表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

30/43

回想 ハワイでの交渉

 武力を依頼通りに見せつけたらこの始末だ。

それにあのバカ戦闘員も騒いでいるんだからたちが悪い。


「あの村を狙えって言ったのはそこのバカ戦闘員とそこの男だろうが!」


そう言ってもやはり罵倒は終わらない。

塗料が剥げるとさびやすくなるからやめてくれないかなと思いながら興奮が落ち着くのを待った。


「お前らがインチキだからだろうが!」


あのバカが何か意味の分からないことを言った。


「私たちがインチキなんて言いましたか?」

「ふざけるな!

あの厄災を倒したというのがインチキだろうが!」

「まあ、聞けば全部そっちの決めつけじゃないですか。」

「ふざけんな!」


だめだ。

これは頭に完全に血が上っている。

どうしようかな。

流石にこれ以上銛でつつかれるのは良いもんじゃないし。

一回空砲でも撃つか。


「CIC、空砲用意、村の方角に向けろ。」

「了解。」


指示を出すと砲塔が村の方角を向いた。


「発射」


『バン!』


という発砲音と直後に薬莢が排出されて海に落下する。

これによって周りで騒いでいた連中が黙った。


「随分と身勝手だな。

安心しろ。今のは音だけだ。

全くそこの馬鹿とそこの男、私たちをインチキ野郎と決めつけた上、村を狙えって言ったのはお前らだし流石に人魚の皆さんも怒りの矛先を間違えてませんかね。

それといい加減に船から離れてくれませんかね。

次はあなた方を撃ちますよ。」

「・・・」

「それに私たちは話し合いに来たんだ。

代表の奴を呼んできてくれないか。」

「・・・」


すると無言であの男が近づいてきた。

「私がこの村の長だ。

我が民が・・大変失礼をした。」

「どうも、それでは交渉を始めましょうか。

あとあの戦闘員がやったことは戦争物ですよ。

今回は許しますが次はどうなるか分かっていますよね。

それと今回の件は全て組織に報告済みです。」


男の顔が一気に青ざめた。

「我々は単純に交易を求めて来たわけで、いきなり来ることになるので迷惑料を込みで融通をするつもりでいましたが、今回の件で発生した物的被害だけでもそれを大きく上回るだけの損失がありますし、尚且つあなた方の戦闘員による名誉棄損の件もあります。

賠償は相当高くなりますね。」

「それで私たちはどんな償いをすれば良いのですか。」

「そうですね。

全ての島の割譲とかですかね。

それくらいですかね。」

「それは困る!

どうしたら良いのか。」

「それでしたら民にしっかりと事実を知らせてください。

それと我々と交易して下さい。

そして我々の駐留を認めることです。

これが呑めるのでしたら島の割譲は無しにしましょう。」

「最後に民には手を出さないでくれ。」

「勿論、村の人には手を出しませんよ。

ただし、我々を襲うようなことがあれば拘束し、こちらで罰を決めます。

拘束した時はそちらに通知しますよ。」


そして始めの交渉は終わった。

私たちは周辺警戒を厳にしながら夜を過ごした。

遠巻きに我々を眺める人魚は発見したが、放置をすることにした。


次の日、あのバカ戦闘員が縛られながら連れてこられていた。

そして交渉が始まった。


「これは何ですか。」

「昨日の件のお詫びです。

私はこの交渉を最後に村の長をやめて責任を取ります。

それとこの戦闘員の引き渡しもせめてもの償いです。」

「まず、昨日皆さんの間で何があったのか教えてください。」

「昨日の夜、村の人間全員で会議を行いました。

まず私は今回のことの顛末を事実通りすべて報告しました。

それで今回の件の責任は始めの攻撃の指示をしたこの戦闘員と私にあるとなりました。

私たちはその責任を取り、少しでも許しを請う為にここに来ました。」

「分かりました。

それで望みは何ですか。」

「村の人間の安全と村の存続です。」

「それはそちらが今後手を出さない限り確約するつもりでしたので・・誠意を示して頂けるので我々は復興を支援します。」

「ありがとうございます!

最後に・・彼女は私の妹です。

どうか乱暴はしないようにお願いします。」

「分かりました。

私たちを襲わない限り丁重に扱います。」


それで交渉は終わった。

まさか本当に兄と妹だったとは。


その後、あのバカの縄をほどいて念の為、手錠をかけて車いすに乗せた。

彼女からは昨日の覇気は失われているものの、絶望に混ざった敵意を向けられている。

しかし、この艦で収容するのはちょっときつい。

私はLPD-1に連絡をする。


「こちらDDG-1、LPD-1応答を願います。」

「こちらLPD-1、どうしました?」

「こっちで身柄を収容している人魚がいるんだけどそっちに移送して良いか。」

「分かった。時間をくれ。受け入れ準備をする。」

「了解。

準備が出来たら教えてくれ。

MH-60で送る。」


私は無線での交信を終えると彼女に取り敢えず食事を渡した。

艦内はバリアフリーとは程遠いからとても人魚が車いすで上り下りするのは至難の業だ。

だから食事もここで渡す。

私はプレートに乗った寿司を食べる。

やっぱりサーモンがうまい!

シャリがとても海の上で寿司を食べるというのは中々良い。

バカもこっちをにらみながら手をつけ始める。

そしてだんだんと食べる速度が上がり、全部完食した。


食事を食べ終わった頃、LPD-1から受け入れ準備が整ったとの連絡が入った。。

私はバカからプレートを返してもらうと横で出発準備をしているヘリに馬鹿と一緒に乗り込んだ。

しかし車いすを入れるのは結構大変だ。

そして空を飛んで震えているバカを送り届けると私の二日目の仕事は終わった







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ