目線で今日も白を吊ってしまうことになるのに?」
美奈子は、神もそう思っているだろう不審な視線を向けて来るのに怯みながら、慌てて言った。
「だって、みんなが怪しいって言うから…!だったらそこを吊ったらって思っただけよ!」
奏は、呆れて思わずため息をついて神を見ると、神は言った。
「君は村目線ではないな。吊り縄を考えても、光一が白だと知っている君なら今日は慎重に吊り先を決めなければまずいはずだ。私は霊能ローラーするなら玲史からだと思っていた…なぜなら、玲史目線では黒が一つ吊れているので、まだ一人ぐらいなら白を吊っても大丈夫だからだ。君目線では余裕が無い。なのに君自身からその意見が出るなら、君のことを真霊能者とは見れないな。」
昴が、言った。
「じゃあ、どうする?光一は黒ってことで村は話を進めるの?だとしたら、まだ白だったとしても大丈夫そうだからグレーからだよね。昨日光一に入れてないグレーから話すべきだと思うよ。投票対象だからね。」
司は、むっつりと黙った。何やら気に食わないようだったが、それでも、頷いて言った。
「じゃあ、昨日光一に入れてないグレーは?」
奏は、スラスラと言った。
「7弘、14克己、18征由、20昴。」
司は、言った。
「では、弘から意見を言ってくれ。」
弘は、息をついて話し始めた。




