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1話 幼馴染に告って振られた

新連載です!よろしくお願いします!




 それは高校二年生になったばかりの、ある春の日。


「み、みちる……! ぼ、僕とつきあってください!」


「は? あり得ないから」


 ……放課後の教室。

 僕は【大桑おおくわみちる】を呼び出して告白した。


 彼女とは幼馴染みだ。

 家が近くで、小さな頃からよく遊んでいた。


 みちるは容姿端麗で、何より、とても優しい。


 なぜなら、小さな頃から僕の作る【お話】を、面白い面白いと言って褒めてくれたからだ。


 運動もダメ、スポーツもダメ、ちびで根暗な僕は……小さい頃から妄想ばかりしていた。


 そんな僕の稚拙な冒険活劇を、唯一聞いて、面白いと褒めてくれたのが……みちるだった。


「用件はそれだけ? じゃ、アタシ忙しいから」


 みちるはスマホを取り出す。


「はぁん♡ 今日も更新されてる~【デジタルマスターズ】」


 デジタルマスターズ。

 略して、デジマス。


 それは今ちまたで大流行している、ウェブ小説だ。


「あ、あのさみちる……そんなの後で良いじゃん。もうちょっとさ……話そうよ」


「はぁ!? そんなのって何よ! デジマスの最新話が更新されたのよ! 読むに決まってるでしょ!?」


 おもくっそキレ散らかされた。

 酷い……。

 こっちは一大決心して、告白したって言うのに……。


 落ち込んでいる僕をよそに、みちるは【デジマス】を真剣な表情で読んでいる。


 スマホカバーにはデジマスの主人公【リョウ】の、デフォルメされたステッカーが張られていた。


 みちるみたいな今時のJKが、そんなのスマホにつけてオタク臭いとバカにされる……ことはない。


 なぜならデジマスは、めっちゃくちゃ大流行している作品だからだ。


 デジタルマスターズ。略してデジマス。

 近未来を舞台にしたSF作品だ。


 原作はウェブ小説で、今もネット小説をアップロードできる小説サイト【小説家? なろうぜ!】で連載されている。


 連載当時から凄まじい人気があり、書籍化、アニメ化、そして先日映画化されて、興行収入が500億円突破した……と【編集さん】から聞いた。


「は~……デジマス最新話、ちょー良かった~……」


「えへへ……ありがとう」


 やっぱり、リアルな感想を言ってもらえるとうれしいな。


「はぁ? きっしょ。なにキモい顔で笑ってるのよ。不細工が、止めてよね、不気味だから」


 一転して、みちるが不愉快そうに顔をしかめる。


 あ、あれ……?

 なんで……?


「はぁー……良いお話だった。帰って余韻に浸ろーっと。バイバイ」


「あ、え、え、えっと……ま、待ってよ……!」


「なに? アタシ一秒でも速く家に帰って、今日更新されたデジマスの感想動画アップロードしなきゃなんですけど?」


 みちるはネット上で動画を配信している、いわゆる【動画配信者】というやつだ。


【Our TUBE】というサイトで主に顔出し配信している。

 チャンネル登録者数が5万人もいる。Twitterのフォロワーも5000人だと。


「あの……だからさ……その……告白に対する返事なんだけど、もうちょっと……その……考えてくれない?」


 あまりにも、返事が早すぎた。

 もう少し、僕からの告白に対して、真剣に考えて欲しかった。 


「は? なんでそんな無駄なこと考えなきゃいけないのよ。あんたみたいな無価値な人間からの告白に」


「む、無価値って……そんなこと、ないでしょ」


「価値0よ、あんたなんて。デジマスの作者と比べたら月とすっぽんも良いところよ」


「え……?」


 ミチルからの返事に、僕は困惑する。


「あ、あの……みちる? デジマスの作者と比べたらって……どういうこと?」


「言葉通りの意味よ。あんたみたいな陰キャで、モテない、さえない、どうしようもないクソ男と、デジマスみたいな神作品を生み出す作者の【カミマツ】様とじゃ……人間としての価値がダイヤモンドとゴキブリくらい離れてるわよ


「いや、待って待って……え? ミチル、気付いてなかったの?」


「? なによ」


 僕は……驚き、困惑しながら言う。


「だから……僕が【デジマス】の作者【カミマツ】だってことを」


 僕の名前は上松あげまつ勇太。


 名字の読み方を変えて、【カミマツ】という名前でアカウントを取って、デジタルマスターズを投稿している。


「はぁ~~~~~~~~~? 嘘つくんじゃないわよ」


「う、嘘じゃないよ! ホントだよ……!」


 フンッ、とみちるはバカに仕切った様子で鼻を鳴らす。


「あり得ないわよ」

「いやほんとなんだってば! え、知らなかったの!?」


 嘘だ……。

 てっきり、ミチルは知っているものとばかり思っていた。


 だって、だってさ……。

 僕の前で、ずっと【デジマス】の感想を言ってきてたんだぜ?


 あのキャラが良かった、あの展開は神だったって……!


 てっきり、作者が僕だと知っていて、褒めてくれてると思っていたのに……。


「証拠は?」

「こ、これ見てよ!」


 僕はバッグからノートパソコンを取り出す。


 画面にはワードファイルが開かれており、さっき更新されたばかりの、デジマス最新話の原稿がある。


「ウェブに載ってるモノ、コピペしただけでしょ?」

「いや違うんだって! こっちがオリジナルの原稿なの!」


「あーもううっざいなぁ~……嘘までついてアタシの気が引きたいわけ。そんな小道具まで用意しちゃってさ。正直……ほんとキモい」


「ちがう……ちがうんだってば! 僕が本当にカミマツなんだって……! デジマスは僕の作品なんだよ!」


「あーもう! うっざい!」


 バシッ……! とミチルが僕の手を払う。

 その拍子に、ノートパソコンが地面に落ちて、大きな音を立てる。


「あんたがカミマツ様? 冗談キツいわよ。あんたみたいな陰キャのクズが、大ベストセラー作家になれるわけないじゃない」


「……酷い、酷すぎる……なんでそこまで言われなきゃいけないんだよぉ……」


「あったりまえでしょ。アタシの大好きなカミマツ様をバカにしたんだから」


「別に……バカにしてないし……僕が本当に作者だし……」


「も~~~! しつっこい! カミマツ様はね、きっともっとイケメンで頭の良い人なの!」


 よくもまあ、見たことのないくせに、そこまで断定して言えるもんだよ……


「とにかく! アタシあんたがカミマツ様と同一人物なんて信じませんから。じゃあねクソ陰キャ」


 壊れかけたノートパソコンと、僕だけが残される。


 脳裏に、ありし日のみちるの言葉がフラッシュバックする。


『ゆうたのさくひん、とってもおもしろい!』


 作品が出版され、大ヒットするまで……辛く長い道のりだった。


 でもいつだって支えてくれたのは、あの日投げかけてくれた彼女の言葉だった。


 みちるが、幼馴染みが褒めてくれたから、頑張れたんだ。


 あんなつたない作品、面白いわけがない。

 きっと彼女は僕を励ますために、そんなふうに言ってくれたんだ。


 ……そう思っていた。けど、違うんだ。


「みちるが見ていたのは、カミマツの作品であって……僕の書いたお話じゃないんだね……」


 壊れかけのノートパソコンを胸に抱いて、その場にへたり込む。


「……うぐ……ぐす……うぇえええ……」


 僕はみっともなく泣いてしまった。


【※読者の皆様へ 大切なお願いがあります】


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― 新着の感想 ―
本物のカミマツ様だと信じて貰いたいなら他にいくらでも方法はあった気が……。 SNSのアカウント画面を見せるなり目の前で更新してみせるなり何なりと
いろいろ厳しいことも言ったかもしれませんが、実はこの作品が幼馴染ざまぁにハマったきっかけなんです ブームは去ってしまいましたが他の作品も宝物です
[良い点] この頃はちゃんとざまぁ系として書いていたこと [気になる点] この頃のみちるとその後が別人に見えること [一言] 途中から書籍版のような性格になりましたが、この性格最悪のみちるがざまぁされ…
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