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【完結】高校生WEB作家のモテ生活 「あんたが神作家なわけないでしょ」と僕を振った幼馴染が後悔してるけどもう遅い  作者: 茨木野
第3章

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96話 こうちゃん、デートする



 僕と、イラストレーターのみさやま こうちゃんは、出版社での打ち合わせを終えた。


 二人で用事を済ませた後、電車で帰ることにする。


「こうちゃん、大丈夫?」


 電車の中で、終始こうちゃんが震えている。

 子リスのようであった。


『へ、平気やでっ。電車くらいよゆーですよ!』


 ロシア語でこうちゃんが震えながら言う。

 どうやら人混みが苦手のようだ。


『陰キャに外出はきついっす……』


 こうちゃんがぎゅーっ、と僕の体に抱きつく。


 幼い子供が、初めて電車に乗って、怖がって居るみたいだ。


 僕が、守らないと。


「大丈夫だよ、こうちゃん」


 きゅっ、と僕はこうちゃんの腰に手を回す。

『うひゃー! かみにーさまってばぁ。んもぉ~。こうちゃんの魅力にメロメロになっちまったかい? んー? 人前でいちゃつきたいなんて、あんたも好きねぇ~!』


 にこにこ、とこうちゃんが笑う。

 良かった、元気になってくれたみたい。


 ハグされると元気になれるもんね。


【つぎはー、秋葉原~。秋葉原~】


 電車がちょうど、秋葉原に停車した。


 ぴくっ、とこうちゃんが電車の外を見やる。


 じーっ、とあんまりにも熱心に見つめている物だから……。


「ちょっと秋葉原、よってかない?」


「いくー!」


 僕たちは電車を降りる。


 こうちゃんが後ろからついてきた。


「何で前歩かないの?」

『敵に備えている……しんがりは任せろ』


 ぐっ、とこうちゃんが親指を立てる。


 なるほど、前を歩きたくないらしい。


 僕たちは自動改札をくぐる。


 そこに広がっていたのは、高層ビルの群れだ。


『秋葉原! 我が聖地! こうちゃんのホームタウン!』


 こうちゃんが両手を挙げて叫ぶ。


「秋葉原好きなの?」


『もちろん! アニメ、ゲーム、フィギュア! そしてゲーセン! なんでもある! こうちゃんここ大好き!』


 ロシア語で何を言ってるのかはわからない。

 けれどその晴れやかな表情を見れば、この街を気に入っていることは明らかだ。


「どこからいく?」

『とりあえず同人誌巡りかなー。メロブいってー、とら行ってー、その後にゲーセン!』


 メロブ、とら、という単語が聞こえた。


 多分、同人ショップのことだろう。


 …………あれ?


「こうちゃん、君、18歳以下の女の子だよね? 同人誌なんて……買えるの?」


 さっ……とこうちゃんが目線をそらす。


「こうちゃん? 非合法なことしてませんか?」


『し、してない! お姉ちゃん達にえっちぃやつ買ってもらってるとか、贄川にえかわ兄貴に買ってきてもらってるとか、してません!』


 ロシア語で、なおかつ早口のこうちゃん。


 これは多分買ってるな……。


「もう、だめでしょ。18歳未満は買っちゃだめなんだから」


『えー? でもそんなの律儀に守ってるひと、おる? ねえ、読者の皆さん。高校生の時とか、エッチな本、普通に買ってましたよねえ?』


 こうちゃんがまたあさっての方向を向いて何かを言ってる。


 多分そんなに意味はない。


「ほら、えっちぃ本以外見て回ろうね」


「へーい……」


 僕たちは一緒に秋葉原の街を見て回る。


 観光客でいっぱいだった。


『うひょー! デジマスのちょびのエッチなフィギュアあるやーん! 買う-!』


 こうちゃんがフィギュア売ってる店に突撃していく。


 ディスプレイに張り付いて、熱心に人形を見ていた。


「ちょびの人形だね。欲しいの?」


「かなり!」


 ふーん……いくらなんだろう……。


「な、7万円!?」


 なんてこった。


「ただの人形が……7万円なんて……」


「ふっ……」


 こうちゃんが、鼻で笑う。


『素人が』

「こうちゃん、ロシア語でもわかるよ、馬鹿にしてるのが」


 むにっ、とこうちゃんのほっぺたを引っ張る。


 おもちみたいに、のびのびとしていた。

 おお、のびーる。


『たかが人形と侮るなかれ。みよ! このディティール! おっぱいの質感! 網タイツは塗装じゃなくて、フィギュアにがちのタイツをはかせてる! このリアリティ! この出来! 7万は安いもんよ……!』


 ふがふが、とこうちゃんが興奮気味にフィギュアに対して熱弁を振るう。


 ロシア語何言ってるのかさっぱりだったけど、それだけ入れ込んでるのがわかった。


「買うの?」

「もち!」


 こうちゃんは財布とを取り出して……固まる。


「どうしたの?」

「のー、まにー」


 まにー?

 ああ、お金(マネー)か。


『今月はガチャに課金しまくって金欠だったんや……』


「こうちゃんって稼いでるのに、何にそんなにお金使ってるの?」


 こうちゃんはどうどうと、胸を張って言う。


「夢」

「あ、そう……」


 夢を買ってるのか……。


『いいですか、みなさん。課金ガチャは決して無駄な消費じゃないんです。あれは夢を買ってるんです。いいキャラが出るかも、ってときの、あの興奮、わくわくを、買ってるんです。確かにあれは電子データです。データに何万何十万何百万と使うのは愚行? 否! 断じて否! 漢なら無課金を! 無理のない課金と書いて無課金を! こうちゃんは推奨します!』


 こうちゃんが熱弁を振るっている間に、僕はレジで決済を済ませてきた。


「ただいま」


「? なに、買った……の?」


 僕は紙袋を、こうちゃんに渡す。


「プレゼント」

「!」


 こうちゃんは中身を見て、驚く。


「ちょび、の、フィギュア!」


 さっき欲しいと言っていた、ちょびのフィギュアだ。


「いい、のっ?」


 こうちゃんの白い肌に、赤みが差す。

 喜んでくれてるみたいだ。


「うん、いいよ」

「……み、見返りは?」


「いいよ、そんなもの」

「そいな、ばかな……!」


 こうちゃんが戦慄の表情を浮かべる。


『何の裏もなく、7万のフィギュアをプレゼントするだと!?』


 彼女が疑っている。


「えーっと……自分の恋人に、喜んでもらうためのプレゼント買うのって、そんなに変かな……?」


 ぽかーん……とこうちゃんが目と口を、見開く。


「こい……びと?」

「うん、恋人」


 ぽんっ、とこうちゃんが手をたたく。


『そーいえば、そうだった! こうちゃん……かみにーさまのガールフレンドだった!』


 こうちゃんがロシア語で何か言ってる。


『っぶね、最近ヒロインらしいムーヴしてないから、読者の人たちもこうちゃんすらも、自分がかみにーさまのすてでぃーな方の彼女だって忘れてたよー。なはなは』


 こうちゃんが喜んでくれてるみたい。


 よかったぁ~……。


「じゃ、こうちゃん行こっか」

「うんっ!」


 るんるん気分で、こうちゃんが歩き出す。


 だが……。


「あう……」


 すぐに立ち止まってしまった。

 ぜえぜえ……と肩で息をする。


「どうしたの?」

「……疲れた」


 早い、早すぎるよ……!


『こうちゃんほら、薄幸の美少女系ヒロインだから、体力なくって』


 普段引きこもりで、運動一切しない自堕落な彼女ヒロインだから、仕方ないか。


「僕も持つよ。ほら、いっしょに」


 紙袋の手提げの片方を、僕が持つ。

 こうちゃんが、逆の方を持つ。


 ふたりで、紙袋を持っているような形だ。


「か、かみにーさま……すごい……!」


 こうちゃんが目を輝かせる。


『なんかこうちゃん、ラブコメのヒロインしてなーい? ねえ! そう思いません? 皆さん!?』


 少しは恋人らしいこと、できたかな……

 喜んでるから、良かった!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] なんかこうちゃん、ロシア語で言わない方がいいことまでロシア語で言うこと多くない? アレな発言とか第四の壁超えとかはともかく、普通に伝えていいことは日本語使おう?
[一言] 『いいですか、みなさん。課金ガチャは決して無駄な消費じゃないんです。あれは夢を買ってるんです。いいキャラが出るかも、ってときの、あの興奮、わくわくを、買ってるんです。確かにあれは電子データで…
2022/06/11 14:31 退会済み
管理
[一言] 「……ありがとう、優しくて最高にカッコいいお兄ちゃん……♡ はぁ~……♡ せんせーがこのお兄ちゃんみたいな素敵な人だったらいいのになぁ~♡」 (30話から引用) こうちゃんキャラが...()…
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