表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
獣と共に夢の中  作者:
奏(そう)
41/60

二日目夜から三日目朝

神は、他の占い師達に占い先を譲り、良い心象を稼いでいた。

そんな方法をどうやって思い付くのか、とにかく神は白い動きをしていた。

結局、残り物だったが良樹と弘の二人を、指定先に振り分けられる事になった。まあ、誰を振り分けられたとしても、仲間を占うつもりの神には、結局良樹に白を出す未来しか見えていなかった。

その夜も、無事に皆が部屋へと入って、四人揃って迎える事が出来た。

四人でリビングへと降りて行くと、神がハアとため息をついてソファへと座った。

「明日は良樹白。で、帆波を噛む。」

良樹と克己が驚いた顔をした。

「え?!占い師が減りますよ。しかも、狂人かもしれないのに。」

神は、言った。

「だからこそだ。狂人なら別に居なくてもいい。私が占いに居るからな。狐だったら位置が分かるので相互占いを推奨して真占い師達に占わせてさっさと消す。狩人は今日は司を守るだろう。役職がこれだけ居て、ここを噛んで来るなんて思わないだろうしな。帆波が真だと分かったのかもしれないと、奏が疑われずに済むかもしれない。少なくとも、明日はな。そして、今夜の占い指定先が、占われるのを嫌ったのだと黒塗りすることも出来るぞ?帆波の指定先は、征由と昴。それは頭に入れておくといい。」

良樹と克己は、顔を見合わせた。

「…そんな考え方があるのか。まあ、神さんがそう言うならそれで。」

異議はないらしい。

奏は、仕方なく腕輪を開いて9を入力した。

「いいですけど、狂人が減って大丈夫なんですか?明日、克己辺りに白でも出してくれたら万々歳なのに。」

『№9を襲撃します。』

腕輪が言う。

神は、涼しい顔をした。

「狂人など、面倒なだけだ。黒を打って来るかもしれないじゃないか。ところで、明日光一に黒を出して来たら、そこは恐らく狂人だ。誰かが接触して、そこから先の霊能結果をこちらが言う通りに言わせるんだ。狐は、別に居る。」

奏は、言った。

「じゃあ、やっぱり役欠けがあったと思うんですね。でも、どうして霊能は狂人だと思うんです?」

神は、答えた。

「他に狐候補が居るからだ。それから、霊能はローラーされやすいのに二人しか居ない狐が出て来るのはリスクが高過ぎるからだ。狐が出るなら、占い師の方だろう。もし帆波さんが噛めたら、グレーに二人とも居るという事になるな。そのうちの一人は、私は亜子という子だと思うが、君はどうだね?」

奏は、息をついて頷いた。

「はい。オレもそう思いました。占い先に指定されてからの顔色の悪さが半端なかったんですよ。希さんの死体を見た時でもそこまででは無かったのに、昼間から急にですからね。あれじゃあ自分が占われたくないと言っているようなものですから。」

神は、クックと笑った。

「明日は、あの子か征由かな。ヘイトを向けやすそうな所を狼として追放しよう。霊能に狂人が出ていたらラッキーなんだが…希さんが真霊能だったことを祈ろうじゃないか。なかなかにスリルのあることだ。」

良樹が、言った。

「でも、もし狂人だと分かったらどうするんですか?接触って誰が?」

それには、克己が手を上げた。

「ああ、オレが。オレだけ狂人に露出させる。で、何かあった時は神さんにオレに黒を打ってもらう。他の狼の事は明かさない、で良いかな?」

奏は、頷いた。

「助かるよ。それで行こう。明日にならないと分からないが、上手くやろう。」

良樹が、ハアと息をついて、言った。

「みんな勇気があるな。オレはなかなか、嘘を付くのも下手だから。明日神さんに白を出してもらえて、ちょっと安心してる。でも、考えて発言するのはやめないつもりだけど。」

神は、頷いた。

「私が頑張って真目を取るようにするが、当の君が黒くなったら私の真目まで怪しくなるからな。適当な所で発言して、上手く村目を稼いでくれ。君は、そうやってどっちつかずの感じで、私と対抗する者達に白いと思わせ、占われるのを遅らせるんだ。まあ大丈夫だろう。」と、息をついた。「で、狩人だが。」

奏は、眉を上げた。

「分かったんですか?」

神は、苦笑した。

「司の様子でな。まだ確証はないので明日からも観察するつもりだが、司の落ち着きっぷりを見ていても、最初に占い指定した中に居るはず。つまり、良樹、早苗、昴、亜子が最初考えて来た指定先だったが、良樹は狼、亜子は疑われて話を向けられても司はそれほど焦っていなかった。相方の由佳の時はあれほど必死に何か村利のあることを言わせようとしていたのにだ。となると、早苗か昴。あの強気な攻撃の仕方は…自分が疑われても味方の居る事が分かっている狩人ではないかと推察したので、昴かなと。まあ、まだ分からない。明日になってからもう少し観察して、探る事にするが、君達もそのつもりで明日からの司と昴、早苗を見ていてくれるか。多分、司は昴を庇うような発言をすると思うぞ。あくまでも仮説だがね。」

克己が、へーッと感心したように言った。

「そうかーそんなことまで分かるのか。先にこうやって聞いてたら、オレ達もそう思って観察するから分かりやすいなあ。そう思わないか、良樹?」

良樹は、身震いするような仕草をして、答えた。

「味方で良かったよなあ。これが敵だったらどうなってたかと思うと寒気がする。」

奏は、同感だったが、神と戦うのも刺激があって良かったかもしれない。

だが、神はこれで手が掛かる男なので、やっぱり味方で良かったと思っていた。

「さて」神は、パンと膝を叩いて立ち上がった。「もう寝るぞ。これ見よがしに寝不足だったら狼なのを気取られる。しっかり寝て、明日に備えるんだ。結果が楽しみだな。じゃあ、また明日。」

三人は頷いて、神について階段を上がって行った。

明日は議論がどう流れて行くのか、確かに楽しみな気持ちだった。


次の日の朝、奏は目を覚ました。

すると、ガツンと、閂が抜ける音がした。

…朝!

奏は、慌てて扉を開くと、外へと飛び出した。

正面の扉からは、司が出て来ているのが見える。司は、奏の隣りの部屋から神が出て来ているのを見て、目に見えて嬉しそうな顔をした。どうやら、神が生きていたのが嬉しいらしかった。

…狼なのになあ。

奏は、司が不憫に思ったが、そうなるように神が場を動かしているのだ。

皆、同じように廊下へ出て来ていて、左右を見ながら生存を確認しているようだった。

神が、叫んだ。

「番号!1!」

「2!」

そうやって順に声が返って来る。

「6!」

「7!」

「8!」

一番向こうの端の、里美が戸惑うような顔をしている。

「え?え?あれ、10!」

…9が居ない。襲撃が通ったか。

奏が思っていると、神が、そちらへ向けて早足に歩き出す。

奏は、司や永二、弘達と共に、急いで追って行った。


帆波は、死んでいた。

皆でそれを確認し、三階からも人が降りて来たが他に死んでいる者は居らず、呪殺は出なかったようだった。

帆波が昨日、誰を占った後に死んだのか分からないので、指定された先の二人は今日も、グレーのままになった。

昨日はもう少し話した神も、椅子に座ってじっと黙っていた。

占い結果は、神が良樹白、渚が早苗を白、亨が里美を白と出していた。

亨は、人狼目線で真だと分かっているのだが、村目線ではそうではないので焦っているようで、占い先を自分で決めたい、と呪殺を出そうと躍起になっている。

狼目線では、この二人が占って白を出したところが狐ではないのが分かるので、とてもありがたかった。

とはいえ、二人そろって呪殺でも出されたら面倒なので、出来たらグレーを吊って行きたい。

それが、狼目線の考えだった。

村人達は、狼が占い師を噛んで来るとは思っていなかったらしく、皆混乱していて大変だ。

まさか、偽の結果を出して真占い師ではないと分かっている場所を、わざわざ噛んで来るとは思わないだろう。

せいぜい、悩んでくれたらいいさ。

奏は、そう思って皆の無駄な議論を聞いていた。

すると、皆の議論を遮るように、玲史は、言った。

「あのさあ、霊能結果を知らせたいんだけど。」

そうだよ、結果が出て無いんだよ。

奏も思っていたが、司は慌てて言った。

「そうだ、結果を…同時に言って欲しい。行くよ?せーのっ!」

「黒!」

「白!」

叫んだ二人は、顔を見合わせる。

…やった、希さんで真霊能が一人落ちてる!

奏は、心の中で歓声を上げた。

司が言う。

「ちょっと待て、どっちが黒って言った?」

「オレ。」玲史が、手を上げた。「液晶画面に№11は人狼ですって出た。」

玲史が狂人か。

確かに玲史は、狐っぽくはなかった。もし克己が接触して狐だったとしても、克己と抱き合わせで吊ってもらえば事足りる。とにかくは、様子見だった。

美奈子が、首を振った。

「そんなはずはないわ!私は、人狼ではありませんでしたって出たもの!」

「…希さんが真霊能者だったか。」神が、むっつりと言った。内心はほくそ笑んでいるのだろうな、と奏は思った。「役職が欠けていたのが分かったな。霊能者だ。二人の内、どちらかが人外だ。昨日吊られた光一はCOしなかったしあり得ないし、とりあえずもう一度聞こう。潜伏している霊能者は居ないな?」

全員が、顔を見合わせるだけで何も言わなかった。神は、皆の反応を待ってから、頷いた。

「では、役欠けは霊能者だった。片方は希さん。もう片方は、二人のうちどちらかという事になる。二人の結果は、玲史が黒、美奈子さんが白。という事で、先へ進めよう。」

どちらかが人外。

こういう時、霊能ローラーが一般的だが、それをするには本当に死ぬのでハードルが高過ぎた。

混じっている真役職を、吊ってしまう勇気は村人にはなかった。

「普通に考えたら霊能ローラーだけど」奏は確認のために言う。「昨日吊った光一がもし白だったなら、吊り縄の余裕が無くなるよね。どっちかは真なんだから、村人だ。狐二匹と狼四匹、呪殺が間に合わなかったら村勝ちが無くなってしまう。それにしても狼は、なぜ帆波さんを噛んだんだろう。狼だって、狐は処理したいはずなのに。」

良樹が言った。

「とりあえず真っぽい所を噛んだんじゃないのか?狐だったら死なないだろうしな。占い師は一人残れば呪殺は出来る。それに、帆波さんなら護衛も入ってなさそうだから、そこを噛んでったってことだ。つまり帆波さんは、真か狂人ってことになるけど、結果は間違ってなかったんだろう。」

うんうん、ちょいちょい意見を言って、考えてるぞとアピールするのは良い事だ。

奏が思っていると、里美が言った。

「でも、噛んだら他の占い師が疑われるわよね?それでも噛んで来たってことは、もしかしたら狼は占い師に出てないのかも。吊られても良いわけでしょ?もしかしたら、昨日は相互占いを飲むから狐が居ないって思ってたけど、居るんじゃない?狼も、狐を探してるのよ。」

司は、頷いた。

「ほんとだ。そうかもしれないな。狼が居るなら、初日に噛み先に白を出した渚さんかと思ってたけど、違うのかもしれない。そう考えると、狂人なら狼を囲おうと生きてる人に白を出すだろうし、狐なら占われないように相方に白を打ちそうだから、渚さんは真なのかな。」

渚は、何度も頷いた。

「だから私は真占い師なの!相方はマジで分からないけど、私は私のことを知ってるもの!」

亨は、言った。

「呪殺を出してもいないのに確定出来ない。狂人だって、真目を取りに来て絶対白の希さんに白を打つかも知れないじゃないか。とにかく、オレは呪殺を出したいんだ!占い師なのに疑われ続けるのは嫌なんだ。今日は占い先を自分で決めさせてくれないか。」

真占い師同士で争っている。

何も知らないはずの、司が顔をしかめて亨を見た。

「気持ちは分かるけどちょっと待って欲しい。まだ何も分析出来ていないじゃないか。」と、ずっと黙っている、神を見た。「神さんは、どう思いますか?」

神は、皆の議論を聞いているのかいないのか、じっと斜め下を見て考え込んでいたが、顔を上げた。

「…人狼の思惑が分からなくてな。考えていたのだが…帆波さんを噛んだ理由だ。」

また何を言うつもりですか。狼に不利になる事は言わないでくださいよ、頼むから。

奏が思っていると、司は、渋い顔をした。

「適当に護衛が入ってない所を選んで、神さんを含めた他の占い師の真贋をつけにくくさせるためでは?」

神は、首を振った。

「それにしてもだ。狐処理は、二人も居るのだし狼にも最重要課題のはずで、私は噛まれないだろうと思っていた。なのに、帆波さんを噛んだ。…昨日、帆波さんは誰を占うと言っていた?」

あー、征由の事か。

奏はホッとした。それを言いたかったのなら良かった。

司は、ホワイトボードを見上げた。

「昴と、征由ですね。」

神は頷いた。

「もしかしたら、二人のうちどちらかか、もしくは両方が、黒だったんじゃないか?帆波さんの真贋は分からないが、黒が出ればとりあえず吊ろうとなるはずだ。知っての通り、帆波さんはあまり真を取れていなかったので、護衛も入りそうにない。だからこれ幸いと噛んで来たんじゃないか?」

司は、言われて征由を見た。

…昴も疑われているのに、征由だけか。

奏は思った。司目線、昴が狩人だと知っているから、自然そうなっているようにも見える。何しろ、昨夜神に言われていたので、良樹も克己も、それに気が付いているだろう。当然、神もそうだと思われた。

昴は言った。

「オレはオレの白を知っているからあえて言うけど、だったら今夜は神さんがオレを占ったらどう?征由を吊ってさ。どうせ黒が出なかったから、今日もグレー吊りでしょ?だったらそれでいいじゃない。」

征由が、首を振った。

「そっくり返すぞ。オレもオレの白を知ってるんだから、オレを占ってお前を吊りたいと言うよ。大体、そんな如何にもな噛みをすると思うか?こうやって吊り対象にされるのに。それにオレなら、神さんを噛むだろうよ。万が一噛めたらラッキーだもんな。昨日から散々疑われて投票までされてるんだからな。」

「…まあ、オレ目線でも黒の可能性はあるしな。」亨が言った。「征由でもいいかも知れない。どうせグレランなら、一番疑わしい所を吊るべきだろう。」

亨は、どこまでも神を相方だと思っているらしい。

渚が、顔色を変えた。

「待って。」皆が渚を見る。渚は続けた。「私は真占い師よ。私から見てどっちかは絶対偽なの。もしかしたら両方かもしれないわ。その二人が吊っても良いと言う所を、吊ってもいいとは言えないわ。とにかく、今日は三人で占えるんだから、霊能を決め打ちしたらどうなの?二分の一の確率なのよ。そっちの話し合いをした方がいいと思う!」

渚目線ならそうなるだろう。

だが、村目線では、渚が征由か昴を、庇ったように見えた。

とはいえ、征由は狼ではない。

だが、狐の可能性はあった。

村人であっても、吊るのは狼利があった。

司は頭を抱えていたが、奏は別に、霊能だろうと征由だろうと、どちらでも良かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ