◇◇
「で、なんで僕をここに招いたんですか??」
早くこの疲労に終止符を打ちたいと思い、本題に入った僕。
「よくぞ聞いてくれたね!!君!ここでアルバイトしない!?!」
ちゅどーんと爆弾を落とした彼女に、冷静に対応しようとするあまり、
「ここ の定義はなんですか?」
そこじゃないだろ!僕!という質問をしてしまった。
「あーーもうめんどくさい!私の仕事、手伝わない!?」
めんどくさいのはどっちだ。
仕事内容を知らないアルバイトを、二つ返事で了承するわけもない、それどころか
「お断りします」
「えーっ!せめて内容を聞いてからにしてよ!!」
この人と働くなんて、僕へのメリット-100なのに、内容?内容ってなんだ、だいたい、、、、?
何だこの音。
ビュオオオッ
「私はね」
テントの中に、中に風が吹く。外からじゃない風。さっきまでの彼女とは違うこの空気感。なんだ、、なんなんだ、これ、
「魔法使いなの」
ヒュウッ
一瞬にして風がおさまる、と同時にさっきの彼女はいない。
「ど!働く気になった!?ねぇ!!ねぇ!!」
整理しきれない僕の思考に畳み掛ける、この女。
深呼吸で冷静な僕を取り戻す、なんてことができるわけもなく、
「いや、あの、、え??」
なんだよ今の、は?そんなの、あり??
「ごめんこめん、びっくりさせたね」
眉を八の字に下げる羽乃紅音。
その顔があまりにも申し訳なさそうで、
「いや、大丈夫です、けど、、」
「ほほ、ほんと??」
自分からやっておいて、何でそんなにびびってるのか、、
「魔法って、?」
うん、いや、信じたいわけじゃない。けど多分信じざるをえない。
おそらく、彼女の意思で風が吹いた。それも、テントの中 だけ。