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獣と共に夢の中  作者:
33/60

六日目・投票

渚が、言った。

「あっちが良いって言ってるんだから、克己さんにしましょう!両目線人外なんだから、いいじゃないの。何をそんなに悩むの?」

司は、渚を睨んだ。どうして神と奏が克己を吊りたいと言うのか気にならないのか。

「…昨日はあんなに克己を吊りたくないって騒いで里美さんを吊る事になったのに、なんで今日になってそんなことを言うんだよ?奏と神さんは、君目線じゃ狼なんだろ?その二人が昨日から推してる吊り先なのに、何かあるって思うじゃないか。そもそも、君は昨日、あの二人が吊りたいと言っていた克己を吊らないとごねたんだぞ?オレ達だって克己を吊るつもりだったのに。先延ばしにしたい狂人に見えて仕方がないんだよ。今日奏に黒が出たから亨が真って分かったってのは分かる。でも、昨日のごねかたから一転しててまるで、話し合ってそうしたみたいに見えて来るんだ。でも、神さんと奏は一貫してる。あまりにも君の行動がおかしく見えて仕方がないんだ。もし克己が狂人だったら、村は遠回りさせられてまた一人犠牲を出す事になる。決め打ちの日を一日延ばすだけになる。だから昴は、今夜決めてしまえって言ってるんだ。良樹を見ろ、分からないって言ってるじゃないか。明日オレも噛んで良樹を残して迷わせて、最終日勝つつもりなんじゃないのか?」

渚は、それを聞いて叫び出した。

「どうして信じてくれないの!今日になって分かったんだから仕方ないじゃないの!克己さんは狼なのよ!それを狼が吊りたいって言ってたの!どうしてなんて知らないわよ、現にそうだったんだもの!」

最後には涙を流しながらそう言い放つと、渚は扉へと駆け出した。

するとそこへ、神が入って来た。

渚は驚いて扉の所で急停止し、涙顔のまま神を見上げると、神は顔をしかめて皆を見回した。

そして、全員の顔を見てから、言った。

「…見たところ、吊り先で言い合ったのだな?それで、今夜はどこを吊る事にしたのだ。」

司が、答えた。

「あの…神さんと、永二を投票対象にしようと言ったら、渚さんが克己を吊りたいと。」

神は、チラと渚を見てから、頷いた。

「克己なら私も良いと思う。今夜占えるし、黒位置がハッキリ分かるから明日から確実に吊って行けばどうせ勝つことが出来るからな。私目線、まだ克己が黒の可能性もあるし、妥協できるがね。最速で明日、終わる可能性が出て来るだろう。だが私目線、恐らく狼から事情を聴いている狂人が、もう一人の狂人の克己を狼に仕立て上げて縄消費に使いたいと思っているようには見えているがな。」

昴が、言った。

「克己の行動はどこまでも狂人です。だから僕は、出来たら永二を吊って明日神さん目線、白を占っても残りが狼なので黒が分かるし、そこを吊って終わりたい。どうせ僕は今夜噛まれるし、明日終わるようにしたいんですよ。司が、死ぬ前に。」

神は、眉を寄せて昴を見た。

「君の考えは崇高だが、まだ君達目線でも渚さん真を切る確定的な情報が無いだろう?克己なら、両目線人外なのだ。私目線でも渚さん目線でもまだ間に合う。明日になれば、また多くの情報が落ちる。その時点で、村人達はまた考える事が出来るだろう。私目線では確かに、永二を吊りたいが、村目線の確実なルートを残しておきたいと思っているのだ。フェアではないからね。だから昨日は克己を吊りたいと言ったのに。お互いに懸念を残したまま次の日に来てしまった結果がこれだ。私目線でもギリギリだ。狂人が生きて居るからな。」

分かっているのだ。

昨日克己を吊っていたら、今頃永二で終わると言っていたかもしれない。

それを、結局渚の言う事に従ってこうした結果、こうなっているのだ。村が選択したことだった。

渚も、黙ってそこに立ち尽くしている。自分が狼だと言っている男に同じ意見を出されるのは、どんな心境だろう。

「…克己と、永二の二択を村に提示します。」司は言った。「オレは確実に明日襲撃されます。単に死にたくないのではなくて、残す良樹がどんな選択をするのか分からないから不安なんです。神さんから見たら、みんな死んで行ってどうせ勝てば復活するんだろうからと臆病なオレが腹立たしいでしょうが、それだけじゃなくて、昴もオレも居なくなった村で、良樹がどんな判断をするのか…本人も言ってましたけど、流されやすいから決められないらしいんです。確実に勝ちたいから、昴も心配しているんだと思います。」

神が昴を見ると、昴は頷いた。

神は、息をついた。

「…村のために犠牲になろうと狩人を明かした昴の意見は強いな。分かった、私は克己でも良いと思っているが、ならば私目線の最短ルートを吊る事に同意しよう。君達は、私が真だと決め打つのだな?…まあ、そうでない者は克己に入れるといい。もう、時間だ。だから降りて来た。」

その言葉と共に、テレビモニターが点灯した。

『投票、10分前です。』

見ると、克己も降りてきて、扉の所に立っている。

渚は行き場なくそこに棒立ちしていたが、皆が椅子へと向かうのに仕方なく、また椅子へと戻った。

そうして、その時を待った。


1(神)→3

2(奏)→3

3(永二)→14

4(玲史)→3

6(司)→3

8(渚)→14

13(良樹)→14

14(克己)→14

16(美奈子)→14

20(昴)→3

投票結果は同数だ。

この期に及んでまだ、克己は自分に入れている。どう見ても、これは狂人にか見えなかった。

『再投票になります。次も同数の場合、ランダムに追放されます。』

昴は、良樹を見た。

「良樹!頼む、僕は今夜噛まれるんだ!頼むから永二に入れてくれ!明日になってどうしても克己だったら克己でもいいから!」

良樹は、迷う顔をした。渚が言った。

「本人が死にたがってるんだから死なせてあげなさいよ!」

『投票してください。』

無情にも、声はまた告げる。

司は、必死に3を入力し、待った。

『結果が表示されます。』

1(神)→3

2(奏)→3

3(永二)→14

4(玲史)→3

6(司)→3

8(渚)→14

13(良樹)→3

14(克己)→14

16(美奈子)→14

20(昴)→3

モニターに大きく3が映し出された。

「嘘!嘘よ、やめて!」

だが、声は言った。

『No.3は追放されます。』

永二は、ガクガクと震えている。

それは長くは続かず、すぐにぐったりと、永二は何の前置きもなく、動かなくなった。

「そんな!」渚は、泣きながら叫んだ。「永二さんは村人だったのに!こんな…こんな事って!」

美奈子も、静かに涙を流している。

「…部屋へ運ぼう。」

奏が言い、司は立ち上がって、昴、良樹、玲史と手分けして、今度ばかりは神も手伝って、動かない永二の体を無言で二階へと運んで行った。

「…オレで良かったのに。」

克己はそう言いながら、その後を追って出て行った。

美奈子と渚は、いつまでもリビングで泣き崩れていた。


残ったのは、神、奏、玲史、司、渚、良樹、克己、美奈子、昴の9人だった。

今夜昴は襲撃され、明日は確実に8人になる。

美奈子が狐でなければだが、克己の土壇場でも自投票の姿勢を見ても、恐らく美奈子が狼で、終わりだろう。

神目線では亨の白の永二に黒が出ているので、帆波が真で、その帆波の白先の奏は白だった。

なので、占い先は美奈子、克己のどちらかだが、この流れなら美奈子になるはずだった。

「これで、安心して明日へ行ける。」昴が、永二を寝かせて廊下へと出て来た時に言った。「オレは襲撃されるけど、勝てるよ。司、後は頼んだ。」

司は、頷いた。もう、決めてしまったのだ。このまま、突き進むしかなかった。

そして、その夜はそのまま、部屋へと戻った。

昴は清々しい顔で部屋へと帰って行ったが、それが昴を見た、最後の姿だった。

司も次の日、目覚める事がなかったのだ。

何が起こったのか、もう目を覚まさない皆には何も分からず、ただ次の日の朝を待って眠っているのだと思い続けて暗闇をさまよっているしか、なかったのだ。


神は、その夜0時を過ぎた頃、部屋の閂が抜けたのを感じて、廊下へと出て来た。

奏が、すぐ横の部屋から出て来て、神に言った。

「…終わりましたね。」

神は、頷いた。

「あっけないものだ。私としては、もう少し頑張って欲しかったがな。」と、歩いて三階から降りて来た、良樹と克己を見た。「ああ、ご苦労だったな。もう終わった。もう少し手応えがあるかと思ったが、終わったようだな。番号を入力してくれ。」

良樹が、頷いて腕輪を見て、20と打ち込んで、0を三回入力する。

それを見ながら、克己が言った。

「神さん真を確信させるために、オレが犠牲になろうとしてたのになあ。そっちの方が面白い展開になったかもって、張り切っていたんだ。なのに、狂人のふりをしたらあっさり信じたわけだ。」

『№20を襲撃します。』

腕輪から、馴染みの声が流れる。

そうして、少し待つと、また声が流れた。

『おめでとうございます。人狼の数と村人の数が同数になりました。狼陣営の勝利です。』

神は、息をついた。

「終わった。で?私達はどうしたら良いのだ。このまま朝を待つのか?」

奏は、肩を竦めた。

「どうでしょうね。記憶は返してもらわなければなりませんから。全く、いったい誰がこんな事を。」

神は、苦笑した。

「分からないが、私は皆が本当に生き返るのか興味があるのだ。計器があったら死体を一つ置いておいて調査したいほどだったよ。こんな大層な事をするなど、心が湧く。狼陣営で死んだのは帆波という女性だけだから、彼女が生きて出て来るのか見てみたい。その後、主催者に交渉してそれを成した研究者の研究室へ入れてもらえないか努めようと思っているよ。」

奏は、笑った。

「オレも入れてもらおうかな。どうも臨床医ではなかった気がして。オレも研究したいですしね。」

神は、クックと笑った。

「私と来ると言うのか。手間が掛かると嫌がっていたのではないのか?」

奏は、頬を膨らませた。

「だから、オレはきっとあなたと同じ職場だったと思いますよ。どうも初めてのような気がしませんから。」

克己が、言った。

「で?あんた達はそれで良いけど、オレ達は普通の生活に戻りたいしな。一千万ってほんとにくれるのか。そっちの方が心配だ。」

神は、うんともすんとも言わない腕輪にため息をついて、歩き出した。

「私は金には興味はないな。研究に参加させてもらえるなら放棄しても良いと言おうと思っているぐらいだ。とりあえず、このまま朝まで待つか。部屋へ帰って眠るとしよう。全ては、明日の朝だ。恐らく、主催者から説明があるだろう。」

そうして、皆ぞろぞろとまた、自分の部屋へと帰って行った。

奏は、それを見ながら自分も部屋へと戻り、この六日間の事を思い出していた。

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