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淡空リミット  作者: 夜霞 ナツメ
5/11

◇◇

その日の帰り道、土手を歩いていると、傾斜に生えた雑草の上に、ぽつんと小さなテントが張ってあるのが目に入った。

そのテントはサーカスのような柄で、色はミントグリーンとピンク。2.3人入れそうな大きさ。

僕の経験上、こんなテントは写真でも見たことがない。海外物?

それに、こんな傾斜にテントを構えるような人も知らない。

第1、今は冬だ。コートを着て、マフラーまでしてるっていうのに、、、冬にテント、何故?

思考を巡らせているうちに、中から人が出てきた。1人は20歳くらいの女性、もう1人は中学生くらいの男の子。

男の子は複雑な表情で、女性にお礼を言っている。

全く状況が掴めないが、なぜか無性に、見てはいけないものを見てしまった感覚に陥った。

男の子が去っていくのを見て、なぜか無性に、僕もこの場から去らなければ行けない気がした。

しかし、彼女の方が1枚上手だったようだ。

「ちょっと〜!君!」

僕は君という名前ではないから、スルーすることにする。

「君だよ!ねぇ!顔が良くて黒髪短髪の!!」

無理だった。案外しつこかった。

「、僕ですか?」

「そうそう!君!ねぇ、テント入っていきな!」

頭大丈夫か?この人。、、人?

「や、あの」

「いいから!ほら!!」

こんな勧誘を受けたのは初めてだ。

そして、幸か不幸か、今日は予定が何も無い。

そしてそして、全く悪い人には見えない。

どちらかといえば騙される方だと思う。

、、って、いやいやいや冷静になれ、どう考えてもおかしいだろこの状況。

普通に何かあったらどうする?犯罪者だったら?習っただろ、知らない人について行かないって。

情報量がキャパオーバーな僕の頭に、ふと、ほんとにふと、ひとつの考えが浮かんだ。


いや、でも、、、待てよ、


「おーーーい!」


僕なら逃げるだろう。昨日までの、いつもの、僕なら。

日常は普通に楽しい。でも普通なんだ、普通の楽しさだ。だって僕が普通なんだから。でも、だったら、


『少しくらい危ない橋を渡っても、結構上手くいっちゃうんじゃ、ないか。そうじゃなかったとして、それはそれで、普通じゃなくなれるんじゃ、ないか。』


そんな心に呼応するように、スタスタと彼女へ向かう足。


「よしよし!やっとその気になったか!」


いわずもがな、僕はこの決断に後悔することになる。


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