いきなり異世界!
一話目です。
202X年5月下旬、僕、佐藤健は最後の定期テストを受けて帰途についていた。
僕は学校から電車で一時間半かかる場所に住んでいるため、近くに住んでいる同級生はほとんどいない。
だから途中で一緒に乗っていた友達も降りてしまうため、電車を降りるときはいつも一人だ。
僕にとってはいつも通りの一日、でも何か違和感を感じていた。
電車を降りて家まで歩いていると、なぜか家に辿り着かない。
僕は定期テストで疲れているのかと思って、スマホのマップを見ようとするがスマホはなぜか動かない。
それで僕は近くにある公園の地図を見ようと思って公園を探してみるが、周りを見渡そうとした時に一瞬視界が曇った。
視界が戻ると、周りには木々が生い茂っていた。
僕の家の近くには市民の森があったが、そことは似て非なる物だった。
この時僕はこれが人生を根本から変える世界の誰もが生涯出会うことのない事件に巻き込まれたのだった。
でも僕はこのことを知る由もなかった。
僕はこの奇妙な視界の原因を考えていた。
その時はただ疲れているだけかと思ったがさすがにおかしいと思い始めた。
僕はもう一度スマホを見る。
今回は右脇のボタンを押した瞬間にホーム画面が表示されたが、その時に感じた安堵は一瞬で吹き飛んだ。
圏外になっていたのだ。
これでは地図を見ることも出来ない。
俺はこの良く分からない場所で漠然とした焦燥感に苛まれていた。
そしてそれを刺激するかのように今度はスマホの画面が勝手に変わり、そのには
『佐藤健様、あなたは選ばれました。』
という文字が最初に表示された。
僕はこれによって混乱してしまった。
混乱していたが、何とか状況を知りたい一心で彼はスマホを開ける。
しかし、圏外であることは変わらず、連絡先も友達との思い出の写真も、最近やっていないゲームアプリも全てが消えていた。
この中に見慣れない名前のアプリがあった。
『人間召喚用』
『転生者用行動指針』
『物体召喚用』
『使用者ステータス確認用』
『システム説明書』
『百科事典』
と記名されたものが入っていた。
僕は本当に訳が分からなかった為、興味本位に『人間召喚用』のアプリを開く。
「現在一名召喚することが出来ますが実行しますか。」
スマホの画面にそう表示され、同時にスマホから音が出た。
僕は構わず文字の下にあった
『はい』
という文字をクリックした。
すると目の前に突然一人の緑色の迷彩服を着た若い黒髪の女性が現れた。
僕はそれに驚き、尻餅をついてしまったが、彼女は僕に手を差し出して僕を引き起こしてくれた。
「そんなに驚かないで欲しいな。私は三島優子。今のことに驚くってことはもしかして人を召喚したの始めて?」
彼女は芯のある声で聞いてきた。
僕は無言で頷く。
彼女は
「あなたが置かれている状況を説明した方がいいかしら。」
と言った。
「今の状況が全くも‥って理解でき‥ない。
説明して…ほし‥い。」
僕は何とか声を絞り出してそう言った。
「良いわ、あなたは異世界転生したのよ。」
僕は彼女の荒唐無稽な言葉に絶句してその言葉が頭の中で反芻した。
異世界転生?僕はファンタジーの世界にいるの?嘘だよね?...
僕の脳の中で疑問符が沢山ついた言葉が湧き出て来た。
彼女は僕の混乱を無視して話を進める。
「それであなたが最初に召喚したのが私ってこと。
あなたは転生の時にこの世界の管理者から絶大な力を与えられたわけ。
それ以上のことは私には分からないわ。」
僕は何とか言葉を飲み込んだ。
そして僕は確信した。
僕は異世界転生したのだと。
そしてその時、僕は真っ先に一つの疑問が頭に浮かんだ。
「元の世界に帰ることは出来ないのか。」
「それは無理ね。このことだけは断言できる。」
彼女は無情にもそう答えた。
僕はそれを聞いてどこか心の中で踏ん切りがついたのだと思う。
僕はまず今この瞬間を生きようと周りを観察した。
周辺には木々が生い茂り、近くに何か特徴的な物は何もなかった。
只、木々が生い茂っているだけだった。
周りは十分に明るく、太陽の周りを地球が回っているのと同じ関係なら日没まではまだ十分に時間があるだろう。
そんな感じのことを思いながら遠くを見ていると横にいた彼女が
「拳銃を召喚してくれない?」
と言った。
僕はどうすれば良いか分からなかったが、取り敢えずスマホを出した。
その後どうすれば良いのか分からない僕の様子を見て見かねたのか彼女が声をかけてきた。
「アプリの中に『物体召喚用』て書いてあるアプリを開いて。」
僕はそれをタッチして開いた。
すると某通販サイトのようなページが現れた。
「それでベレッタM9と検索して。」
僕は彼女の言葉通りに『ベレッタM9』と打って検索をかけた。するとかなりの数のリストが出てきたが、一番上にある『おすすめ』をクリックした。
それには『お得なセット販売』と書かれていて、拳銃本体と弾丸15発(マガジン装填の最大数)がセットで丁度1㎏としてカウントされると説明に書いてあった。
「それで良いからすぐ召喚して。」
と言った。
僕はせかされるまま、『カートに入れる』、『召喚』の二つあったボタンの内、『召喚』を選択した。
すると僕の目の前にベレッタM9が現れた。
彼女はそのまますぐにそれを取り、僕の方に銃口を向けた。
僕が死を覚悟した直後、「バーン!!」というけたたましい発砲音が響いた。
死んだと思った。
しかし僕は死んでいなかった。
代わりに僕の後ろには熊のような大型動物が一匹倒れていた。
気が動転していた僕に向かって彼女は
「武器の召喚が間に合ってよかったね。
もう少し遅かったら死んでたよ。」
と言った。
少しして気を取り直し、思ったことがある。
一瞬の遅れが命取りになるのだと。
この時、本当の意味で覚悟を決めた。
彼女は僕に
「これを今日の夕食にしよう。解体するからナイフを出して。」
彼女は僕に言った。
僕はすぐに『サバイバルナイフ』と検索し、適当に刃渡りの長めなナイフを召喚した。
それを召喚するとすぐに彼女はナイフを手に取り、無言で、でも慣れているような手捌きでこの動物を解体していった。
僕は周りにある枯れ木や乾いた落ち葉を一か所に集めはじめた。
その途中で、着火剤、と検索し、着火剤を選ぶ。
でも彼女がどういう考えか分からないから召喚はせず、『カートに入れる』を選択する。
後、着火剤の製品ページの下にあった『おすすめ』の中にある着火マンもカートに入れた。
彼女が大体解体を終えた。
この時、日が傾き始めていた。
彼女は僕が集めて組んでいた枯れ木の一部を取った。
それをナイフで削り槍上にした後、それを解体した肉に刺していった。
「火を点けてくれない?」
「分かった。着火剤と着火マンは召喚しても良いか?」
「カートの中にある奴で良い。
念の為言っておくけど1kg以下の物を召喚する時でも1kgとして換算され、それ以上は重量が四捨五入されるから重量には気を配った方が良い。
詳しくは説明書を読んでくれ。」
「分かりました。」
僕は彼女にそう返事をした。
その会話の間に僕はさっき言ったのをそのまま召喚した。
そしてゲル状の着火剤を木や落ち葉につけて着火マンで点火した。
火は先に落ち葉の方から回り、次第に木も燃え始めた。
彼女はその日の周りに串刺しにした肉をテントの骨組みのように組んで炙っていた。
肉からでた肉汁が滴り落ちるとその度に火の勢いが一瞬上がり、日が大分傾いた頃、彼女が僕に焼いた肉を渡してくれた。
僕はそれを恐る恐る口に運んだ。
彼女は普通にそれにかぶりついている。
僕も熱い持ち手の部分を持ちながらそれを食べた。
香辛料が無いので癖の強い生臭さが口中に広がったが、だが生きる為に必要だということを考えると僕は味と匂いのことを忘れてそれを食べた。
それを食べ終わると彼女が今日泊まる為の場所が必要だと言ってきた。
確かに日没の直前でさっきのこともある。
当然このまま地面に寝たり、ただテントを立てて寝るのは危険であることは言うまでもなかった。
「それなら車とかにしたら良いと思います。」
「それに私も同感だ。それならJLTVを使おう。装甲厚も十分だから基本的には大丈夫だろう。」
「分かりました。」
僕はそう言うと『JLTV』と調べる。そうすると5個検索がヒットした。
「オシュコシュのにしてくれ。」
という言葉を聞いて上から三番目にあったのを選んだ。
「見つけましたけど、どのバージョンのを選ぶのですか。」
「GP(General Purpose)で良い。それを選んだ後にM153 CROWS II とM2ブローニングをオプションで選択してほしい。」
「分かりました。」
僕は知識が無い為、それが何を指しているのか分からなかったが、言われていた物と同じ名前の物を見つけたのでそれを選択した。
召喚する時に『割引が適用されます。』という表示が出た。
最終確認の時、『JLTV GP 6400kg + M153 CROWS II 172kg + M2 38.4kg =6610kg →割引特典(割引、燃料満タン、弾丸装填済み)→6400kg』
と表示された。
さっきまでは表示されなかったのが不思議だがまあそこは気にしないでおこう。
JLTVが僕達の近くに装填されると僕はそれに手を触れた。
今まで触れたことの無い金属の重厚感に僕は驚きを隠せなかった。
彼女は僕の驚きをよそに左後部ドアから車内に乗り込んだ。
僕も車両を一周見た右後部ドアから乗り込んだ。
「これから武器システムの電源を点ける。」
「分かりました。」
僕はただそう言った。
少しした後、彼女が言った。
「運転席に座ってエンジンをかけろ。」
と。
僕はその時並々ならぬ雰囲気を感じたが、車を運転したことが無かった為、点け方が分からなかった。
[エンジンの点け方を教えてくれ。」
「分かった。
私がつけるからその後いざとなったら運転しろ。
アクセルとブレーキだけで運転できる。」
「分かりました。」
そう僕が言い終わると彼女は運転席のフロントパネルの下側にあるレバーをひねってエンジンを始動した。
「ギアの位置は今パーキングになっているが前に行く時はD、後ろに行く時はRにセットしろ。
それとここにパーキングブレーキがある。
動かすときにここを引け、これを引けばブレーキが解除される。」
「分かりました。」
俺はそう答える。
本当に出来るかどうかわからないが、やらなければ死ぬかもしれない。
ただ僕は必死だった。
「何かが来ている。
パーキングブレーキ解除、レバー位置ドライブ、常にブレーキを踏んでおけ。
走れと言ったらとにかく走り続けろ。」
「了解。パーキングブレーキ解除、レバー位置ドライブ、ブレーキを踏みます。
走れの合図で発進します。」
僕は緊張した声でそう言った。
日が大分傾いていて視界が悪くなってきている。
僕は万が一に備えて少しでも前方の景色を覚えておこうとした。
少しして彼女がはしれ!と発した声と車に何かが当たってカン!という音がしたのは同時だった。
僕は無我夢中で木に衝突しないように全神経を集中させて運転した。
バスに似たエンジン音に混じって、車両の外からババババ、ババババババ、というような音が聞こえてくる。
その時の僕は無我夢中だった。
そして途中からバババという音は聞こえなくなった。
しばらくして
「もぅ‥‥‥‥ぃぃ。」
すぐに
「止まれ!
馬鹿野郎!
命令が聞こえないのか!」
という怒鳴り声が脳に響き渡った。
僕はその言葉に我に返り。車を停めた。
止まったところは丁度この森の端にある原っぱだった。
僕は言葉を発することは出来なかった。
少しして日も完全に沈み、街灯も何もないこの場所は本当に真っ暗になった。
僕は彼女に謝罪も兼ねてディスプレイの明かりが顔を照らしているだけの車内で声を
かける。
「さっきは本当にごめんなさい。気が動」
「さっきのことはもう良い。」
「一体何があったのですか。」
「正体不明の人型生物から矢による攻撃を受けた。
こちらは自衛のために上に装備している銃を発砲した。
それに関してはただそれだけだ。
それとスマホの『使用者ステータス確認用』を開いてみろ。」
今の彼女はさっきよりもそっけなかった。
『多分これは許していないな。』と僕は思った。
スマホの『使用者ステータス』を確認すると
使用者:佐藤健[詳細]
レベル:7[詳細]
次のレベルまであと530(740/1270)Pt[詳細]
召喚可能人数:126/127[詳細]
召喚可能t数:1263.598/1270t[詳細]
召喚者:三島優子[詳細]
[履歴]
と出ていた。になっていた。このシステムのことは良く分からないが『履歴』をクリックしてみると、
履歴
5月24日:召喚人:三島優子
召喚物品:JLTV GP
M153 CROWS Ⅱ
M2
12.7mm NATO bullet:110
ブランド無しサバイバルナイフ
ブランド無し着火剤
着火マン
9mm bullet:15
ベレッタM9
殺害:人:73
シルバー級:1
Pt:740
と出ていた。
僕はスマホを閉じると彼女に聞いた。
「これからどうするのですか。」
すると彼女は
「おそらくここで野宿になるだろう。
言おうと思っていたがこれから機関銃に再装填をする。
車の外に出るから手伝ってくれ。」
「分かりました。」
そう僕が返事をすると彼女は車を降りた。
僕も彼女に続いて車を降りると彼女は車両後部にある貨物スペースに来るよう手招きした。
僕は黙ってそれに従った。
「これを全部車内に運んでくれ。その間の警備は私がする。」
「分かりました。」
僕は彼女に言われるまま、20㎏はありそうな鉄製の箱を一個ずつ後部座席に運んで行った。
5個あった内の最後の一個を運ぶ途中で彼女に聞いた。
「これは一体何ですか?」
「M2重機関銃の弾丸だ。
さっきので全部打ち尽くしたから装填が必要なんだ。」
「分かりました。」
僕はただそう答える。
そして僕が車内に戻り、彼女も車内に戻り扉を閉めた。
彼女は後部座席中央にある台に立つと上のハッチを開けて何かし始めた。
「マガジンボックスを取ってくれる?」
彼女はそう言った。
僕は言われた通りに頑張って重い箱を持ち上げて彼女に渡した。
彼女のからはガチャッ、ガチャッという音が響いてくる。
少しして作業が終わったのか彼女はハッチを閉めて再び武器システムのディスプレイの前に座った。
少しして彼女は
「エンジンを消して良い。燃料の無駄だ。」
と言った。
僕は
「分かった。」
と返してスマホのライトを使いながらエンジンをスタートさせた時に使ったレバーを見た。
その時に僕はパーキングブレーキが掛かっていないことに気が付いた。
それにレバーがドライブのままになっていた。
こんな状態だったのに動かずに止まれていたのは本当に幸運だと思った。
僕はその二つをセットし、エンジンを消す。
車内からはエンジンの音が消えて本当の静寂だけが残された。
彼女が突然後ろから抱き着いてきた。
しかし僕にとっては嫌なことではなかったが、これによって何かが解放された気がする。
彼女は小声で
「よく頑張った。」
と優しい声で言った。
僕の抑え込んでいた恐怖、不安、悲しみが一気に噴き出して、意図せず涙があふれ出てきた。
そして僕は思いっきり泣いた。
全ての感情を洗い流すように。
その間、彼女はただ優しく僕を抱きしめてくれた。
雨粒が車体をたたき始めたのは丁度その時だった。
15才少年の新生世界の警察は規模が大きすぎて途中で破綻したので連載をやめます。似た系統の作品に再挑戦してみようと思うのでこれからよろしくお願いします。一話目からかなり多くなったので文章がスリムになるよう努力します。