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【完結】高校生WEB作家のモテ生活 「あんたが神作家なわけないでしょ」と僕を振った幼馴染が後悔してるけどもう遅い  作者: 茨木野
第3章

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102話 由梨恵の過去


 上松 勇太は、夜のお台場の公園で、声優の由梨恵と相対している。


 白馬の親友である女性・一花から後押しされた彼は、由梨恵と対話しに来た。


「…………」


 とはいえ急に本題を切り出すわけにはいかない。


「えと、その……今日の由梨恵、きれいだね」

「え?」


 両親との食事会だったからか、彼女は清楚な白いドレスのようなものを着ている。

 肩から薄いストールを纏っている姿は……。


「まるで女神のようであった、なんてね」

「……そ、そんな、ことないよ」


 由梨恵が目線を落としながら言う。

 響いていないだろうか。


 いや、ちらちら、とこちらに目線を配ってきている。

 効果ありと見えた。


「その黒髪ロングに白いお嬢様ワンピースとってもにあってる!」

「そ、そうかなぁ?」


「そうだよ! 可愛いよ!」

「そ、そうかなぁ~?」


 意外とチョロいぞ! と勇太は思う。

 もとより由梨恵は天真爛漫な子だ。


 落ち込むことがあっても、すぐに精神力は回復するのだろう。


 その後勇太はほめ殺し作戦に出た。

 次第に由梨恵は元気を取り戻していった。


「勇太君、ごめんね。気を遣わせちゃって」


 数分もすれば由梨恵は普段の表情に戻っていた。

 心からの安堵の吐息を、勇太がつく。


「僕こそ、乱入してきてごめんね」

「ううん、いいの。うれしかったから」


 心が落ち着いてはいるものの、しかしやはり、その笑顔にはどこか陰を落としている。


「由梨恵。言って。思ってること」

「…………」


「君の全部、僕が受け止めるから」


 ね、と勇太が微笑む。

 由梨恵はぐっ、と涙をこらえると、勇太にバッと抱き着く!


 ぐりぐりとほおずりする。


「ゆ、由梨恵さん……?」

「ごめん、うれしすぎて、つい……」


 由梨恵の大きな胸が当たって、ドギマギする勇太。

 だが彼女を放すことも、離れようとすることもしない。


 ほどなくして、彼女は口を開いた。


「ね、勇太君。今まで、君に言ってなかったことがあるんだ」


「言ってなかった、こと?」


「うん。私が……なんで声優になったのかって、こと」

 

    ★


 駒ヶ根由梨恵にとって、勇太が作ったその作品は、自分の運命を変えた特別なものだ。


 彼女はとある大企業の社長令嬢だった。


 裕福な家庭に育ち、優しい兄を持ち、何一つ不自由のない生活を送っていた。

 ……だが、中学生になったとき、彼女は言われたのだ。


『こんやくしゃ……?』


 父親が紹介したのは、三十代の、身なりの整った男だった。


『そうだ。由梨恵。お前はこの人と結婚するんだ。これは、決定事項だ』


 由梨恵の父も、そして婚約者も、さも当然のように言ってきた。

 母も、その男との結婚については賛成していた。

 唯一兄である、白馬だけは反対してくれたが、両親の決定は覆せない。


『…………』


 今まで、両親の言われるがままに生きてきた。


 それが、自由ではなく、とてつもなく不自由なことに、由梨恵は初めて気づかされた。

 父が築き上げてきたレールの上を、自分は走っているだけ。


 自分の人生って、なんなんだろう。


『マイシスター。やりたいことはないのかい?』


 年の離れた兄、白馬が、ある日自分に聞いてきた。

 だがすぐに答えられなかった。


 婚約者を紹介されてから今日まで、落ち込んで、由梨恵はふさぎ込んでいた。

 白馬が心配して様子を見に来てくれたのだ。


『……わからない。お兄ちゃん、どうしよう……』


 すると白馬はポケットからスマホを取り出す。


『小説を読んでみるのはどうかな? すごい小説が今、載ってるのだよ』


 それがカミマツと、デジマスとの出会いだった。

 由梨恵はその世界にどっぷりとハマった。

 気づけばセリフを口に出して、暗唱するまでになっていた。


『由梨恵は声がきれいだね。声優に向いてるかも』


 白馬は出版業界に携わっていたので、そういう知識に明るかった。

 由梨恵は初めて、アニメのことを知り、そして……


『じゃあ私、声優になる!』


 ラノベもアニメになると、兄から教わった。


 なら早晩、このデジマスという作品は、アニメになるだろう。


 そのとき、主人公に声を当てるのは、自分だ。

 由梨恵は特に、主人公のリョウに感情移入していた。


 彼に、魂を吹き込むんだ! そう決意した由梨恵は、家を飛び出した。


 社長令嬢としての立場を捨て、裕福な生活よりも、夢を選んだのである。

 こうして、声優・駒ヶ根由梨恵は誕生したのだった。




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― 新着の感想 ―
[一言] 婚約者って中学生と三十のおっさんじゃ、 いっそ捕まれ
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