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結局カフェオレはくれなかった。
思いのほか短い尺の彼女の話を聞きながら赤と白のストローで、レモネードをすする。
話を要約すると、こうだ。
彼女には、人と人とを引き離す能力があるらしい。
どうやらパラレルワールドなるものが存在していて、そこに片方の人間を導く。そして、期限になったら元に戻す。そうすることで、事実上の引き離す、が完了する、ということだ。
パラレル、ということだけあって現実そっくりなことが起こるらしい。そしてその世界線にいる間、依頼人の指定した人間は、依頼人のことを忘れる。パラレルワールドの中にいる人たちも、依頼人を存在しないものとして扱うからなおさら。
「基本的に、引き離す期間は私が決める。依頼人と話した後でね。」
「依頼人の条件とかって?」
「私のことが見える人間、以上」
「ん?」
「ん?」
頭に大きなはてなを浮かべる彼女。
えっ、見えない人間なんているのか?
思わず首を傾ける。どこも透けてなんていないし、360度、どこからどう見ても人間だ。見ては、いないが。
「あなたは、普通の人からは見えないってことですか?」
「そうだよ」
ということは、え、じゃあ
「見える人間の共通点は?」
もしかして僕は、
「分からん」
普通じゃない、
「見える人は何人いるの?」
ということ、
「分からん」
なのでは?
「見えない人って「分かりませーん!」」
そんなの分かるわけないだろう。という顔で自信満々の笑みを浮かべている。
「何で分からないんだよ!魔法使えるくせに!」
半ばやけになって、言葉を投げ捨てる。
「そんなの、専門外だからに決まってるじゃん」
何でそっちが拗ねてんだ。