樺太上陸-2
夜中の戦闘で俺たちは装備を失った。
海岸線の近くの陣地もかなり荒れてしまった。
怪我人が100人ほど出たが幸いにも死者がいなかった。
通信障害の原因は分からないが謎の生物を撃破してからだったものだから俺の私見としてはあれはその生物が関わっていると見て間違い無いだろう。
撃破したはずの生物もどきの死体は見つからなかった。
青色の液体が地面を染めてはいるが肉片らしきものが見えないのだ。
本当に不気味で俺の夢の中に出てきそうだよ。
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「CVL-2より総司令部へ、昨夜の通信障害から回復し、現在被害情報を収集中です。
負傷者134名を収容優先度の高い順にヘリで搬送しています。
状況が分かり次第連絡します。」
「総司令よりCVL-2へ、了解。
周辺海域には味方艦艇と無人哨戒機が活動している。
安心して任務を行うことを願う。」
「了解。」
最高司令官である僕にとってこれはかなりの重荷だ。
地球にいれば僕は大学一年生になっていたかもしれないのに、今こうして55万人の命を請け負っている責任が両肩に重くのしかかっている。
責任の重さ、この重さとひどく向き合うことになった今、望郷の念というものが思い出される。
しかし、そんな気持ちに耽ることさえこの環境は甘くは無かった。
ひっきりなしに判断しなければならないことが襲ってくるのだ。
無人機のオペレーターからの報告では秋田の方から大規模な船団が向かってきているらしい。
対内諜報機関の予測ではこれは九州にいた最高権力者の援軍として派遣されているようだ。
敵さんもあれだけの被害を受けながらよくやるなと思っている。
しかし同時にこれは絶滅戦争になっていくのではないかと心配もしている。
安芸基地では昨日の状況を解明するために対外諜報機関が過去の戦闘記録、交信記録を調査して同様の事実がないかを調べている。
今のところ結果は出ていないが、僕としては原因が究明されることを切に願っている。
隊員たちの安全が確認できないというのは人命を預かる身として送り込みたくなくなるからだ。
この世界に来てから一年、樺太という北の大地での出来事が世界を変えることになるとはこの時誰も考えていなかった。
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