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黒兎

作者: あああ

 混雑した電車の中で私は友達の愚痴を聞いていた、と言っても最初の方だけ。

 愚痴をなんで友達に喋るのか。カウンセラーにでも聞いてもらえばいいじゃないか。

なんで私に言うの。こんなことに金を費やしたくない気持ちは分からないわけでは無いよ

でもカウンセラーとは違い、私は感情を抑えるプロじゃない。「君が悪い」なんて言いたいこともいえないこの辛さは、体のどこかで微かに溜まり始めていた。


 休憩時間は皆、仲の良い人達と遊んでいた。

「おい、まてよー」と、鬼ごっこをしていた男が私の机にぶつかった。男の友達は「うわぁ、きっも。絶対あいつの菌ついてるだろ。」って言った。

何とも言えないこの黒い吹き溜まりは、今度はしっかりと溜まっていた。


 家に着くと母親は居なかった。どうやらまた夜遊びに出かけているらしい。その代わりに兄と姉が居た。「帰ってくるなよ、いつもいつも目障りなんだよ。」と、イライラしているのが分かる声で兄が言った。「おかえり」でもなく、「まってたよ。」でもないこの言葉が、私の生活のあたりまえだった。

 姉が珍しく猫撫で声で私を呼んだ。躊躇したが、上機嫌な姉のままで居てほしかったので、姉の部屋に向かった。その部屋にあった、というより散乱していた洋服が目に入った。嫌な予感は的中した。「これ整理しといて。」彼女はそれだけ言って、香水のきつい匂いをまき散らしながら出かけて行った。吐き出したいその感情は、声にならなかった。


 片付けも終わり、勉強を始めようとしていたら、母親が酔いながら帰ってきていた。また二、三回ぶつけたのか、飲酒運転をした車は車体がへこんでいた。

 「おい、ガキぃ。いつまで待たせてるんだ。食わせてやってるんだからそれ相応ではたらけぇ。」酔いながらの暴言。間違いなく母だった。いや、母と言っていいのかすら分からない人間が来た。「ごめんなさい。急いで食事を出します。」


 この黒い感情は、もう抑える事ができなかった。鍋が沸騰してピーと甲高い音を出している。

 キッチンの包丁を持ち出して、母親を背後から刺し殺した。次に兄、姉の順番で殺した。


 返り血を浴びたので、顔を洗いに鏡面の前に立った。

そこには、毛並みが赤黒く、目が真っ赤に充血し、手が小刻みに震えている、黒い兎が居た。


 表情は  笑っていた。


読んでいただきありがとうございます

黒兎はあなたの中にもいます

兎肉の焼き鳥って焼き鳥じゃないんですけどなんだか美味しそうですよね

是非、なかよく美味く付き合いましょう

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