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お題シリーズ

物語の始まり 眠り姫

作者: 透坂雨音



 ずっとずっと長い時間、眠りについていた。

 私が最後に起きていた時から、どれだけ時間が経ったのか分からない。


 きっともうこの世界では、私の友人や家族は生きていないだろう。


 世界救世の眠り姫。

 この世界のこの時代では、そんなおとぎ話がはやっているらしい。


 世界が危機に陥った時、その世界を救うために一人の姫が眠りについた。

 眠りにつくとき、この世界はが夢の世界だったという事が分かった。

 だから、何もしなければ誰かの目覚めによって消失する運命にあった。


 けれど、私が眠りにつくことによって、誰かの目覚めは阻止された。

 そして、大勢が生きるこの世界は、今も救われている。


 そんな私が目覚めたのは、他に眠り姫の候補となる人間があらわれたからだ。

 一人の人間が眠れる時間には限りがある。

 だから、世界を存続させるために、次は他の人に眠ってもらわなければならない。


 それも早急に。


 なぜなら、期限がある。

 時間がないのだ。


 これから一年間。

 その間に、その候補の人間を見つけて眠りについてもらわなければ、この世界は夢の世界として消えてしまうだろう。


 私は何とかして、その人間に、様々な試練を課して絶望してもらわなければならない。

 この世界に未練がなくなれば、眠りについてくれるだろうから。


 この世界に絶望した人間がこの世界を守る。

 眠り姫の責務は、なんという皮肉なものだろう。

 けれど、未練さえなければ、これから見つける誰かは、一千年にも至る長い長い眠りの責務を喜んでくれるはず。


 夢の世界は優しい。

 現実では与えられなかった幸福を与えてくれる。


 会えない人にも会える、生きたいところにもいける。できない事なんてない。


 私は、次の眠り姫を探すため、世界のどこでも見渡せる水晶を覗き込んだ。

 そこに映ったのは……。




「「「お誕生日おめでとう」」」




 大勢の人たちに囲まれて幸せそうに笑う一人の少女。

 私は&した。

 きっとこの幸せな彼女なら、必ずこの世界に絶望してくれる。


 私は寝起きのけだるい体で思考を巡らせる。

 さて、この少女の回りにいる友人を、家族を、想い人をどうやってむごたらしく消し去ってみせようか、と。



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