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獣と共に夢の中  作者:
13/60

三日目昼

司は、メモ帳をじっと見つめて考えていた。

帆波が襲撃されたのには、何か意味があるはずだった。

だが、人狼が明らかに仲間であると分かった上で襲撃することはあり得ない。帆波は人狼目線、真か狂人のはずで、こんな序盤に狂人を噛むだろうか。

何しろ、人狼は四人も居るが、占い師が二人居るこの村で、全く占われずに全員残るのは無理だった。

狂人なら、占われても白しか出ないので、生き残ってくれていた方が、最終的に人狼が有利になるので、狂人だと分かっていたら、こんな序盤に噛むことはあり得ない。

だとすると、真らしい所を噛んで、他の占い師の結果を信じにくくするためだったとしたら、合点が行く。

なので、恐らく奏は白で、帆波の結果は間違っていなかったということだ。

神はお告げ先が玲史だ。美奈子に比べて真っぽいが、ここが狼だったとしたら白を出されてわざわざ霊能に出るだろうか。狼同士は夜に話し合っているので、白を打たれたら潜伏しようと話し合っているはずだった。

他のグレーに居る仲間に、役職COという逃げ場を作っておくためだった。

なので、それはないだろう。神自身が言っていたが、玲史は真か狂人なのだろう。狂人なら、狼に噛まれないために白を打たれても出て来る可能性はあった。

渚はどうだろう。

お告げ先の希は噛まれた。白だったということだ。つまり、結果は間違っていない。それに、二人の霊能者の結果が違う事から片方は偽で、希が真霊能者の一人だったと今日分かった。つまり、渚は間違っていない。

亨は、初日のお告げ先は永二だった。永二の色は全く分からない。亨の白だったので、特に話題にも上らなかった。

光一がもしも黒なら、永二は白い。だが白なら、確かに怪しい。

もし永二が人狼だったなら、亨は残して他の噛めそうな占い師から噛んで、残った占い師達の中の真を落とす材料にもしそうだった。

…だとしたら美奈子さんが真ならって事になるのか…。

美奈子は、感情的過ぎて判断が濁る。肝心の思考の動きが全く分からなくて、とても真には見えなかった。

だが、個人の性格もあるので違うとも言えないのだ。

美奈子さんが偽なら、亨もないだろうしなあ。

どうして、人狼は帆波を噛んだのか。

司には、皆目分からなかった。

どちらにしろ、帆波を噛んだ事で占い師が減って、最終的に決め打ちになった時の選択肢も狭まってラッキーだったのかもしれない。

とはいえ、そんな村人有利な噛みを狼が選択した、意味が分からなかった。

そうなると、やっぱり神が言っていた占い指定先に黒が居た、というのが有力そうにも思えた。

部屋の、扉が薄く開いた。

「司?居る?」

司は、驚いてそちらを見た。

そこには、昴が立っていた。

「昴?居るよ、ノックしてくれたら良かったのに。」

司が慌てて立ち上がると、昴は入って来て扉を閉めた。

「めっちゃ叩いたんだよ。でも、返事が無くて。どうやらここ、めっちゃ防音されてるみたいで、ちょっとぐらいだと分からないみたい。昨日だってメモを差し入れてから、扉を叩いたんだけど、その様子だと気付いてなかったみたいだね。」

司は驚いた。ノックしてたのか。

「ごめん、気付かなかった。なんか落ちてるって思って、メモに気付いたんだ。」

昴は、腰に手を当ててため息をついた。

「だろうね。誰かに見られちゃいけないから、慌ててドアの前から逃げたし昨日は関係なかったけどさ。それより」と、司にズイと寄った。「司、顔に出過ぎ。僕が狩人だと人狼に知られたら噛まれてみんな困るんだよ。僕は自分の身は自分で守るし、あくまでもグレーとして扱ってくれないと。それから、昨日は司を護衛したから今夜は護衛出来ない。分かった?」

司は、昨日はオレだったのか、と頷いた。

「分かった。信じて見てるだけにする。でも、グレーからだと雰囲気的に君か征由になりそうだけど、大丈夫なのか?万が一って思って気が気でなくて。」

昴は、苦笑した。

「大丈夫だよ。僕は便宜上グレー吊りを推すけど、君は霊能吊りを推して欲しいなって。それで、出来たら神さんに占い先を振り分けて。あの人は凄い切れると思うけど、敵だったら怖いだろ?偽ならそろそろ黒を打たなきゃならないところだし、僕は打ちやすい位置だと思うんだ。だから、それで真贋が分かるんじゃないかな。」

司は、神も疑っているのか、と思ったが、確かにそうだった。これだけ占って黒が出ないと、占い師として信用が取れないかもと恐れて、そろそろ偽なら黒を出して来るはずだった。

「じゃあ、それで。」

昴は、フフと笑った。

「その様子だと、僕の他に狩人は出なかったんだね。」

司は、驚いて昴を見た。

「え…騙りが出てるかもと思ってたのか?」

司は、笑って頷いた。

「それはそうだよ。吊られないんだし出て来るかもって思ってた。でも、司の様子から他に騙らなかったんだって思った。ってことは、狂人が二人とも出てるのかもな…占い師と霊能者に。狼は全潜伏なのかな?どうも占い師の中に狐が居るように思うんだよね。狼の噛みがおかしいだろ?狐を探して噛んだのかなとか、思ったんだよね。」

司は、昴を見つめた。

「それって、じゃあ奏が黒で、狂人か狐だと思って、試しに噛んだってこと?」

昴は、首を傾げた。

「分からないけど。普通、偽で狂人かもと思ったらこんな序盤に噛まないよね。相互占いで真占い師に消させたらいいんだし、他の、共有者とか噛むよ。役に立たなくても確定村人は強いから、由佳さん辺りを噛んでおけばいいからさ。だから、まあ奏は白なんだろうな。」

司は、昴が結構推理が伸びているのに驚いた。これなら、きっと司がなんやかんや庇わなくても自分で生き残りそうだった。

「…やっぱり、神さんが言った通り征由が占い先になってたからかな。黒が出たら吊られるから、少しでも生き残ろうって。昴が狩人なのを知らないから、疑われたらなんとか昴に擦り付けようって魂胆で。」

昴は、ふうとため息をついた。

「かもね。というか、それしか理由が思い付かないんだよな。神さんもだいぶ考え込んでただろ?あり得ない噛みだからさ。占い師に人狼は居ないんだろうなって、僕は思ったよ。だってグレーの狼も捕捉されそうなのに、占い師なんか噛んでたら占い師騙りの狼まで吊られるじゃないか。もし玲史が真だったら、昨日一人失ってるんだよ?その上で占い師騙りの狼までとなると、征由もそれは噛みたくなるかなって思うしね。そうか…」昴は、目を丸くした。「そうだよ、昨日失ってるんだとしたら、征由まで黒を出されたら最悪だ。占い師に狼が居ないなら、噛むよ。連日吊られたら残り二人だろ?きついじゃないか。」

司は、そうだ、と思った。光一が黒だったなら、征由に黒が出て吊られたら狼は二匹。

かなりキツい事になる。

「…じゃあ、霊能吊ってる場合じゃないんじゃ。」

司は、思った。霊能はまだどちらか真か分からないのだ。出す結果を見て、これからいくらでも判断出来る。

だったら、グレー吊りをした方がいいのだ。

昴は、大きなため息をついた。

「だねえ。仕方ないなあ、じゃあやっぱり僕、頑張るよ。僕が吊られたら村が崩壊するから、吊られる時は黙って吊られる。だから君も、もしそうなっても狩人が居ない事を言うなよ。まだいるのにと思わせておいた方がいいんだ。」

司は頷いたが、複雑だった。

だが、昴なら生き残る。そして今夜神に占わせて、グレーから脱出させて守りきるしかない。

司は、覚悟を決めていた。

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