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忘れられない日々




 今日も朝から怪我人の状態を見るために、ミカさんのいる教会へ向かう。 


 身を切るような寒さに体を震わせながら坂を下る。 するとこの前炊き出しをしてた広場が見えてきた。 


 どうやら広場には誰も居ないみたいだ、俺はそのまま広場を横切ろうとすると、広場の入り口の柱にアレクさんが寄り掛かっているのがわかった。



 「おはようございます」



 俺はとりあえず挨拶をしてそのまま進もうとするがアレクさんは眉間にシワを寄せてこちらをじっと見ている。 昨日はネルさんと喧嘩してる所しか見れなかったけど、意外と若いんだなネルさんと同い年くらいだろうか頭は坊主で顔は彫刻みたいに堀が深い。 身長が2mをゆうに超えるぐらいだから威圧感が半端じゃない。



 「なにか?」


 「新入りのサナトだな、ついて来い」


 「え、俺はネルさんの所に行かないといけないんですけど」


 「ネルにはもう俺から話したし、今日はミカの体調が悪いから1日中ネルは看病で忙しいだろう」


 「そうですか、じゃあ行きます。 何するんですか?」


 「食材の調達だ、さらにこの街を下っていく。 今日は俺とアイラとお前3人で行動する、俺の言うことをよく聞けよ」


 「はい!」



 アレクさんの隣の小さな女の人は下級街でも見た事ないほどの汚れた服を着ていて、長い髪は全て汚れでタワシの様に髪が固まり逆立ってトゲトゲしている。



 「その人がアイラさんですか?」


 「そうだ。 王国の将軍キルギスに両親を殺されてな、そこからずっと目の焦点も合わずに廃人のような生活をしている。 俺の言うことは聞くからたまに体を洗ったり、こうして簡単な事を手伝ってもらっている」



 アイラさんの手には今とは違う満面の笑顔のアイラさんと両脇にアイラさんを守るように微笑む両親との写真がボロボロになりながらもしっかりと握られていた。 



 「アイラはまだキルギスに両親を殺された日から時間が進んでないんだ。 ずっと幸せな親との日々を忘れずに思い出しているんだろう」



◆◆◆◆◆◆◆◆



 3人で坂を下っていき道すがらなにも危険な事はなく、スムーズに歩き続け夕方には一軒の小屋に着いた。



 「じじい、入るぜ」



 アレクさんは返答を待たずに小屋のドアを開け中に入り、それに続いた。 小屋の中にはベッドと机と椅子しか無く簡素な作りで、その椅子に相当歳を食っている白髪のおじいちゃんが腰をかけていた。



 「おお、よくきたな、アレクにアイラよ」


 「イルじい、今日は新入り連れてきたぜ、サナトって言うんだ」



 アレクさんに紹介されて会釈をしてから挨拶をする。



 「こんばんわ、イルさんっていうんですか?」


 「イルムじゃよ、ワシの名前はイルムじゃ」


 「イルじいは喋りだすと止まらないんだからあんまり話しかけるなよな、早く食材を出してくれよ」


 「わかっとるよ」



 そう言うと、イルムさんは机の上に手をかざし、目を瞑ると一瞬光と共に机の上が野菜と、果物でいっぱいになった。









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