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大破炎上

 今日は4月1日、九州での火山噴火により、未だに四国全域で作戦機の発着が出来なくなっている。

衛星画像では相変わらず噴火地点から東側一帯に噴煙が掛かり、偵察が不可能になっている。

その為、今までの作戦業務は与那国基地に移り、一本しかない滑走路で今までの業務をしている為に24時間大都市空港のような有様になっていた。

それだけでなく3週間前の襲撃を受けて哨戒任務の強化、AWACSの常時空中待機等が命令されていることから臨時でP-8A等が追加され、基地はそれに付随した任務も入り大忙しとなっていた。

そして人員が限られている為に隊員達の疲労が溜まっている。


 そして事故は起こった。

任務を終え着陸したP-8が滑走路上で直前に滑走路脇で脱輪したE-767と衝突。

P-8は左翼でE-767の胴体を掠めた後、主翼を切断した。

両機ともにエンジンは作動中であり、衝突した時に脱落した為にまき散らされた燃料に引火した。

瞬く間に周囲は火炎地獄となり、その報は指令室にただちにもたらされた。


「こちら管制塔です。

P-8が炎上しています。」

「了解。

消防隊は向かっているか。」

「消防隊にも出動要請は既にしています。」

「そっちは地上にいる機体を早く安全な場所まで誘導してくれ。」

「了解。」


僕は急に慌ただしくなった指令室で命令を出すことになった。

スマホの画面を見ると今の所死者はいないようだ。


 消防隊が現場に到着し、消火活動と救助活動が開始されると衝撃的な報告がなされた。


「こちら消防隊です。

もう一機炎上しています。

現在機体番号は・・・HWA3-0002YGです。」

「了解。」


管制の方に繋ぎなおし別の命令をする


「こちら指令室、すぐに機体番号HWA3-0002YGの確認をしろ。」

「了解。」


そして少しすると返信が帰ってきた。


「こちら管制塔。

HWA3-0002YGは事故機の前に着陸したE-767です。」

「了解。

おそらくこの事故は少なくともこの2機が関わっているということだ。」


僕は再び無線の周波数を変え、消防隊につなぐ。


「こちら指令室。

先程の機体はE-767だ。

これは単独事故ではない。

直ぐに乗員の救出を始めてくれ。

まだ全員生きている。」

「了解。」


燃え盛る炎の中、消防隊は必死に避難路を作ろうと決死の消火活動を続けていた。

同じ頃、P-8Aのコックピットでは気を失っていた操縦士2人が意識を取り戻した。

彼らをまず襲ったのは強烈な煙だった。

そして僅かに見える窓ガラスの先には近づいた地面が見えていた。


「ここは・・・ゲホッゲホ。

おい!大丈夫か。」


私の左側には頭から血を流してうなだれている同僚がいた。


「おい!、起きろ!、起きてくれ!」


私は泣きそうだった。

ずっと好きだった人が死ぬなんて。

とても認められることではなかった。

私は彼を必死に助けようとしたが、コックピットには煙が充満していて本能的な危険を感じていた。

私は蜘蛛の巣状に割れた窓を開けようと必死だった。

しかし窓はとても熱い。

私は脇にかけていたジャケットを脱ぎ、それを当てて何とか開けようと試みる。

しかし窓は開かない。

それで半分諦めかけていた所、手が二本添えられた。

それは頭から血を流している彼だった。

彼は座席に固定されながらも無理やりでも手を伸ばしてくれたのだ。

私は涙を流しながら彼を固定しているベルトを取り、必死の共同作業で開けるのに成功する。

いざ開けて外に脱出した私たちは足に強烈な痛みを抱えながらも必死に機体から離れようとした。

それに気が付いた消防服を着た人たちが私を抱えてくれたところで私は力尽き、意識を失った。


 事故から一時間が経過したが機体は炎上を続けている。

決死の救助によって全員を救出することが出来たが、今問題となっているのは今降りることが出来なくて空中待機しているP-8AやE-767、KC-46Aをどうするかと言うことだった。

戦闘機に関しては全て空母に受け入れて貰ったが、大型であるこれらの機体は空母には降ろせない。

今すぐに四国まで行ってもらうことを考えたがそんなことをすればエンジンが止まって墜落する危険性が高い。

かといってそのまま待機させれば燃料が尽きた機体から墜落していくことになる。

滑走路が一本しかない為に事態はより一層深刻さを増していた。

しかし、エンジンが止まっても何とか降ろせる場所は四国以外になかった。

僕は通信を安芸基地につないで確認する。


「こちら与那国基地指令室、現在事故により空軍基地が閉鎖されているためそっちに降ろしたい。

可能か。」

「こちら安芸基地、滑走路の整備は出来ていますが、火山灰が継続的に降っています。

機体が心配ですが受け入れ自体は大丈夫ですか。」

「了解。

何とか無事に着陸できるならそれで良い。

受け入れ準備頼む。」

「了解。」


「こちら与那国基地、上空待機中の大型機に告ぐ。

安芸基に向かってくれ。

燃料が不足している機は報告してほしい。」

「こちらAWACS-4です。

燃料が足りません。」

「了解。」

「すぐにこちらで受け入れ準備を行う。」


今日の海は荒れているからそんなところに着水させたら彼らは助からない。

僕は考えた。


「佐藤殿、アレスティングシステムを使うのはどうですか。」

「それはどういうものだ?」

「特殊な素材で路面を整備することで航空機の原則を助けるものです。」

「分かった。

効果はどれ位ある。」

「かなりあると思います。」

「分かった。」


僕は滑走路の路面をアレスティングシステムに換装した。

消防隊は一時撤退しE-767の着陸を待つ。

これで停止できなければ更に悲劇的な結果となる。

僕は手に汗を握る思いで準備が完了したことを管制塔に連絡する。


30分後、上空待機していたE-767が着陸態勢に入る。

機体は強風を受け流しながら着地をした。

その直後、削れた路面がまるで雨が降っているときに上げる水飛沫を上げるように散っていった。

少しすると耐えられなくなった前脚が折れ、機種を滑走路に擦り付けながら停止した。

ぎりぎり残骸の手前で停止し、大惨事には繋がらなかった。

E-767の乗員は脱出し、与那国基地の大惨事はこれで幕を下ろした。

後は安芸基地に向かった機体が何とか降りてくれるのを待つばかりである。




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