基地への大規模攻撃
6月18日未明、警備している隊員から基地周辺に人が集まっているとの報告を受ける。
それは同時に収容所からもだった。
それは次第に距離を詰め、周辺にある家屋に隠れていたそれは遂に引き金を引くこととなる。
ドーン!
という重い音を発して巡回していた隊員を狙った。
しかしそれは火縄銃の性能故か外れることとなった。
既に無線機を通して現状を共有していた第4小隊はすぐさま戦闘を開始した。
基地内には暴走した車両が進入するのを防ぐために建物が互いに隙間を埋めるように配置されている。
隊員達はそれを使って建物の影に隠れながらM4を発砲して応戦していた。
基地中では警報が鳴り響き、基地に所属する隊員達は武装を身に着け始めていたが、武装はすぐに身に着けられるわけではない為、起き掛けの隊員達は装着するのに数分の時間を要していた。
その数分の間に基地の全周に張り巡らされたフェンスの一部が破壊され、敵の侵入を許す事態となっていた。
又それは収容所も一緒であった。
そこはポチの指示で魔物たちが応戦しているようだったが、彼らでは歯が立たない何かがいた。
それは力比べでと言うわけではない。ただそれに攻撃をしようとすると意識を失ってしまうのだ。
そしてここでも収容所の周りにある一重のフェンスは破られ、敵集団の侵入を許そうとしていた。
僕は突然の襲撃で驚いたが最悪なのが、今日は執務室ではなく、自室にいるということだ。
本部の地下には一番安全な作戦室があり、そこから指揮を行うことが出来るのだが、僕にはそんな環境は与えられていなかった。
僕はすぐに着替えると出入口の横にある武器の保管庫から武器を取る。
同時に受け取った無線機からは各隊員から発せられる芳しくない戦況が伝えられる。
「D35に敵。応援を要請する。」
「こっちからも侵入してくる。
持ち堪えられない。
撤退する。」
とかいう風になっている。
僕は本部の方に向かいつつM4を構えて物陰に隠れながら進んでいく。
相手がどこにいるか。
どんな武器を持っているかが正確に分からない中では敵に姿を晒したら即行で死ぬと思って行動している。
幸い敵に見つかることなく本部の正面玄関にこれた僕は横にあるインターフォンで進入許可を取る。
「佐藤健だ。
進入許可を求める。」
「分かりました。
身分証明書カードをリーダーに通して指紋認証を行ってください。」
僕はそう言われたので緊張している手に無理やり言うことを聞かせてカードをリーダーに通した後、指紋を認証する部分に指を当てた。
僕にはその時間がとても長く感じられた。
そして指を当てて扉のロックが解除される音がした直後、何かが明滅した気がした。
そして考える間もなく『バババ!』という音が響いた。
僕はこの瞬間、撃たれたと思ったが、僕の感覚はまだ残り続けていた。
そして一瞬放心状態となったが、僕は一目散に扉を開けて建物の中に入った。
地下にある作戦室に向かう廊下を走ると突き当りの至るところで銃を構えた隊員が銃口をこっちに向けていた。
僕は再び作戦室に向かうエレベーターの前で身分証明書と生体認証を受けて乗り込んだ。
エレベーターはすぐに地下にある作戦室に着き、扉が開く。
「佐藤最高司令官、武器をこちらに置いて下さい。」
「分かりました。」
僕は内心とても焦っていて扉が開いた瞬間、走り出したかったけれど、僕は急いで手に持っていたM4とズボンのポケットに押し込んでいたM9、弾薬が入ったリュックサックをすぐに脱いで彼に渡した。
その後彼が金属探知機で検査をしてそれが終わってやっと僕は解放された。
「状況は?」
「現在侵入してきた集団は各個撃破しています。
しかし報告によれば弾丸を受けても攻撃を続けてくるそうで対処が遅れています。」
「ゾンビということか。」
「そういうことです。」
僕はやっぱりファンタジーの世界にやって来てしまったと思ってしまった。
今も隊員達が必死になって対処に当たっている。
正面にある大型のディスプレイには基地の全体マップと部隊の展開状況が乗っている。
これによると僕達は初期の混乱を落ち着かせて対処に当たることが出来ていることが分かるが、高火力を持ったのが未だに不足している感じだった。
ハンヴィーやJLTVはやっと支援に回ることが出来ているようだった。
5.56mm弾では効果が薄いので、M2の12.7mm弾による面制圧射撃を実施するのが効果的と判断したらしい。
そんな中、当の犯人は焦りを覚えていた。
「くそ、なんで一世一代の大魔法を使っているのにここが片付かないんだ。
それにあいつらまるでこっちのことが完全に見えているかのように行動してやがる。
どうなっているんだ。」
基地のすぐ近くの民家に隠れている犯人は悪態をついていた。
奴は生まれ持った夜行動物の目で周囲を観察している。
そしてそこら中からマズルフラッシュが発生していてそして使役した近隣住人が破れていく姿を只見ているしかなかった。
無理やり近くにいる人間を全て使役してまで面子を保つために制圧したかったところだが彼にはもう力が残っていない。後半日はここから動ける体力が残っていないのだ。
収容所では魔物たちが全く役に立たず、収容所内から必死の銃撃を加えて閉じこもることしかできない。
元々警備で入っていた第三歩兵小隊第10歩兵分隊20名は完全に孤立してしまった。
そして救助を今か今かと待ち望みながら彼らは暗視装置を着けて賢明に射撃を続けていた。
一方、こっちで使役した住人を使う犯人は笑みを浮かべていた。
基地の状況が好転してきて希望が見え始めて来た頃、収容所での状況が佐藤の耳に入ってきた。そして佐藤はすぐに動ける第三ヘリコプター分隊4機を収容所に向かわせた。
しばらくして第三ヘリコプター分隊は収容所の上空に到達した。
赤外線ゴーグル越しに見えるのは警備しているはずの魔物が一匹も動いていないという物だ。
僕はこの風景をディスプレイ越しに見て唖然としてしまった。
そしてゾンビは建物内に侵入しているようで隊員達が何とかそこら中に射撃をして敵を寄せ付けないように奮戦していることが分かった。
そしてヘリは屋上に着地するとガンナーが隊員達に気を付けながら目に見える範囲の敵に対して制圧射撃を敢行する。
ババババババ、ババババババ
と。
そして半分が乗ったことを確認するとすぐに飛び立ち次のヘリがすぐに着陸し、残りを回収する。
機内では点呼が行われ、全員がいることが確認された。
そして後から離陸した2機のヘリに搭載されているハイドラ70ロケットが火を噴き、建物ごと、敵を全滅させた。
そして回収作戦を完了した彼らは帰路に就いた。
隊員を回収したへりが帰路に就く中、武装も万全な一機のヘリが残党を探していた。
彼は川沿いを走って逃げる何者かを発見した。
それは普段人がいないはずの収容所から来たことは明白であり、彼女は司令部に攻撃許可を取った。
「こちらC4、収容所方面から不審な人間が動いています。
攻撃許可を求めます。」
「了解。
スタンバイ。」
僕は無線の内容を聞いてすぐに担当しているオペレーターに〇で合図を送った。
オペレーターは意を介したのか
「許可します。」
と言った。
そのヘリのガンナーをしている彼は攻撃許可を受けてすぐにM2で射撃を始めた。
そしてそれで肉片になったことを確認して彼らは帰路に就いた。
作戦時間凡そ1時間で収容所襲撃の犯人はあっけなくミンチになるという形の不遇な死に方をして終わった。
基地の方でも制圧が完了し、こっちでも血と肉が辺り一面に散らかる中、勝利を宣言した。
そして僕も僕で戦闘が終わって胸を撫で下ろしていた。




