184話 母くる
僕はみちるへのプロポーズを、どうすればいいのか悩み、父さんに相談しに実家へと来た。
そこで、母さん妊娠という、とんでもない事実が判明したのだった!
さて。
場所は上松家リビング。
父さんに僕の現状を伝える。
「勇太……」
すちゃ、と眼鏡をかけ直す。
「本当に、その選択で良いのかい?」
「父さん……」
真面目な顔の父さん。
そうだよね、この人母さんから駄目人間判定されてるけど、ちゃんとした大人だもんね。
僕のヤバい現状、僕がとろうとしてる選択は、世間的にあまりよろしくない。
だから、大人として、ただそうとしてる……。
「超人気声優、超人気アニソン歌手とかいるんだよ!? そっちを正妻にしなくていいのかいぃい!?」
「前言撤回駄目な人だった!」
「父さんだったら声優さんと結婚したいよ! 凄い夢だもん! 声優さんと結婚!」
うわぁ……(ドン引き)
『オワタな(ドン引き)』
ん? こうちゃんなんで引いてる……あ。
「ん? どうしたんだい勇太?」
『般若が……おる!』
くる、と父さんが後ろを向く。
「おかえりなさい、ゆーちゃん♡」
「か、かあさん!!!!!!」
父さんがこの世の終わりみたいな顔をしていた!
一方、母さんはいつも通り、笑いながら怒ってる!
『さよならカミマツパパ、ふぉーえばー』
「ちちち、違うよ母さん! ぼくはね、世間一般論を言ったんであってだねえ!」
父さんが慌てて言うものの、母さんはニコニコしたまま。
そして……。
「あなた♡」
「はい!」
「眠れ」
どすっ!
「ほぎゃあああああああ!」
母さんのアッパーをくらって、父さんがマンガみたいぶっ飛ぶ。
『マンガと言えば、神作家コミックス4巻が発売になったよ! みんな、買ってくれよな!』
こうちゃんがいつも通りロシア語で意味わからないことを言ってる……。
と、父さん大丈夫かな……。
で、でも父さんの発言もよくなかったよね。
母さんに失礼だし……。
「おかえりゆーちゃん。どうしたの?」
「う、うんちょっと……」
何事もなかったかのようにしゃべる、母さんが怖い……。
『わい、この姑さんと果たして付き合っていけるやろうか。ほら、こうちゃん薄幸の美少女やろ?』
こうちゃんが僕を見て、何か聞いてきてる。
多分母さんのことだろうけど、何言ってるのかわからないので、とりあえず頭をなでておいた。
『こらぁ! ヒロインへの扱いが雑だぉぉ! おれはヒロインだ、誰がなんといおうとヒロインなんだ!』
「お茶でも入れるわ」
「あ、いいよ! 自分で!」
てゆーか……そうだった。
「母さん、その……妊娠おめでとう」
ずっと言えなかったことを、言う。
まあちょっと遅きに失したところあるけど……。
「まあ♡ ありがとうゆーちゃん♡」
母さんは、多分察しが良いから、僕が今日まで気づいていなかったことに気づいてるんだろう。
それをとがめることもなく、ただありがとうと、お礼を言ってきた。
懐の広い人だよな、と思った。
……まあ、あの父さんと結婚するんだもんね。
そりゃ心が菩薩のように広くないといけないか……。
「お茶はいいよ。僕が自分でやるから」
「あらそーお♡ じゃあ、母さんゴミ捨ててくるわ♡」
そういって、転がってる父さんの足を引っ張って部屋を出て行く。
ゴミて……。
『時々、この夫婦どうして結婚したんだろうって思うときがあるでそうろう』
こうちゃんがロシア語で何か言っていた。
意味はわからなかったけど、なんとなく共感する僕であった。