諜報機関
久しぶりに投稿出来ました。
不審火の検分が現場で行われている中、僕達は会議をしている。
ホワイトウルフ、アキル公共事業団の上層部はここを占領する時までに召喚されていたのでほぼ固められている。
別に僕が差別主義だからとかそんなことではない。
単純にアキルの領主に協力する上で必要なことを任せる時にいたからである。
隊員数は一万八千人を超えていて、一大組織としての編成が必要になっていた。
「それでアキル公共事業団、アキル商業団、ホワイトウルフ、そして対外諜報、対内諜報機関にそれぞれ2500、500、10000、2000、400という配分で大丈夫ですか。」
「異議なし。」
「異議なし。」
「異議なし。」
...
という風に会議で人員の配分が決まった。
残りの2500人強は今後の計画で人員の配属は保留であり、いずれ設立されるホワイトウルフ海軍部、又は陸軍部に配属されることになるだろう。
対外諜報機関の役割は既にポチが担ってくれてはいるが彼らは人の中に入り込むことが出来ない。
だから諜報という面では新に人員を派遣する必要があった。
それにポチと意思疎通が出来るのは僕以外にいない。
それも大きなネックになっている。
ポチは今僕の横でグデッとしている。
「やあポチ、そろそろ起きたらどうだ。」
「疲れたんだからゆっくり寝させてくれ。
佐藤殿は外がどんなに暑かったか覚えていないのか。」
本部一階の食堂で僕はポチと一緒に食事を摂っているが彼はお皿に盛られた料理をすぐに平らげてそれからこんな感じになった。
それにお前が遅いからだよと言わんばかりの目でこっちを見てくる。
僕はなにくそと思って食事をつい口に掻き込んでしまった。
せっかくのゆっくりとした食事タイムは急ぐ予定もないのに急ぐという不毛なことをして終了させてしまった。
僕はポチと一緒に歩いて2階にある自分の部屋に戻る。
僕は一応最高司令官である為か部屋は一番広い所をあてがわれている。
それは嬉しいことなのだが30分でも席を外してデスクトップの電源を点ければ大量のメールが届いている。
メールの一文一文は短いから楽じゃん、単に数が多いだけじゃんと思うかもしれないが僕が一番嫌いなのは添付されている書類なのである。
我々を攻撃した犯罪者の調書に装備の調達依頼、隊員がコップを落として軽いやけどを負ったとかいうどうでも良い物が中に紛れ込んでいるのだから本当に嫌になる。
全く3週間前まで高校生だった僕にこんなにたくさん仕事をさせるとかマジで鬼畜かという程湧いてくる。
それに隊舎にある自分の部屋にはほとんど帰れず空き部屋と化している。
僕は今の生活がかなりまずいと思っていた。
大分話が脱線してしまったがこれが僕の生活だ。
今日の午前中の会議で諜報機関が設立されることになった。
僕達は周辺国の情勢を全くと言って良いほど知らない。
高解像度の衛星写真を眺めたところで周辺国の詳しい情勢は分からないのだ。
そして先日基地を襲った犯人はダブ国という国が関与しているということをほのめかす供述をした為設置が急がれた。
次に対内諜報機関の目的は当然ながらアキル領全域にいる敵性勢力の排除である。
これは前領主の残党が起こしているものでこのつい最近では夜中に現領主の暗殺未遂を起こした。
故にこのような感じで新たな機関を設けて対処することになった。
そして対外諜報機関の長官は一ノ瀬一葉、対内情報機関の長官は東郷秀樹となった。
選考理由は結構簡単で顔立ちが現地民とかなり似通っているからである。
この2機関は非公式である為、万が一の時にホワイトウルフや他の傘下組織との繋がりを隠すためにこのようにいつでもそっぽを向けるようにしているのだ。
僕はポチとストライカー装甲車M1126に乗ってアキル城に行った。
ストライカー装甲車M1126はアメリカ陸軍が採用している装甲車で兵員を9名乗せることが出来る。
扉も後ろの大きな扉から乗ることが出来るため、図体の大きいポチにはぴったりだ。
アキル城では昨日の話の続きをすることにすることにしている。
「佐藤隊員、今日はどうされました。
それにこれはこれはポチではないですか!」
「今日はジュリア司令の代わりに昨日のお話をしたく参上しました。」
ここにいるのはヌルセ村にいた村人だけだったので全員が僕の素性を知っている。
でも万が一にも間諜がいた場合に備えて僕が一番偉いことを伏せるようにして貰っている。
今日はポチがいたこともあって周りにいる家臣(元村人)達もポチの頭をナデナデして楽しんでいた。
今こうして見ているとはじめの頃の恐怖は何だったのかと思ってしまう。
ポチは僕に
「苦しゅうない。
だがそろそろ止めてほしいなあ。」
と思念で伝えたので僕は
「それでは司令からのお話を始めますか。」
と言って僕はポチの横に座った。
天守閣の畳張りの40畳ほどのスペースは少しばかり窮屈に感じていた。
多分ポチというデカくて白いのがいるからだろう。
「この前の犯罪者の収容施設についてですが、アキル川上流の土地を購入しそこに建設する許可を頂けますか。」
「購入ではなく譲渡で大丈夫ですよ。」
「いえいえ、こちらとしてはアキル領主との対等な関係を保ちたいと考えております。
ですので適正な対価を仰っていただければと思います。」
「...それでは金をいくらかお納めいただければと思います。
あなた方の金塊は品質が大変よろしいですから。」
「ありがとうございます。
これで交渉成立ですね。」
「昨日のお話の続きはこれで終わりです。
それ以外のことは昨日の通りで大丈夫ですか。」
僕は確認をした。
向こうには拒否権がほぼ無いので余程愚かな奴でないと嫌とは言わないだろう。
自慢ではないがこっちの能力は圧倒的だ。
僕は
「本日はわざわざお時間を頂きありがとうございました。」
と深々とお辞儀をして僕は襖から出て城内の広場に停めてあるストライカー装甲車に向かう。
「ポチ、収容施設の警備を任せて良いか。」
「まあご主人様の為だ。
断るわけがなかろう。」
ポチは快諾してくれた。僕が購入した土地はアキル城からほぼ真北に6km程行ったところにある平野の主担だ。そこは川沿いだが三方が山である為、耕作地となっていない。
だから僕はここを選択した。
これでアキルの中心部や河口付近の耕作地を潰したら今度こそ大きな抵抗にあってしまうう。
隊員が今のところ怪我で済んでいるがこれ以上襲撃等が悪化したら隊員が死亡する危険さえ伴う。
僕は隊員を失ってしまうのが一番嫌であるが又、t数が減ってしまうことも危惧しているからである。
これで昨日からの話し合いも終わったことだし対外諜報機関の準備に取り掛かることになった。
スマホで一ノ瀬一葉から届いているメールの中身を確認する。
内容は次のようなものだった。
60人が商人に扮して周辺国に潜入し、商売網を広げていくことで情報獲得に努める。
商材は主にここで栽培されている野菜を使う。
佐藤殿には運搬用のリアカーと無線機、スマートフォン、そして護身用のP365拳銃を召喚していただきたい。
というものであった。
人員はここには記載されていないが、取り敢えず基地に帰ったら要求の品を基地の空いている車庫で召喚しようと思っている。
基地に戻ると一ノ瀬一葉をスマホで呼び出し、要求に沿った品を召喚していく。
リアカーというか荷車というかそういうものはこれから召喚する木材で作らなくてはいけない。
現代において完全に木製の物なんてほとんど使われていないからそういう製品は無いのだ。
製作は整備部隊がやってくれる。
次に服であるが、これは適当に召喚して終わりだ。
後は周りと雰囲気を合わせるために汚せば完了だ。
最後に拳銃と無線機とスマホだが、これはホワイトウルフが採用していない物を選ばなければならない。
スマホは一時間検討した結果、衛星電話としても使えるThuraya X5-Touchとし、拳銃は一ノ瀬一葉の提案通りP365、無線機については導入見送りとした。
そして追加したのは太陽光パネルを搭載したモバイルバッテリーだ。
これで電源を確保する為、連絡手段は万全だろう。
諜報作戦に従事する隊員はリアカーの中に後日完成する荷車の中に隠しながら商売を始めていくことになるだろう。
僕は彼らが無事に帰ってくることを願いながら一ノ瀬と別れて本部にある自室へと戻ることにした。
ちなみに従事する隊員とは今度顔合わせすることになった。
隊員の名前などは彼女と私ぐらいしか知ることは無いようになってい。
僕は自分の口から発せられる言葉で隊員が葬り去られる可能性があることを胸に刻んだ。