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【完結】高校生WEB作家のモテ生活 「あんたが神作家なわけないでしょ」と僕を振った幼馴染が後悔してるけどもう遅い  作者: 茨木野
第1章

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12話 はじめてのクリエイター友達



 歌手のアリッサ・洗馬せばの家に遊びに来ている僕。


 偶然風呂上がりの彼女を見てしまった……。


 数分後、リビングにて。


「本当に、申し訳ございません……」


 薄手のシャツとスカート姿に着替えた彼女が、真っ赤になってうつむいている……。

 お、大きかったな……生で見た胸……って、何を意識してるんだ僕はー!


「こんな無駄肉を見せつけて、カミマツ様のお目を汚してしまったこと、本当に申し訳なく思います……」


「な、そんなことないよ! すごい……きれい……だったよ!」


 くわっ、何を言ってるんだろ僕はぁ!

 でも、きれいだったのは事実だし……。


「……お世辞でも嬉しいです」

「お世辞じゃないってば。本当に綺麗だよ」


「…………」


 アリッサは顔を極限まで赤くする。


「……おやめください。恥ずかしい、です」


 美人だし、褒められ慣れてると思ったんだけど、そうでもないらしい。


「あ、えと……うん……ごめん……」


 それきり、僕らは黙ってしまう。

 き、気まずい……!

 何か話題を……そうだ!


「ね、ねえアリッサ。その、さっきの部屋なんだけど……」


 びくんっ、と彼女が体をこわばらせる。


「あれって……新曲?」

「……はい。デジマス2期のオープニング曲です」


「2期の!? 早くない!?」


 この間、2期製作決定が決まったばかりだった。


 時期はまだ未定だって話だし、準備するにしても早すぎるんじゃないかな?


「……ワタシの場合、1本作るのにかなり時間掛かるので」


「そうなんだ。もしかして1期や映画のときも?」


 こくりとアリッサがうなずく。


「そうなんだ……」


 床に散らばった譜面を思い出す。

 あれだけたくさん、作っては捨ててを繰り返して、曲が作られてきたんだ。


「すごいね、プロの歌手って。1本の仕事にそこまでするなんて」


「……ええ。曲は作品に添える花の1つ。手を抜くと作品のイメージをそこなうことになりますから。時間をかけて善い物を作りたいんです」


 アリッサに連れられて、僕らはさっきの部屋に行く。


 ピアノの前に座って、彼女は曲を奏でる。

 白く長い指が鍵盤を流麗に叩く。

 その動きに思わず見入り、そして奏でられる曲に聴き入る。


 ……すごい。浮かんでくる。

 デジマスの世界が……!


 やがてアリッサは手を止める。


「すごいよ! メッチャ良いじゃん!」

「……ありがとうございます。あなたに褒めてもらえたことが、一番嬉しいです。でも……」


 しゅん、とアリッサが肩を落とす。


「……歌詞が上手く思い浮かばなくて、困ってます」


 アリッサが空の譜面を手に取ってまた書き出す。

 けれど手を止めて、はぁ……とため息をついた。


 なるほど、書き損じはこうやってできていったんだね。


「でも……どうして、そこまで一生懸命なの?」


「……ユータ様の作品を、ワタシはお借りしている立場です。だから、あなたの作り出す最高に素晴らしい作品に泥を塗らないように、よい物を作りたいんです。デジマスを好きな人が……なにより、作者あなたが喜んでくれるように」


 僕のために、ここまでやってくれていたなんて……。


 僕は、バカだ。

 曲に対して【良い曲だな】くらいしか思わなかったんだから。


 そこにどれだけの情熱が注がれているか、想像できてなかった。


 曲に思いを込めてくれる彼女のために、僕は何ができるだろう……?


「あのさ、アリッサ。その……僕、手伝おうか? 曲作り」


「えっ……!? い、いいのですか!?」


「うん。僕も力になりたいよ」


 まあ何ができるか、わからないけど。


「……嬉しいです」

「え……ええっ!? ど、どうしたの!?」


 ボロボロとアリッサが涙を流す。


「……ごめんなさい。まさか、尊敬するクリエイターの方から、協力を得られるなんて、思っても居なくって……つい……」


「尊敬って……君の方が凄いと思うよ。1つの仕事にすっごいこだわって作ってくれてるし。作者冥利に尽きるよ」


 アリッサは感極まったように、じわりと目に涙をためる。

 

 立ち上がると、僕を正面から抱きしめてきた。


「うう……ぐす……ありがとう……ございます……」


 強く強く抱擁される。

 甘い匂いにくらくらして、倒れそうになった。


 でも嬉しそうに涙を流す彼女を見ていると、突き放すことはできなかった。


 ややあって。


 夜。

 僕は来たときと同じく、リムジンに乗っていた。


「……ありがとうございます。ユータ様。おかげで曲の完成に凄い近づきました」


 正面に座っているアリッサが微笑んで言う。


 あのあと、僕らは作曲作業をした。

 と言っても、彼女がデジマスに対する質問をしてきて、僕が答えるみたいな形式だった。


 キャラに込めた思いや、ストーリーの意図を話した。


 そこからアリッサはメロディに合う歌詞を作っていったのだ。


 時たま、この歌詞はどうと聞かれて、こういう方が良いんじゃないと答えた。


「……今日中に完成させたかったのですが」


 すっかり日が暮れて、夜になってしまっている。


「ごめん、学校があるから明日も」

「……泊まっていっても、よかったのに」


「い、いやさすがにそれはちょっと……」


 若い女の子と一つ屋根の下。

 しかも相手は超美人……!


 そんなの……無理すぎる!

 意識しちゃうよ、だってアリッサはとても美人だし、スタイルも抜群だし……。


「……良いんですよ。ユータ様になら、ワタシの全てを捧げても」


 彼女が僕の隣に座って、腕を抱いてくる。

 胸に……! おっぱいに腕がはさまる!

 や、やわらけえ……じゃなくって!


「あの……さ。その……アリッサ。できれば……もっと普通に接してほしいんだ」


「……普通、ですか?」


「うん。だって僕ら、同じ作品を作ってく……戦友じゃない?」


 僕らの間に上下関係なんてない。

 彼女も僕も同じ方を見て、同じ目的のために力を尽くしているから。


「……でも、ユータ様はリスペクトできる最高のクリエイターですし……」


「僕もアリッサを尊敬してる。それでおあいこじゃない?」


 きょとん、とアリッサが目を点にする。

 だがフッ……と微笑んだ。


「……面白いかたですね」

「そうかな?」


「……わかりました。では……ユータさん」


 彼女がにこやかに微笑んで、頭を下げる。

「……これからも、一緒に頑張りましょう」

「うん、頑張ろう!」


 やがて僕の家の前にリムジンが止まる。


「……では、ユータさん。また」

「うんっ、また今度!」


 彼女もリムジンから降りて、近づいてくる。

 

 にこやかに笑うと、僕の頬を手で包んで、キスをしていた。


「……おやすみなさい♡」


 呆然とする僕をよそに、リムジンは去っていたのだった。


    ★


 勇太が歌手のアリッサと密会した。


 その日の夜。


 幼馴染みのみちるは、ベッドの上で横になり、先ほどの事を思い出していた。


「…………」


 スマホには、先ほど更新されたカミマツの【デジマス】最新話が表示されている。


 今回もとても面白い内容だった。


 気になったのは、あとがきだ。


『更新頻度、今日からもうちょっとアップします』


 カミマツがネットに小説をアップロードする頻度は、3日に1回くらいだ。


 書籍発売時期が近づくともう少しペースが落ちる。


 本来なら、更新頻度が上がったことを喜ぶだろう。


 だが……素直に喜べない理由があった。


「…………」


 今度は、みちるがツイッターを開く。

 カミマツは小説をアップするとツイッターで宣伝する。


 リプライに、【なぜ更新頻度が上がるのか】と、読者が書いていた。


【尊敬できるクリエイターの方と会ったんです。がんばらなくっちゃって思って!】


 とカミマツが返事を書いていた。


「……まさか」


 みちるは知っている。

 今日の放課後、勇太がリムジンに乗ってどこかへ行ったことを。


 そのとき、見てしまった。

 彼を出迎えたのは……アリッサ・洗馬せばだった。


 もしこの尊敬できるクリエイターが、アリッサだとしたら……


「……違う、違う! こんなの……ぐ、偶然よ!」


 ━━━勇太=カミマツを裏付けるピースが、これで1つ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 作詞・作曲に名前乗ったりするんですかね(´・ω・`)?
[一言] 世界観もキャラクターも良いので、読むのが楽しみです。 どんどん書いて下さい応援致しております。
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