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【完結】高校生WEB作家のモテ生活 「あんたが神作家なわけないでしょ」と僕を振った幼馴染が後悔してるけどもう遅い  作者: 茨木野
第1章

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27話 幼馴染みは陽キャくそ野郎に口説かれる



 上松あげまつ 勇太が、アリッサ・洗馬せばと楽しく旅行をしている……一方その頃。


 勇太の幼馴染み、大桑おおくわ みちるはクラスメイト達と、カラオケに来ていた。


 マイクを握っているのは、高身長のイケメン男子。


「きゃー! 中津川なかつがわくんかっこいー!」

「素敵ぃ~……♡」


 きゃあきゃあと女子達が黄色い声を上げる。


 中津川。

 淡く脱色した髪の毛に、甘いフェイス。

 しかもバスケ部の主将。

 外見だけ見れば、確かにモテるのもうなずける。


「(……はぁ、心底どうでも良い)」


 中津川の歌を、みちるは聞き流していた。

 今気になるのは、幼馴染みの勇太のこと。

 カミマツはツイッターで、土曜日にこんなことをつぶやいていた。


【友達と北海道にきてますー!】


 勇太ことカミマツは、ツイッターのフォロワー20万人(僕心の連載してからさらに伸びた)の超有名人だ。


 しかしその正体は、限られたものしか知らない。

 そのなかに、みちるもいる。


「(……勇太のヤツ、今朝アリッサ・洗馬と出かけたわよね。ということは、あいつふたりきりで旅行を!?)」


 勇太への好意に気づいたみちるは、彼に振られたあとも彼を思い続けていたのだ。


 授業中もチラチラと彼を見ている。

 土日は、何度も彼の家の前をいったりきたりする。


 今朝彼が出かけたことも当然知っていた。

 それがアリッサとの旅行と知った今、気が気でなかった。


「(なんなのよ……他の女と旅行なんて。あたしの許可もなく……なんなのよ!)」


 みちるは既に振られている。

 別に勇太が許可を取る必要など毛頭ない。


 だが長年彼と一緒に居たという謎のプライドがある。


 ポッと出の女に勇太を取られたということが……許せないのだ。


 ……とまあ、みちるはこのところずっと勇太のことばかり考えていた。


 だから……気づかなかったのだ。

 自分に向けられている、好意の視線に。


 ややあって。


「はぁ……」


 みちるは女子トイレにいた。

 用を足して手を洗っている最中である。


「勇太のヤツ……ツイッター更新してない。なんなの気になるじゃないのよ……もうっ!」


 きゅっ、と水道を止める。


「てゆーか……カラオケつまんないわ。気晴らしになるかと思ってきたけど……はぁ……」


 女子トイレを出た、そのときだった。


「よぉ、みちる」

「……中津川くん」


 陽キャ男子、中津川が廊下にいたのだ。


 何をいきなり話しかけてくるのだろうか?

 いきなり【みちる】ってなんだ、と彼女は心の中でイラッとする。


「さっきの歌どうだったよ? おれ、得意なんだよねカラオケ」


「はぁ……」


 正直勇太のことが気になりすぎて、歌なんて全く聴いてなかった。


「はぁ、ってなんだよ。聞いてなかったのか? お前のために歌ってたのに」


「はぁ? なにそれ。別に頼んでないし」


 恩着せがましい態度に苛立ち、みちるは中津川の横を通り抜けようとする。


「ちょ、待てよみちる」


 ガシッ、と腕を無遠慮に掴んできた。


「なんなの?」

「いやなんなのはこっちの話だよ。せっかく話しかけてやってるのによ」


 なんだその上から目線の態度は。


「別に話しかけてこなくていいから」


 キッ、とみちるは中津川をにらみつける。

 だが彼はニィ……と気色の悪い笑みを浮かべる。


「気の強い女は好きだぜ」

「は? 何いきなり」


「照れんなよ。好きなんだろ、おれのことが?」


 ……一瞬、何を言ってるのかさっぱりわからなかった。


「な、なに……? 誰が、誰を好きって?」

「おいおいとぼけんなよみちる。おれのこと好きなんだろ。とっくに気づいてるって」


 みちるは、彼が何を言ってるのかさっぱりわからなかった……。


「あんなふうに、毎日熱烈におれのことを見てきたら……誰だっておれのこと好きなんだってわかるよ」


「あ……」


 ……みちるは、中津川の勘違いに気づいた。


 彼女は教室でいつも、上松 勇太をジッと見ている。


 だが勇太とみちるのちょうど真ん中には、中津川がいるという座席順なのだ。


 結果、どういう勘違いを起こすか。


 みちるが、ずっと中津川を見ている……ということになる。


「ち、違うわよ! 誰があんたなんて見るかっての!」


「ははっ。照れるなよ。おれのほかに、誰を見てるっていうんだ?」


 中津川は、みちるが自分を見ている物とばかりに思っている。


 よもや、陰キャで目立たない勇太に、熱烈な視線を向けているとは思わないだろう。


 みちるは教室の中でも上位の美貌を持つ。

 そんなみちると、根暗陰キャな勇太では釣り合わない。


 彼女が勇太を好きなんて……誰もわからない。


 結果、中津川は、大桑みちるは自分のことが大好きで、授業中ずっと熱烈に見てくると勘違いしてるしだい。


「いいぜみちる。おれ、付き合ってやるよ」


「結構よ!」


 ぐいっ、とみちるの腕を強引にひっぱり、壁に押しつける。


「逃げんなって」


 べろり、と中津川が舌なめずりする。

 彼の目は、みちるの顔と胸にロックオンされていた。


 みちるは小柄ながらなかなかのバストサイズを持つ。


 いわゆるロリ巨乳というやつだ。


 思春期男子にとっては、彼女の魅力的な乳房に目を奪われてしまう。


 特に中津川は性欲が強く、みちるの胸をずっとガン見している。


 ……その視線に、みちるは嫌悪感を覚えた。


「このまま外に抜けね? ふたりでさ」


「いや! お断り! 離してよ!」


 みちるは逃げようとする。

 だが腕をがっちり捕まれて身動きが取れない。


「おれと付き合いたくても付き合えない女ってたっくさんいるんだぜ?」


「だから何よ! あたしあんたのことなんて一ミリも好きじゃないから!」


「ハハッ、いいね。気の強い女は好きだぜぇ~……なあみちる、いいじゃねえかおれと付き合えよ」


 スッ……と無遠慮に中津川が、みちるの頬に触れようとする。


「触るんじゃないわよ!」


 強めにみちるが、中津川の手を払う。


 ガツンッ! とそのとき肘が、中津川の鼻に当たる。


「っつぅ~……」

「フンッ……!」


 別に中津川のことは一切好きじゃなかったし、なおかつ今の態度で完全に彼のことが嫌いになった。


 みちるは彼を気遣うことなく、スタスタと去って行く。


「ま、待てよみちる……!」


 中津川は焦って彼女の手を取る。


「なぁ、マジなに怒ってるんだよ?」


 彼からしてみれば、困惑するのも当然だ。

 大桑みちるは、授業中ずーっと自分を見てくる。

 その熱っぽい視線は、恋する乙女のそれだ。


 つまり中津川視点では、ロリ巨乳でクラスでも上位の美貌を持つみちるが、自分に好意を向けている。


 しかし実際に声をかけてみても淡泊な反応、しかも強引に迫っても、喜ぶどころか不快感をあらわにしている。


 ……全くもって、理解できなかった。


「別に。あんたが嫌いなだけ。なによ、今日話したばかりなのに馴れ馴れしいったらありゃしない!」


 解せない。まるで解せない。

 中津川は更なる混乱に陥った。


 彼は生まれ持った顔の良さから、女に不自由したことが一度もなかった。


 声をかけた女はみな、喜んで近づいてくる。

 少し強引に迫っても、男らしいと好意的に解釈してくれる。


 ……なのにみちるは、まったく自分になびいてくれない。


「じゃあね、アタシ帰るから」


 不快な思いをしたみちるは、その場からさっさと退散する。


 一人残された中津川は……ぽかんとした表情で突っ立ってた。


「んぁ? どーしたん中津川ぁ」


 カラオケの部屋から、男子生徒が顔を出す。


「みちる姫はもう手に入れたん?」

「…………」


「え゛? 振られたの? マジ?」


 男子生徒は目を丸くする。


 中津川から頼まれたのだ。

 みちるを手に入れるために、手頃な女子達を誘ってカラオケに行こうと。


 すべては中津川がみちるを彼女にするため、企画したことだった。

 

 ……だが、結果は振られた。


「あんだけおまえに好き好きオーラだしてたのに……みちる姫振るとかまじどーなってるん?」


「わからねえ……ただ……」


「ただ……?」


 にぃ……と中津川が邪悪に笑う。


「是が非でも、あの女、手に入れたくなったぜ」


 今までどんな女も落としてきた。


 そんなプライドがあるからこそ……自分の手を離れていったみちるを、なんとしてでも手に入れたいという欲求がわいてきたのだ。


「絶対におれのもんにしてやるよ」


「だーいじょぶっしょぉ。だって授業中にあんだけ熱烈な視線送ってるんだぜw きっと照れ隠しだろぉw」


 ……だがこの生徒も、中津川も気づいていない。


 みちるの眼に映っているのは、幼馴染みであり、愛しの神作家、上松 勇太ただひとりであることを。

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― 新着の感想 ―
[一言] だから……気づかなかったのだ。 自分に向けられている、好意の視線に。 いやこれドロドロの欲望の視線だからw
[一言] 僕心の短編を投稿すれば、1位ゲットするのでは?
[一言] 幼なじみと声優と歌手の結末の差だけでヒロインとしての格の違いがまるで無い 真のヒロインが必須ですね
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