144話 クリスマスの予定
引っ越しが終わり、贄川兄弟は帰っていった。
その日の夜。
僕たちはリビングに集まっていた。
カノジョが勢揃いしている。
みちる、由梨恵、アリッサ、芽衣さん。
『あれ? かみにーさま、こうちゃんは?』
「みんな改めて……よろしくね。仲良く暮らしてきましょう!」
「「「はーい!」」」
『おかしいな、こうちゃんもカノジョ枠に入ってるよね? 色物マスコット枠じゃないよね?』
こたつを囲んでいる僕たち。
膝の上にはこうちゃんが座ってて、さっきから僕の方をチラチラ見てくる。
「どうしたの?」
『かみにーさま、こうちゃんをちゃんとカノジョだと認識してる? ヒロインよ? まだコミカライズかっこヤングガンガンで好評連載中かっことじで、出てきてないけど、ヒロインよ?』
こうちゃんが相も変わらずロシア語で何かよくわからないことを言う。
まあ可愛いのでよしよししておいた。
『いやぁん、かみにーさまがこうちゃんを愛撫する~。だめよ~。この小説はノクターンノベルスでは連載してないんだから~。らめ~』
目を細めてるこうちゃんがかわいらしい。
女子たちはというと……。
「ゆりちゃん私服可愛いわね~」
「ほんとですかっ。うれしーです! 芽衣さんの私服も、大人のお姉さんって感じでいいですね! 素敵です!」
「あらありがとー」
芽衣さんはコミュ力がとても高いので、誰とでもうまくやってくれる。
正直カノジョたちはみんな、ちょっと……いやかなりとがってる人たちが多い。
みちるはツンツンしてるし、アリッサは他人に無関心だし、由梨恵はちょっと独特の世界観持ちだし……。
『こうちゃんはお色気枠だしな』
誰とでも仲良く、そして円滑なコミュニケーションを取ってくれる芽衣さんは、正直とても心強いぞ!
結構みちるとアリッサはバチバチやりあうことがおおいので、バッファー役が入ってくれたのは助かる。
「で、ゆーくん。明後日はどういう予定なの?」
「え、明後日ってなんですか?」
え? と芽衣さんが目を丸くする。
「明後日は、クリスマスイブじゃない?」
……。
…………。
………………あ。
「そ、そうだった……!」
今日は12月22日。明後日はクリスマスイブ!
「誰とどうやって過ごすのー……って、あら?」
空気がぴしりと凍りつく。そ、そういえばまだ……ノープランだった。
「もう、ゆーくんその顔はノープランね」
「うう……ごめんみんな……」
「だって。じゃあほら、スケジュール決めちゃいましょ。はいはい、スケジュール帳見せて~」
と芽衣さんが女子ズに指示を出す。
あ、あれ……?
由梨恵とアリッサが、分厚い手帳を取り出す。
みちるも併せて、四人で予定を確認し合ってる。
「なるほど……ゆりちゃんはこの時間帯は収録。アリッサちゃんはイベント……だからこの時間帯でこうして……」
と、スケジュールを決めていく、芽衣さん。
『すげえやかみにーさま。しゅらばってないよ』
こうちゃんが戦慄の表情を浮かべる。
何を言ってるのかわからないけど、言いたいことはわかる。
凄いスムーズに、予定がきまっていく!
クリスマスデートの!
『さぁて、と。こうちゃんもクリスマスデート回に、参加しますかね。ここらで一丁、ヒロインらしいとこをかみにーさまと読者に、見せつけちゃおっかなぁ~』
こうちゃんが膝上から降りて、ぽてぽてと、女子ズの会議に参加しようとする。
「あ、みさやま先生は締め切り余裕でぶっちぎってるんで、クリスマスイブもクリスマスもイラスト描いてくださいね」
……そういや、こうちゃん絵師として有名になったから(VTuber関連で)、仕事が山盛りなんだった。
そこに加えて、デジマス、僕心の挿絵もあるから……。
「ちなみに年内いっぱい、みさやま先生にお休みはありません」
「ふぇえ……」
「頑張らないと正月休みもないから、がんばって」
「にゅふぅう……」
芽衣さん、こうちゃんのイラストの締め切りまで把握してるんだ。すごい……。
ぽてぽて……とこうちゃんが歩いてきて、僕の腕にしがみつく。
「こうちゃん……どーすれば?」
そんなの決まってる。
「仕事がんばろ?」
『ちくしょぉおお~……! 息子めぇえええええええええ! 有名になったせいで仕事ふえ過ぎちゃってるじゃあないのよぉおおおおお! もぉおおお!』
ロシア語で何かつぶやくこうちゃんだったけど、まあ、いつも通り意味は無いんだろう。




