黄色い怪物
同時に書いていたので文章をスリムにできませんでした( ;∀;)
あれからかなり時間が経ったのだろうか。
僕は目を覚ました。
彼女は昨日と同じように武器システムのディスプレイと睨めっこしていた。
彼女は僕が起きたのに気が付いたのか優しく
「おはよう~。」
と声をかけてくれた。
僕はそれに同じ言葉で返した。
その時に気が付いたことがある。
転生する前はこれで良かったが、ここはとても危険な世界であることを。
僕はその後すぐに寝落ちしたことを謝った。
彼女は口調を変えて軽く叱ったが、言葉からどうやら許してくれたようだ。
僕は彼女に町を探した方が良いのでは無いかと言った。
僕の考えにあったのは食糧である。
人間は食糧が無ければ生きていけないのは当然であるが今僕達には安定した食料の供給源が無い。
彼女は僕の考えに賛同してくれて彼女は僕にこう言った。
「町を探すためにはこの地域のことを知る必要がある。
一度来た道を戻ろう。」
と。
僕は
「了解。」
と言って野原になっているこの場所でUターンをした後、来た道を戻っていった。
タイヤ痕を頼りに走って行くと次第に千切れた死体を見るようになっていった。
僕はこの景色に吐き気を覚えながら進んでいくと、召喚された場所に戻ってきた。
そこには死体が散乱し、もはや人であったことが分からない屍となり果てていた。
それだけでもグロテスクとしか言えない感じだったが、それにオオカミのような獣が貪り付いていた。
ここまで来ると言葉に言い表せない。
僕は本格的に吐き気を催して、吐きそうになった。
彼女は上についているM2を発砲して、獣を追い払うと
「死体の様子を確認しよう。」
と言ってきた。
僕は
「了...解。」
と何とか返事をすると彼女に合わせて車から降りた。
車から降りて肉片に纏わりついた布を確認する。
何とか人であったことを確認できる死体を見ると、それは甲冑のような物を纏っていた。
甲冑を着けていない者も着物のような布を纏っていた。
強烈な死臭がする中、僕はそれを必死に我慢しながら彼女が撤退の命令を出すのを待った。
彼女が
「撤退しよう。
それと武器は回収しよう。
後ろに積み込んでくれ。」
と言った。
僕は嬉しかったのか
「了解。」
と大きな声で返事をした。
そして槍と弓のような物を回収し、車に乗り込んだ。
そしてそのまま来た道をまた戻っていった。
現場から離れると彼女と僕の会話が始まった。
「さっきの感じから、文化は前世界の日本に似ている気がする。
どう思うか。」
「僕もそう思いました。
ということは日常着はやはり着物ですかね。」
「同感だ。」
「さっきの地点まで戻ったら衣装を召喚しましょうか。」
「それで頼む。
さっきまで気にしていなかったんだが、お前は前世界の時の恰好のままだったな。」
「そういえばそうでした。後で適当なのに着替えます。」
「分かった。」
そんな感じで会話をしている間に僕たちはさっきの場所に戻って来た。
僕は『百科事典』で日本の文化について調べる。
高校で文系だった為、日本史を多少学習していた。
そうでなくとも着物は日本人の文化であり、ほとんどの人が知っている。
だが基本的に着物で注目を浴びるのはある程度身分が高い人たちが身につけていた物だ。
だから僕は庶民の衣装についてはあまり知らなかった。
調べてみると小袖という物を着ていたことが分かった。
それを『物品召喚用』を開いて検索してみる。
かなりの件数が引っ掛かったが僕は適当に男性用女性用それぞれ一着ずつカートに入れる。
彼女は僕に後ろから
「召喚するならついでにあなたの戦闘服も召喚した方が良い。」
「分かりました。しかしどうすれば良いですか?」
「本当はアメリカ軍の迷彩服が良いが、陸上自衛隊の迷彩服3型にした方が良いだろう。
迷彩柄がそっちの方が馴染みやすい。」
「分かりました。」
そして僕は検索で『迷彩服3型』と検索をした。
そうすると『迷彩服3型、陸上自衛隊セット』と書かれた物が出て来た。
せっとの内容を見ると帽子、上下の迷彩服、戦闘靴の3点が含まれていた。
「それで良い。
さっさと召喚して着替えろ。」
と言った。
僕が召喚しようとすると最後の確認画面が表示された。
そこでは使用者に合わせたサイズ、S, M, L、又は160㎝, 170㎝, 180cmと言う感じでサイズを細かく指定できるようになっていた。
女性用小袖以外は使用者を全て『佐藤健』に設定して召喚する。
重量は1㎏となっていた。
そしてそれを彼女に渡して僕は着替えようと思ったが
着替える場所がなかった。
彼女はそれを察したのか
「別に構わない。そこで着替えてろ。」
「分かりました。あなたはどうするのですか?」
「上から羽織るだけだ。
問題はない。」
僕は戸惑いがあったが何が起こるか分からない外で着替えるよりはましだと思って僕は急いで着替えた。
足首まで完全に固定されるブーツを最後に履いた後、僕は彼女に尋ねた。
「どうやって町を見つけます?」
「そうだな、この森の中をただ走り回っても仕方がない。...
そうだ。
ドローンを使って上空から探そう。」
「分かりました。
しかし、どれを召喚すれば良いですか。
僕はそう言う知識が全くないので。」
「私が指示する。」
「了解。」
僕は彼女にそう言うとスマホを開いて『物体召喚用』を開く。
今気が付いたことだが、このスマホからバッテリーのインディケーターが無くなっている。
僕はドローンと検索すると様々なドローン製品がリストとして出て来た。
「9番目にあるDJI Matrice200シリーズにしてくれ。」
「分かりました。」
彼女の要望に俺はそう答える。
「それで210 RTK V2を選んでくれ。それとTB55バッテリー2個を忘れずに。」
「分かりました。」
僕は彼女の要望に淡々と答えていく。
「搭載するカメラだが、Zenmuse Z30とZenmuse XT2にしてくれ。」
「分かりました。しかしスペルが分からないので教えてくれませんか。」
「分かった。こっちでやる。」
すると突然検索欄の所に勝手に文字が打たれ、瞬く間にその二つを選択されカートに入った。
僕はどういうことか良く分からなかったが取り敢えず選べたから良かっただろう。
召喚する最終段階で確認画面がいつも通り表示される。
どうやら合計9kgのようだ。今回は割引とかそんなのが一切ないらしい。
しかし、残り1200t以上あるのにこんな心配をするのは杞憂だろう。
そしてデカいケースが召喚される。
彼女は召喚されるとすぐに色々といじり始めた。
僕には彼女が何をしようとしているのか見当がつかない。
彼女がドローンを組み立てて飛ばし始めると僕は彼女に気になったことを言った。
「あと126人召喚出来るからした方が良いと思います。」
「...好きにしろ。」
「好きにしろというのは召喚しても良いということですか?」
僕は口調が変わった彼女に恐る恐る聞く。
「そのままの意味だ。」
彼女はそう言った。
僕はそれを肯定と捉え一人を召喚する。
すると目の前に一人の美少女が現れた。
「初めまして!
あたいはジュリア・エマ・レーガン、これからよろしくね健くん❤️」
いきなり現れることには慣れたがすごく馴れ馴れしい挨拶と金髪でプロポージョンが完璧な容姿と相まって誘惑されそうになる。
横では彼女がドローンをいじりながらバツの悪そうな顔をしている。
僕は波風を立てないように上手いこと挨拶をする。
「これからよろしくお願いします。」
僕は頭を下げる。
なんか横から睨まれている気がする。
僕は浮気がバレた男のように背中がゾッとした。
「そんな硬い挨拶は良いよー。
それよりも何か仕事をくれるの?
それとも…」
ジュリアは少し腰を曲げて軍服の上の方のボタンを外し、その後に腕を組む。
横から再び強烈な視線が向けられているが僕は何とか知らん顔をした。
「私達の警護をして欲しい。
銃はすぐに渡す。」
「了解。」
横からの強烈な視線を何とか和らげる為にわざと固く、そして素っ気なく言った。
彼女は真面目に敬礼をしたのが不思議だったがまあ変わってくれることがわかって安心した。
ジュリアがずっとあんな感じだったら優子に何回視線で刺し殺されるか分からなかった。
僕は『物体召喚用』を選択して召喚履歴からM9ベレッタのセットを召喚する。
目の前に現れたそれを彼女は拾う。
「これで良いか?」
「問題ありません。」
彼女は僕の問いかけに真面目に答える。
横にいる優子からの視線はほとんど感じない。
僕はそれだけでも一安心だった。
彼女が見回りを始めた頃、優子が町がある可能性があると言った。
僕は彼女が持っているコントローラーのディスプレイを覗くと赤映像に映っている稜線に沿って赤くなっている場所があることに気が付いた。
「これはこの赤い場所は何ですか。」
「これは赤外線カメラからの映像で赤いのは熱源よ。」
「つまり?」
「そこで火とか熱が出るものが使われている可能性があるということよ。
使うのと言えば私の常識では人間しかいないわよ。」
「分かりました。そっちに向かいますか。」
「そうしたいが少し待て、ドローンを回収しなくては。」
「分かりました。」
そして少ししてドローンが近くに着陸した。
勿論操縦していたのは彼女だ。
彼女はドローンの電源を切って収納している。
「そういえば誰が運転するの?」
「どうします?」
「私はめんどくさいから健、お願い。」
「僕は昨日初めて運転したばっかりで全然分かりませんよ。」
「今武器を使えないのはあんただけよ。だからせめて運転ぐらい出来るようになりなさい。」
「分かりました…」
僕は反論の余地なく運転することが決まってしまった。
そして僕はため息をつきながら扉を開け、エンジンをかけた。
気温が低くない為、すぐにrunの位置にしても問題なく始動した。
ドローンを回収し終わった優子が左後部ドアからドローンのケースを突っ込んで乗り込んだ。
ジュリアは彼女が乗り込んだのを確認すると右前部ドアを開けて助手席に座った。
車の画面に表示されている方位と車を召喚するついでに召喚した小型のアナログ方位磁針と比べてみる。
それとアナログの方位磁針のさす方向が一致した。
ドローンが熱源を探知した方位は大体225だったのでその方向に向けて車を走らせた。
斜面が多くあり、木が生い茂るところを進んでいった。
シートベルトを着けていないと天井に頭をぶつけそうになるくらい車体が大きく動揺することも多々ある。
今まで親とドライブしていた時が如何に快適であったかを痛感した、
尾根を何回も越えていくと森の端に辿り着いた。
ここまで来るまでに40分かかった。
どうしてそんなにかかったかというと木を回避しながら運転していて尚且つ運転に圧倒的に不慣れだからだ。
森の端からは塀に囲まれたぼろい木造家屋が見える。
塀に囲まれているので中の様子は詳しくはここから見えないが…。
優子はドローンで偵察すると言って、車を停めると降車し、ドローンを飛ばし始めた。
僕は双眼鏡を召喚し車の窓越しから町を見る。
町と言っても塀に囲まれた木造家屋が2列に並んでいるだけなので村という方が適切かもしれない。
双眼鏡を覗くと塀の外で会話をしている人と人らしきものがはっきりと視認出来た。
人らしきものというのは二足歩行をしているところは変わらないのだが、尻のあたりから白い尻尾が生え、そして大きな耳のような物が頭の上に出ていた。
これはファンタジーに良く出てくる獣人でいいのかなと思いつつ僕はそれとその周りをぼんやりと見ていた。
それと一緒に会話してる方の髪は黒かった。この地にいる人間の髪が黒いのであれば怪しまれることなく容易に潜入出来るかもしれない。
僕はそう思った。
10分ぐらい考えることもやめてボーっとしていただろうか。
優子が再び乗車した。
彼女は僕にタブレットを渡し、さっきの空撮映像を見せてくれた。
「空撮で分かったことで一番衝撃的なのはこの世界には人間に似た違う知的生命体がいるということよ。
後、人間の髪は全員黒かったわね。
それと方位315に道があって人がまあまあ通っているから潜入するならそこから入りましょう。」
「了解。
早速潜入しますか。」
「そうしましょうと言いたいところだけど、準備が結構必要だから言ったものを用意して。」
「まず拳銃1丁と弾丸よ。マガジンも多い方が良いわね。それと無線機よ。」
「無線機は3つで良いですか。」
「それでいいんだけど次いでにマイクとイヤホンを召喚して。」
「分かりました。」
僕はAN/PRC-163《無線機》を3台カートに入れる。
そして有線の咽喉マイクと骨伝導イヤホンをカートに入れる。
でもここで問題があった。
優子とジュリアは髪がかかるのでマイクとイヤホンが隠れるが、僕は髪が短いので見えてしまうかもしれない。
僕はジュリアに相談してみる。
「僕がマイクとイヤホンをするとそれが見えてしまうと思うんです。
何か解決する方法はありませんかね。」
「そうだなー、布を頭に巻くのはどうかな。」
「空撮映像にも同じような格好をした人達がいたので問題ないと思います。」
ジュリアが言ったことを優子が初めてフォローした。
「それに健が巻いているのを見たら結構かわいいかも。」
ジュリアが言った瞬間に優子の凍り付いた視線が彼女に向けられて修羅場の雰囲気になった。
彼女はそんなこともお構いなしだが僕は結構来ていた。
僕は笑いながらなんとかスルーしようとするがやっぱり心臓をえぐられるような感じがする。
「それと…他になにかあります?」
「ない。」
彼女の凍った声が脳内で反芻する。
やはり彼女が怒ったときは怖い。
僕はそれらを召喚すると事前に用意していた小袖を上から羽織った。
下は長いのでブーツと迷彩のズボンは歩き方に気を付ければ見えないだろう。
気づけば彼女も同じように着替えていた。そして無線機を持ち、イヤホンとマイクを無線機に接続した。
そして彼女は僕にそれを渡してくれた。
「どうぞ。」
「ありがとうございます。」
「胸のポケットに突っ込んでおけ。」
「分かりました。」
「それと少しお前に教えることがある。」
「なんでしょうか。」
「拳銃の使用方法だ。
村に入る以上万が一にも身の危険に直面することもあるだろう。
その時は武器を戸惑いなく使えるかが生死を分ける。
だから基本的な銃の扱い方も覚えてほしい。」
「分かりました。」
彼女の表情は今までで一番真剣だ。
僕もその雰囲気を感じ取り、緊張が走った。
彼女は僕がさっき同時に召喚したM9ベレッタを僕に渡す。
銃の下に何も入っていないので多分中はカラなんだろう。
「銃は引き金を引けば銃弾が発射される。
だから絶対に人に向けるな。
グリップの上に安全装置がある。
発砲する時になったらそれを押し上げて引き金を引け。
それと衝撃が強いから絶対に両手で握って撃て。」
「分かりました。
銃は人に決して向けない。
発砲時は安全装置を解除してから引き金を引く。
両手で発砲。
以上ですね。」
「そうだ。
そしてそれはお前が持て。」
彼女は僕が持っていた拳銃を取り、マガジンを入れて再び僕に渡した。
「安全装置がここにかけてあるから撃つ時はこのレバーを上げてから撃て。」
「了解。」
弾丸も入って人を殺せる《やれる》拳銃を持って僕はすごくその重みに恐ろしくなった。
そして僕たちは小袖を着用し、容姿をそろえる為に優子も頭巾をつけた。
色は共に白だが、彼女はやはり際立って美しい。
そんなことを片隅で考えていると彼女が無線機を装着した。
僕もマイクとイヤホンを装着する。
「健、ジュリア、潜入前の最終チェックだ。
発進する場合は左側の上から二個目のボタンを押してくれ。
その下にある一番下のボタンは無線が通じなくなった時の予備周波数がセットされている。
それとジュリア、車載無線機も同じ周波数にセットしてほしい。
チャンネル1が167M㎐、チャンネル2が443MHzだ。
何か質問はあるか。」
「…………………」
「無線のチェックに入る。
健、何か言ってくれ。」
「了解。ア、ア、テステス、…ア、ア、テステス」
僕は返事をした後に二つの周波数の確認をする。
そして優子とジュリアも確認を終え、車載無線機の確認も終えた。
「では潜入するぞ。方位315にある道の人通りが今の時間帯あるからそっちから行こう。
それとジュリアは留守番だ。
緊急時は村に突っ込んで私たちを回収してもらう。」
「分かりました。」
ジュリアは不満そうだ。
明るい雰囲気が完全に死んでいる。
「ジュリアさん、よろしくお願いします。」
僕はそう彼女に言うと彼女は
「了解。」
と大きな声で言った。
そして僕と優子は森から出て、方位315に向かって歩き始めた。
5分位歩くと道にさっき人が歩いていた道に辿り着いた。
僕は人目を気にしながら小袖の中に隠している無線機を使って連絡をする。
「こちら健、異常なし。」
「こちらジュリア、了解。」
優子は手元で親指を立てている。しっかりと聞こえているようだ。
村の入り口には門番のような槍を持った人が立っていたが僕たちは特に止められることなく進入出来た。
恰好は同じであるはずだがなぜか周りはこっちを見ている。
ブーツの特徴的な足跡を残さないようにすり足をしているのになんでだろうと思った。
でも僕たちは何食わぬ顔で昨日襲ってきた人間が所持していた硬貨の価値を確かめる為、道脇で売っている駄菓子を買うことにした。
「すいません。これいくらですか。」
「銅貨1枚よ。
お二人さんなら二本買うかい。
それなら銅貨2枚だよ。」
「二本でお願いします。
これが代金です。」
「丁度受け取りました。
好きなの二本とって行ってくれ。」
「ありがとうございます。」
僕と優子は1本ずつ取って口に運んでみる。
特に見た感じ普通に食べられそうだ。
だが味はやっぱり薄い。
現代日本のスーパーとかで売っているのと比べるとレベルが格段に違う。
それは置いといてまず第一に言語が普通に通じたことが分かった。
これで第一関門は突破という感じだ。
僕は優子と怪しまれない為に軽く会話をする。
「健、この団子、おいしいと思わないかしら?」
「おいしいぞ。でもやっぱり君の作る物の方が圧倒的に上だ。」
「そんなおだてちゃって~~(デレデレ)」
今日の設定はカップルなのかと思って困惑したがこれは潜入の為に必要なことだと割り切って、僕は彼女のペースに合わせる。
そうこうしていると優子が突然僕の腕に抱き付いた。
優子の柔らかい胸の感触が伝わってきて普通ならうれしいが、その直後にイヤホンから聞こえた声で異常事態だと気が付いた。
彼女は少しかすれた声で
「正体不明のに囲まれた。」
と短く無線に言ったのだ。
僕も周りを見ると確かにこっちのほうに向かって来ているのが数人いた。
その内一番近づいていたのが僕に話しかけてきた。
「よお、そこの坊主。
お前の横にいるのはお前の嫁か?」
体格がでかいのがにやつきながらそう言ってくる。
「そうだが。」
僕は普通に答えるが、かなりやばいのは理解できた。
「お前には勿体ない美人で綺麗な嫁だな。
お前貧しそうだし。
おい、そこの女。
そんな男と一緒にいないで我が将軍様の側室として仕えろ。
将軍様のお役に立てるんだ。
感謝しろ。」
「いや…です。」
彼女は震えた声で相手に聞こえるように言った。
「今なんと言った!
将軍様に仕えている私に逆らうとは。
そのまま手放してくれるなら旦那にはお金をやろうと思っていたがそんなのは無しだ!!
旦那は殺してお前は将軍様の性奴隷として飼ってやる。
最近将軍様の性奴隷が死んで不満がたまっているから丁度良い。」
「…」
僕と彼女は無言でいるが無線では色々とやり取りをしていた。
「戦闘は避けられないわね。
敵の素性を知らずに戦いたくなかったけれど仕方がない。」
「どうします?」
「ジュリアは救援を頼む。
健は私の合図と同時に発砲して。」
「了解。」
僕たちはこの会話をカップルが互いに抱き合い、僕は胸のあたりを心苦しくなって抑えているふりをしながらPTTボタンを押している。
そしてそうしている間にも周りに仲間らしき侍のような容姿をした人がどんどん集まってきている。
「もうそろそろお別れは良いだろう。
おい、お前。
覚悟は出来ているだろうな!」
正面の男は剣に手をかけ、抜きながらそう言った。
「やれ。」
彼女が無線でボソッと言った。
僕はこれが合図だと感じ、胸を押さえているふりをしていた手でそのまま小袖の中に入れていた拳銃を取り出した。
安全レバーを解除し、発砲する。
『バンッ!!』
『バンッ!!』
という音と共に両手にジーンと来る衝撃がする。
音の大きさで耳がおかしくなりそうな気がした。
初弾は正面の男の胸を撃ち抜き、男はそのまま倒れた。
彼女も同じく発砲していて彼女の弾はおそらく頭に当たったのだろう。
奴の頭から血が噴き出していた。
かなりグロテスクな光景で僕は唖然としてしまう。
その男が地面に倒れるまでのほんの少しの間静寂が訪れるが、奴の仲間が
「やれー!」
と大声を上げた。
優子は拳銃を連射して次々と倒していくが、僕は焦ってしまい、正確に撃てない。
それでも必死に敵に銃口を向け、数発で当てて倒していく。
でも元々距離が近かったこともあり、かなり接近を許してしまった。
僕のもう目の前まで来た奴に刺されそうになった。
もうだめかと思った時、目の前に人が現れ、奴を刺した。
それは優子だった。
彼女は既に迷彩服姿に戻っていた。
彼女は僕に
「ぼーっとすると死ぬぞ!」
と言った。
僕はそれで我に返った。
すると後ろの方から一気に走り込んでくる気配がした。
僕は後ろを向き、発砲する。
撃ったのはそのまま奴の頭に当たり、目の前に倒れ込んだ。
そうこうしている内に
猛スピードでジュリアが運転しているJLTVが進入し、僕達の目の前で停車した。
僕は急いで扉を開け、車に乗り込んだ。
「早く乗って。」
ジュリアはそう言った。
彼女は扉を開けて援護射撃をしていた。
僕も扉を半開きの状態にして数発発砲した。
乾いた銃声音が響き、どれも当たらなかったが相手をひるませるには十分だった。
その間に優子も乗り
「出して!!」
と大声で叫んだ。
ジュリアはすぐに扉を閉め、車を走らせた。
正面にいた死にぞこないの一人が車のボンネットに切りかかったが当然切れるはずもなく、そのまま車体に激突した後、下に消えていった。
そして平地であったはずなのに少し車体が右に傾いた。
僕たちはジュリアの運転でそのまま森に突っ込んで敵をまいた。
そして緊張した雰囲気の車内が少し落ち着いた。
「いやまさかこんなことになるとは思いませんでした。」
「私もその点はそうだな。
健、今日のあなたは危なすぎだ。
後少しで命を落とすところだったぞ。」
「すいません。」
「そんなに怒らなくたって良いじゃない。
結局助かればそれで結果オーライよ。」
「そういう問題じゃなくて…」
「いえ、優子さんの言う通りです。
確かに僕はあと一歩間違えば死んでいました。」
僕は本心から彼女に謝る。
続けて僕はあるお願いをすることにした。
「僕に戦い方を教えて下さい。」
僕は彼女にそう言った。
彼女の顔は見えないのでどう思っているのか分からないが彼女は
「分かったわ。」
と言った。
ジュリアがしばらく運転をし、さっきの原っぱに戻ってきた。
周囲に脅威がないことを優子が確認して僕たちは降りる。
車に損傷はなかったものの、フロントには血がベットリと付き、タイヤは泥だらけになり、一部血のどす黒い色が混じっていた。
「ジュリア、これ洗い流した方が良くない?」
「そうね、でもそんなことで物を召喚するならしなくて良いわ。
どうせ雨とは降れば自然に落ちるでしょう。」
「じゃあそのままにしておきます。
優子さん、僕に戦い方を教えてください。」
「分かったわ。
まずその拳銃を私に貸して。」
「分かりました。」
僕が拳銃を彼女に渡すと彼女はそれを少しいじって再び僕に返した。
「まずこの拳銃の安全チェックについて話すわね。私の動きをまねて。」
「分かりました。」
「はじめに安全装置が掛かっているかを確認して。」
「はい、かかっています。」
「次にスライドを後ろに引っ張って。」
「分かりました。」
僕は力を加えてスライドを引っ張る。
「マガジンリリースボタンがグリップの所にあるからそれを押して。」
「分かりました。
これで良いですか?」
僕がボタンを押すと空になった弾倉が落ちて来た。
「その状態でスライドストップを解除して。
スライドロックは左側のスライドの横にある。」
「ありました。」
僕はレバーを思いっ切り押す。
「そのままの状態で引き金を引いて、銃の上にあるのが少し動くからそれを確認して。」
「分かりました。」
僕は引き金を引いてみる。
すると何か動くのがあったので僕は彼女に聞く。
「この指さしたのが動いていれば良いのですか。」
「…そうだ。
次に安全装置を解除して引き金を引いて。」
「分かりました。
こうですか。」
僕は緊張する。
これで弾が入っていれば弾が発射されるからだ。
僕は怖くなりながら引き金を引く。
「次に引き金を押した状態でスライドを引いて。」
「分かりました。」
僕は言われた通りにスライドを引くがさっきと同じくやはり重い。
「異常ないな。最後にその状態で引き金を引いたら終わりだ。
次は射撃練習だ。」
「分かりました。」
「まず安全装置をかけてくれ。
これがマガジンだ。
装填してくれ。」
「はい。」
僕は取り敢えずそれを挿す。
「そしてスライドを引いて安全装置を解除する。」
「向こうに木がある。
それに向かって撃って見てくれ。」
「分かりました。」
僕は狙いを定めて撃つ。
『ッバーン!』
という音が同時に響き渡る。
銃の怖い所は軌跡を追えないことだと思っている。
そして発砲音とほぼ同時に木の少し手前に土煙が上がった。
「少し手前だな。力が入り過ぎて引き金を引く直前に銃が下を向いてしまっているのだろう。
もう一度だ。」
「分かりました。」
僕は再び発砲する。
今度は左にずれた。
また発砲する。
狙った所からは木の破片が飛び散った。
「そうだ。」
「次はそこに連射してみろ。」
「分かりました。」
僕は狙いを再び定めて引き金を連続して引く。
木に当たっているのもあったがかなりが周りの土に当たったようだ。
腕と指が痛い。
弾切れになり、発砲をやめると彼女は
「良くはないな。
だが初めてにしては上出来だ。」
と言った。
「撃ち方と狙い方は分かっただろう。
最後にする安全チェックの手順は。
その前に打ち終わったら安全装置をつけておく癖をつけて置け。」
「分かりました。
安全チェックの手順は安全装置をかけ、スライドを完全に引き、マガジンを落とします。
次にスライドを戻し、引き金を引きます。
えっと…その後安全装置を解除し、引き金を引きます。
最後に引き金を引いた状態でスライドを動かして終わりです。」
「正解よ。
それじゃやって。
そしたら今日は終わりよ。」
「分かりました。」
それから僕たちは500mlのペットボトルを3本召喚し、自衛隊の戦闘糧食Ⅱ型という物を3人前召喚させられた。
優子と僕は食べなれたものだったが、ジュリアは少し不満そうな顔をしていた。
そして僕たちは2回目の夜をこの異世界で過ごすこととなった。
そのころ、村の人々は昼の時に出現した車をこう呼んだ。
黄色い怪物と。
使用者:佐藤健[詳細]
レベル:7[詳細]
次のレベルまであと450(820/1270)Pt[詳細]
召喚可能人数:125/127[詳細]
召喚可能t数:1263.591/1270t[詳細]
召喚者:三島優子[詳細]
ジュリア・エマ・レーガン[詳細]
[履歴]
と出ていた。になっていた。このシステムのことは良く分からないが『履歴』をクリックしてみると、
履歴
5月24日:召喚人:三島優子
召喚物品:JLTV GP
M153 CROWS Ⅱ
M2
12.7mm NATO bullet:110
ブランド無しサバイバルナイフ
ブランド無し着火剤
着火マン
9mm bullet:15
ベレッタM9
殺害:人:73
シルバー級:1
Pt:740
5月25日:召喚人:ジュリア・エマ・レーガン
召喚物品:AN-PRC163 x3
咽喉マイク、イヤホンセット x3
小袖 x3
M9ベレッタ
戦闘糧食Ⅱ型 x3
小袖 x3
殺害:人:8
Pt:80
これからも投稿していきます。