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獣と共に夢の中  作者:
奏(そう)
40/60

二日目5

たった10分の休憩の後、全員が椅子へと戻って座っては居たが、喚いたり泣いたりしたために、みんな気力を使い切って疲れて話が出来るような状態ではなかった。

そんな空気の中、司は、言った。

「もう、話し合える状態じゃない。全員、怪しいなら占い指定先でも良いから、ここと思う所に入れてくれ。残った人たちを、その後占い師達に振り分けて、占ってもらう事にする。どうせ、人外だって話し合える時間はないから。票を合わせる心配もないと思う。話したい人が居たら、投票まで話してくれ。多分、まだ話せてない人は話した方が良いと思う。」

奏は、これで狐の動きが見える、と内心ほくそ笑んだ。

皆に合わせて憔悴したふりをしているだろうが、生き残りたい人外は、案外しっかりした考えで動いているはずなのだ。

一時は恐怖に飲まれたかもしれないが、命の危機を感じるにつれて、自分の役職が重くのしかかり、その重圧から逃れようと生き残る術を考えているはずだった。

そこまでじっと黙っていた、亨が言った。

「…ずっとみんなの様子を見ていたが、オレの相方は神さんかな。さっきのパニックの時も、渚さんと帆波さんの二人は、隣りの里美さんの介抱をしてたり、涙も出て無いのに泣くふりをしてるように見えた。みんなは疑ってるが、美奈子さんの叫びは心底取り乱してた。少なくとも、死にたくないとパニックになっていたのは本当で、議論を乱そうとしてああなったのではなかった。」

ほほう、だったら光一を吊れる方向に出来そうだな。

奏は、そう思って亨を首を傾げて見た。

「つまり、亨さんはさっきの騒ぎの時、わざと騒いでた人が居るって言うの?議論が進まないように。」

亨は、頷いた。

「ああ。そう見えた。」

渚が、反論した。

「わざとじゃないわ!みんなが泣きわめいたりしていたから、なだめようと逆に冷静になって、逆に抑える側になってたはずよ!そんな、演技で泣いたりしてないし。もらい泣きだってするじゃない。そんな難癖付けて来るなんて、亨さんが人外なんでしょう?!」

帆波も、頷いた。

「そうよ!昼の話し合いの時だってそうだったわ!私達が女だからって、簡単に貶めるとか思ってるんじゃないの?!おかしいわよ、私達は人外じゃないわ!」

神が、割り込んだ。

「感情的になったら、余計に反感をかうぞ。それより、君達の真贋は今必要ない。グレー達を吊る日なんだ。まだ吊り縄には余裕があるが、間違えないようにしたい。グレーに時間を与えるんだ。あと20分もないぞ。」

そうなんだよねえ、オレはあんた達より、グレーの光一に集めようと思って促したんだけどねえ。

奏は、察しが悪い渚達にイライラしていた。だが、奏が促したのを聞いたことで、恐らく神には奏の意図が伝わっているはずだった。

昴が、言った。

「…じゃあ、占い指定に入ってるけど、グレーだから話す。」昴は、髪がサラサラの可愛らしい印象の男子だ。昴は続けた。「僕はね、初日から見て思ってたんだけど、ほら、役職割り当てられた時あるでしょ?あの時。実は僕も、司が共有者で出て来た時、相方は由佳さんだ、って知ってた。なぜなら、あの時液晶に出たんだろうけど、由佳さんが隣りの司をめっちゃ見てたから。司は、硬い顔をしてたけど、チラとも見なかった。他には目立った動きが無かったから、きっと、狐同士なのかなあ、それとも共有者かなあって思ってたんだ。でね、僕…多分、美奈子さんが偽物だと思う。」

皆、驚いた顔をする。奏は、昴も見ていたのだなと思って聞いていた。だが、美奈子が偽…狼目線でもまだ分かっていないのに?

司は、言った。

「それは何か理由があるのか?」

昴は、頷いた。

「うん。役職を引いてそうな動き感じに思ったのは、結構居たんだ。でも中には全く動じてない感じの人も居たよ。神さんなんか、素村かなあって思ってたぐらい。だってさあ、一瞬だけ見て、すぐ閉じたんだよ。人外だったら、仲間の確認しなきゃだろ?それが無かったしな。人外でも、占い師でもなんでもないって思うぐらい、顔色は変わらなかったもんね。でもね、顔色を変えた中に、希さんも居たんだ。」

神さんはそういう人だって。

奏は思っていたが、良樹は驚いた顔をした。

「え、希さんが、役職持ちだったんじゃないかって君は思うのか?」

昴は、こっくりと頷いた。

「うん。占い師なのか、霊能者なのかは分からないよ。狂人だったかもしれないし。でも、顔色が変わったから。で、美奈子さんって、いろいろ失言してるよね。人外はどうなる発言もそうだけど、さっきもさあ、光一の話を聞いて、いきなり叫び出して。本当に怖かったのかもしれないけど、僕達よりずっと年上そうなのに、それで火がついたみたいに伝染してって。僕、イライラしたんだ。だって、ここで話し合わないと、全員の話が聞けないじゃないか。どうやって人外を探すんだよ?そんな事も分からないのかって、軽蔑したね。それで、わざとかなって思って。だから、美奈子さんが霊能を乗っ取ったのかなって思ってた。」

可愛らしい顔だが、昴は辛辣な男のようだ。

まだ十代ぐらいに見えるが、実際は何歳なのか分からなかった。

「な…!」

美奈子は、自分は吊り先ではないと安心していたのか、ぐったりと椅子にもたれ掛かっていたのだが、ガバと起き上がって昴を、信じられないという顔で睨んだ。昴は、その顔を見て、うんざりしたように言った。

「ほら、そうやって。今日は吊られないって気を抜いてたんでしょ?普通はさあ、投票先を必死で考えるよ。自分が批判されたら起きて来られるんでしょ?憔悴してたのは演技?」

奏は、無意味な言い合いなど聞きたくないと割り込んだ。

「ほら、煽らないんだ。今夜は役職者を吊るんじゃないから。でも、君が思ったよりよく見てて、考えてるのは分かったよ。他は…そうだな、亜子さんはどう?」

亜子は、ビクッと弾かれたように顔を上げた。ずっと思っていたのだが、昼間の占い指定先にされたのを知ってから、顔色が悪い。突いたら、何か出そうだった。

「ごめん、具合悪い?」奏は、慌てたように演技して言った。「そういえば、昼間から顔色悪いよね。体調管理はしっかりしないと、生き残ってても辛くなるよ。全く話を聞いてないのが、後は亜子さんぐらいだなって思って声を掛けただけなんだ。」

亜子は、フルフルと生まれたての小鹿のように震えていたが、か細い声で、言った。

「はい…ずっと、具合悪くて。多分、人が死んだのを見たからかもしれません…。」

それにしては、具合が悪いのが遅いと思うけどね。

奏は思っていたが、司は、首を振った。

「いいよ。話した方が、亜子さんのためだろうって奏は声を掛けただけだと思うし。でも、ちょっとは意見を…」

そこまで言った時、いきなりパッと暖炉の上のテレビが点灯し、青い画面が表示されたかと思うと、機械的な声がした。

『投票、十分前です。』

そして、青い画面に白字で時間のカウントダウンが表示され始めた。

「え…こうやって投票時間が迫って来る感じか。」

神が、険しい顔でそれを見上げた。

「確か番号を入れて0を三回だったな。皆、間違えるなよ。1分以内に投票しろと書いてあった。投票しなければ追放だと。ぼうっとしている場合ではないぞ。」

言われて、皆緊張気味に腕輪を開いた。

だが、まだ十分前だ。

司は、腕輪を見つめて言った。

「とにかく…みんな、自分の考えで投票して。時間ギリギリまで、話したい人は話してくれたらいいから。」

亜子でもいいなあ。

奏は、それを聞きながらそんなことを思っていた。狐っぽいし、真占い師が占って呪殺され、真が確定してしまう恐れが無くなるので、縄を消費するためにも狐は吊ってしまいたい。

皆、黙り込んで同じように考え込んでいるようだった。

『投票、1分前です。』

奏は、考えた。神は、征由を攻撃するようなことを言っていたので、恐らく今日は征由に入れるだろう。ならば、票は合わせた方がいいので、雰囲気的に光一が吊れそうだが、征由に入れよう。何しろ、神は奏が光一に入れようと思っているのが分かっていても、恐らく合わせてくれないのだ。

『10秒前です。9、8…』

カウントダウンが始まる。

さすがに奏も緊張して来てチラと神を見ると、神でさえも緊張した面持ちでテンキーを見つめる中、遂にその時は来た。

『2、1、投票してください。』

全員が、あちこちでテンキーを押す。

『もう一度入力してください。』

あちこちで声が腕輪から流れている。

どうやら手が震えて、小さなキーを上手く打てないようだった。

何とか全員の腕輪が静かになった時、テレビの画面にパッと数字が現れた。

1(神)→18(征由)

2(奏)→18(征由)

3(永二)→11(光一)

4(玲史)→11(光一)

5(由佳)→15(亜子)

6(司)→11(光一)

7(弘)→15(亜子)

8(渚)→20(昴)

9(帆波)→20(昴)

10(里美)→11(光一)

11(光一)→15(亜子)

13(良樹)→11(光一)

14(克己)→18(征由)

15(亜子)→11(光一)

16(美奈子)→20(昴)

17(亨)→11(光一)

18(征由)→15(亜子)

19(早苗)→18(征由)

20(昴)→18(征由)

そして、大きく11が表示された。

『№11が追放されます。』

あくまでも、感情のない機械的な声がそう告げた。

「オレ?!なんでだよ!村人なのに!」

皆、下を向いて光一と目を合わせない。

自分が投票した事で起こった結果を受け止められないなんてな。

奏は心の中で皆を嘲った。

すると、その瞬間に光一は、ぐにゃりとその場に崩れてカーペットの上に倒れた。

「きゃーー!!」

光一の隣りの席の、里美が足元に倒れて来た光一に悲鳴を上げた。

皆が下を向いていた中、じっと顔を上げて様子を見ていた神が、無言で眉を寄せて立ち上がった。そして、光一に近付いて、スッとその首筋に指を当てる。

そして、息をついた。

「…脈が無い。恐らく死んだんだろう。」

…やはり腕輪か。

奏が思っていると、司が悲壮な顔で言った。

「え…!そんな一瞬で…?!何があったんですか?!」

神は、分かっているのだろうに、首を振った。

「分からない。何が起こるのか見ておかねばとじっと観察していたが、一瞬にして意識を失ったようだった。」と、光一の、開いたままの瞼をソッと閉じてやった。「本人も何が起こったのか認識していないだろう。苦しみはしないのだな、と少し安堵した。私だって、いつこうなるか分からないからな。」

今夜の襲撃が自分に来るかもと案じているように演出するために、神がそう言ったのは奏にも分かった。

司は、息を飲んだ。

神が居なくなったらまずいと、本気で思っているようだった。またパニックになられたらまずいと、奏は割り込んだ。

「…とにかく、呪殺が起こった時のためにも、占い先を指定しておきましょう。」奏は言った。「光一の色は明日分かるはず。今夜は呪殺が出せそうな所を占って、一人でも真占い師を確定させなければ。」

光一をそのままにしてそれはさすがに出来なかったので、男性達で手分けして光一を持ち上げ、三階の光一の部屋へと運んだ。

光一は白だったが、霊能者たちがそれをどう出して来るのか、奏は楽しみにしていた。

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