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獣と共に夢の中  作者:
21/60

四日目の朝

「誰と誰だ。」

神が、三階へといち早く到着して、克己に言う。

克己は、青い顔をしながら答えた。

「征由と、早苗さん。」と、指差した。「今、昴と良樹が確認に行ってる。」

征由と早苗さん…?!

司は、混乱した。どっちかが襲撃で、どっちかが呪殺だ。

だが、どっちが…?

神が、奏に頷きかけて、奏は頷き返して開いている扉の方へと向かった。恐らくは、死亡を確認して来いということだろう。

神は、言った。

「…私は早苗さんを占って白。恐らく渚さんは、征由を占ったんだな?」

渚は、呆然と立ち尽くしていたのに、神に言われて苦々しげに言った。

「征由さんを占って白よ。あなたは自分が呪殺したと主張するんでしょうね。でも、私が呪殺したのよ。私をはめようとしてたようなのに残念だったわね。」

神は、頷かなかった。

「わからない。私が真と見て確定するのを恐れた狼が早苗さんを噛み合わせて来たら、君も真で征由を呪殺したのかもしれない。」

渚は、ぐ、と詰まった。そうなのだ、誰の目から見てもどちらが呪殺を起こしたのか分からないのだ。

「それは…そうだけど。」

渚が言うと、神は険しい顔をした。

「君はあくまでも私を貶めたいようだ。この場合いろいろな可能性があるのだ。それを頭から否定するような言い方は、まるで呪殺を装うために自分の占い先を噛んだ狼に見える。そういう筋書きを昨夜仲間と作って来たのだとな。」

渚は、キッと顔を上げた。

「何よ!やっぱり私を攻撃するんじゃないの!」

神は、頷いた。

「君が私を攻撃するからだ。まだ確証がないからこの程度で済んでいると思ってくれたらいい。だが、君は限りなく、黒だ。そう感じているのは、何も私だけではないと思うぞ?」

渚は、そう言われてハッとして回りを見た。

全員が、むっつりと黙ってじっと渚を見ている。

さっき起こしに部屋へと入って行って、怒鳴られた弘が、渋い顔をして言った。

「あのさあ、感情で話すのやめろ。しっかり論理的に説明してくれたら、オレ達だって話を聞くからよ。あんたのその言い方、癇に障るんだよな。多分オレだけじゃねぇぞ。神さんがこれだけ言われてて怒鳴らないのに感心するよ。オレならキレ散らかしてただろうよ。」

奏が、昴たちと共に部屋から出て来て、言った。

「二人とも確認して来ました。どちらも死んでいましたね。死んでから時間が経っていない状態です。」

奏が、神にそう言うと、神は頷いた。

「それで、二人の遺体に変わった特徴はあったか?どちらも変わらないか。」

奏は、それに答えた。

「どちらも変わりません。どちらが呪殺であるかを知りたいと思っているなら、それは遺体の状態では判断できないですね。」

神は、息をついた。

「やはりそうか。」

司が、言う。

「じゃあ、いつものように朝の会議を。そこで改めて結果を聞く。占いと、霊能の。みんなで話し合って今夜どうするのか決めよう。ええっと、7時半にリビングの椅子で。」

全員が頷いて、黙って移動を始める。

ぞろぞろと三階の者達は部屋に、二階の者達は階段を降りて行く中、昴が近付いて来て、言った。

「神さんは、オレを占ってくれなかったのか。グレーなのに。」

司は、昴を見て、囁き声で言った。

「…神さんには、バレてた。昨日言われてバレてるのを知った。」

昴は、驚いた顔をしたが、諦めたように肩を竦めた。

「まあ、あの人ならそうか。黒を打ってくれたらなんて、思ってた自分が恥ずかしいよ。」と、皆が部屋へと入って行く、三階の廊下を端の部屋へと歩き出した。「じゃあな。」

司は頷いて、自分も二階へと階段を降りて行ったのだった。


朝ご飯は、昨日の夜持ち込んだパンが残っていたのでそれで部屋で済ませた司が階下へ降りて行くと、もう数人がソファに座って話していた。

司が急いでそこへ歩み寄ると、奏が振り返って言った。

「ああ、司。玲史から先に結果を聞いてたんだ。黒だったって。」

玲史を見ると、玲史は頷いた。

「そうなんだ。美奈子さんはまだ来てないから結果は知らないけど、亜子さんは黒だった。昨日呪殺が発生したし、オレ目線じゃあ人外が確実に三人減った事になるんだ。吊り縄は後6つだから、狂人二人と狼二匹、狐一匹で5縄。まだ余裕はあるよ。」

司は、ホッと胸を撫で下ろした。

「良かった。じゃあまだ間違えても大丈夫そうだな。」

神が、頷いた。

「玲史目線ではな。美奈子さんがどう打って来るか分からないから。亨も結果を言わなかったし、議論が始まってからになるが、今のところそういう状況だ。」

話している間に、続々とリビングに人が集まって来た。

司は、皆を椅子の方へと促した。

「さあ、もう時間だ。行こう。」

皆が立ち上がって、それぞれの番号の椅子へと座った。

最後に亨が、緊張気味に入って来て椅子に座り、そうして皆が揃ったところで、司は言った。

「じゃあ、結果を聞いて行きます。今聞いているのは、神さんが早苗さんを占って白、渚さんが征由を占って白。亨さんは?」

亨は、ギクリとした顔をしたが、誰とも視線を合わせないようにうろうろと視線を動かしながら、言った。

「…克己を占って、白。」

司は、皆の占い結果をホワイトボードに書きながら、頷いた。

「じゃあ霊能結果。美奈子さん?」

美奈子は、緊張気味に言った。

「今日は同時じゃないの?」

「同時がいい?」司は言って、玲史を見た。「じゃあ一斉に言ってね。いっせーのっ!」

「「黒」」

二人が、同じ色を言った。

司は、ほうと肩の力を抜いた。

「良かった、確定だね。亜子さんは黒だ。それで議論を進めよう。」

すると、美奈子が慌てて言った。

「違うの!ほんとは白…みんなが、私を疑うから。みんなが望む結果なら、信じてくれるかと思って…。」

皆が、顔を見合わせる。

「…結果を騙ったの?どうして?」

美奈子は、言った。

「だって、誰も私を信用してくれないじゃない!だから、黒って言ったら信じてくれるかと思った。でも、やっぱり出来ないわ。自分の真目のために村に偽の情報は落とせない。亜子さんは白よ…少なくとも、人狼じゃなかった。もしかしたら狐かもしれないけど…私だって、昨日の亜子さんは黒いと思ったもの。」

司は、顔をしかめた。確定することを恐れて、違う結果に言い換えた狂人に見えたのだ。

それでも嘘を言ってるようにも見えなかった。

神が言った。

「気持ちは分かる。」皆が驚いていると、神は続けた。「縄に余裕が出たとなると、霊能を吊ろうとなるかもしれないからな。美奈子さんにしたら、死活問題なのだ。確かに怪しいが、まだ私は美奈子さんの真を切ろうとは思わない。まだ決定的な要素がないのだ。何しろ、昨日の亜子さんも、光一も黒ではなく白人外であった可能性もあるのだからな。決定的な何かが出て来るまで、待った方が良いかもしれない。何しろ、もしも玲史が真なら縄に余裕があるのだ。まだ怪しい所を吊る事が出来るのだからな。美奈子さんが真であったなら、まだ黒が囲われてどこかに居る可能性がある。ちなみに、囲われてなかったとしたら昴か弘なのだが、この二人の黒要素は私はまだ拾えていないのだ。なので、今日は白が出ている者達にも積極的に話してもらいたい。もちろん、村が昴と弘の中から吊ると言うのならそれに従うがね。」

司は、亨が身を硬くしたのを感じた。

神が占っていない先で他の占い師が白を出している所となると、渚の白の希は初日に死んでいるし、早苗は昨日、神が占って白だった。残っているのは、亨の白の永二、里美、克己、そして襲撃されて死んだ帆波の白の奏しかいない。だが、奏と神は、最初から協力し合っていてお互いを信じているようなところがあった。

という事は、神が疑っているのは、亨という事になる。

だが、神目線ではそこに黒が居ないとおかしいのだ。

玲史が真だったとしても、まだ黒は二つしか吊れていないので、占い師に黒が居たとしても後一人、グレーに居ると考えるのが普通だ。

もちろん、美奈子が黒ならこの限りではないが、話し合える人狼が、あんなお粗末な霊能騙りを許しているとは思えなかった。

普通に考えたら、偽なら美奈子は味方の居ない狂人だろう。

亨が、息をついた。

「…すまない。」下を向いて、じっと床を見たまま呟くように言った。「君が疑うのも当然だ。オレは、襲撃を受けるのが怖かった。何しろ、オレは神さんほど真目を取れていない。なので、狩人も守ってはくれないだろう。帆波さんが襲撃されて、ショックだったんだ。村に、真だと知ってもらわないとオレは襲撃されて死ぬ。そう思うと、居ても立ってもいられなくて。それで、呪殺を出そうと必死になった。今日も…黒と言ったら人狼に真なのがバレて、噛まれると思った。だから、結果を騙ったんだ。克己は黒、人狼だった。」

克己が、顔を険しくした。

神が、亨を見た。

「…そうか。私も君が白だと言ったから、克己の位置から黒が出そうなものなのにと怪訝に思ったんだ。だとしたら、永二、里美さん、克己の中に黒が居るかと思うのは、自然な思考だろう。何しろ、渚さんの占い先は昨日私が占った早苗さんで確認出来たからな。征由は死んでいるし、希さんもだ。となると、限りなく君が、渚さんより先に確認しておかねばならない場所だなと思っていた。」

司が、驚いた顔をして神を見た。

「え、神さんは亨さんを怪しまないんですか?」

神は、苦笑した。

「何でもかんでも怪しむわけではないぞ。亨の様子は、最初からおかしかったのだ。結果を言う時も、誰とも目を合わさずに緊張していたしな。克己の黒を知ってしまったので、狼に襲撃されると怯えていたのだとしたら納得もいく。このゲームは、普通のゲームではない。命が懸かっていて、目の前で一人一人死んで逝くのに、普通の精神状態では無理なのだ。それでも、明かしてくれたのだから良いではないか。で?私の話ではなく、黒を打たれた克己の話を聞いた方が良いのではないのか。」

司は、そうだった、と慌てて克己を見た。

「じゃあ克己?弁明はある?」

克己は、渋い顔をしたまま話し始めた。

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