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救出作戦開始

 P-8の乗員はいきなり哨戒任務から攻撃任務へと変わったことに驚いていた。

情報保護の観点から、攻撃目標の指示をGPS座標で受け取っただけだ。

突然の作戦命令の内容は

『直ちに大陸の海岸を南下して広州沖に向かい、指定した目標にAGM-84H SLAMを発射しろ。』

という物だった。

既に長時間の哨戒任務を行っていたため、燃料が不足していると報告すると、


「空中給油機を発進させているから任務完了後すぐに会合して給油を受けて。」


と軽く返されてしまった。

全く何で難しい空中給油をやんなきゃいけないだろうと僕は悪態をついた。

向こうの軽い感じのオペレーターにも殺意を覚えながら私は高度を上げ、自動操縦に設定して広州沖に向かった。


 広州沖のインディペンデンス級は大急ぎで突入部隊の編成を終え、準備に取り掛かっていた。

乗艦している臨検チームの隊員数が少ない為に周囲500kmにいる2隻の艦から人員を借りることになった。

一番最初の部隊の投入は後1時間で発艦することになった。

私の艦は援助してくれるヘリに給油をし、任務に投入するいわば中継地としての任務をすることになっている。

真昼間に突入することになってやりやすいが、それは敵も同じである為にむしろ分が悪い。

私はこの艦の艦長として強襲する隊員達の身を案じるのだった。


 今回の救出作戦で要になるのはスピードだ。

これはいかなる作戦でも重要になるが、今回は特にそうだ。

人数が少ない為、時間がかかると敵に包囲されて撃破される可能性が高い。

言い換えれば時間がかかればかかるほど生存率が下がる。

これは拘束されている諜報員にも言える。

実際今この瞬間も拷問を受けて苦しんでいるかもしれない。

僕は彼らの身を切実に心配していた。


 一時間半後、P-8Aは目標上空に到達し、3発のミサイルを発射した。

これが狼煙が作戦開始の狼煙であり、敵をひるませる第一撃でもある。

隊員を乗せたヘリも完全に武装し、隊員を吐き出すタイミングを今か今かと待っていた。

3発のミサイルは低空をロケットモーターを唸らせながら飛行し、トップアタックで目標に到達した。

そしてその数分後にヘリは屋敷の上空にホバリングをし、隊員達を吐き出した。


「こちらAチーム、これより救出を開始する。」

「了解。

必ず生きて帰れ。」


そして隊員達は発信機の情報を頼りに地下の牢獄の入り口を探しながら進んでいった。

第一撃によって屋敷の一部は崩落しており、私兵が目立った反撃をしてこない。

俺はその様子に驚きながら進んでいた。

そして廊下の角に差し掛かった時、私兵を捕まえることが出来た為、尋問することにした。


「地下の牢屋はどこだ?」

「下、下、」


奴は涙目になりながら左手で右側の奥にある壁を指さした。


「そうか。」


と俺は言うと彼の喉を掻き切った。

鮮血があふれ出る。

奴は少しして息絶えた。

俺たちは心の中でほんの一瞬だけ黙禱して足早に目標に向かって行った。

そして壁に偽装された扉を僅かに開けて中にスタングレネードを投げ入れ再び閉じた。

すると壁越しに僅かではあるがスタングレネードの強烈な音に混じった人間の叫び声が聞こえた。

そして警戒しながら進んでいくと私兵数人と何か横に広くて豪華な服を着た親父が伸びていた。

そいつらを念のため射殺し、牢獄を少し捜索するとまとめて牢に突っ込まれている目標3人を発見した。


「救出しに来た。

これで全員か。」

「ああ、これで全員だ。」

「けがは無いか。」

「大丈夫だ。」


と短いやり取りを終えると俺たちは急いで合流ポイントに向かうことにした。


「こちらA1チーム、目標を確保した。

回収を願う。」

「了解。

降下地点まで向かってくれ。」

「了解。」


撤退中のわずかな時間に無線を入れる。

途中突撃してくる召使や私兵を射殺して血祭を上げながら降下地点である中庭に向かった。

ヘリからは援護なのか、周辺に弾丸をばら撒いており、一部は廃墟と化していた。

そんな状況の中でも果敢に挑んでくる私兵を射殺しながら俺たちは急いでヘリに乗り込んだ。

そして上昇すると操縦士たちはお礼だと言わんばかりに増槽を脱落させて落下地点に使い切っていないロケット弾を盛大にばら撒いた。

俺はこれを見ながら実に気性が荒い奴らだと感心していた。

目標は俺たちに


「助けてくれてありがとうございます。」

「まあ、いいさ。

助かって良かったな。」

「はい!」


彼から純粋な涙と笑顔を見た。

ここまで晴れ晴れとしたものは見たことが無かった。

俺も生死の境を経験すればああなるのかななんて心の中で少し考えていた。

ヘリは多少荒かったが、インディペンデンス級の甲板に戻ってきた。

結局他の臨検隊が要らなかったが備えあれば患いなしということで無駄にはならなかっただろう。

彼らはこの艦に乗るとそのまま与那国基地へと帰って行った。

彼らの顔が完全に割れてマークされてしまう以上、同じ場所ではやっていけない。

彼らはおそらく帰還後再訓練を受けるだろう。

とにもかくにっも一人の負傷者も出さずに作戦を完遂出来て良かったと俺は感じている。




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