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ネルとミカ




 「おはようございます」



 1度家に戻って寝てから再び空き地に向かった。 昨日の夜はあんなに人が居たのに今は誰も居なくてなんだか余計に寒く感じた。



 「ネルさんはもう先に、病人の所に行ってます。 そこまで案内しますんでついてきてください」



 空き地に入った俺に声をかけてきた男の言う通りに俺は後をついて行き、所々穴は空いては居るが白い丸のマークがあるから恐らく教会だろう。


 この国の教会にはどこかに白い丸のマークを付けるのが決まりだ。


 教会の中に入ると想像していた場所とは違い、祈りを捧げるはずの椅子には病人が横たわり、怪我人の血のついた包帯がゴミ箱いっぱいに入っている。



 「これはこれは良く来てくれました、ボトムサンズの方ですね、私は牧師のアルサラン

と言います。 私は祈る事と簡単な手伝いしか出来ず、歯痒いですが出来る限りの事はします」


 「よろしくお願いします」



 アルサランさんは俺と同じ180ぐらい身長はあるが、体が細くあまり頼りになる感じはしなさそうだ。 


 雰囲気は天使のアロイに少し似ててるな。 顔は大きな眼鏡が特徴的で鼻が随分と高かった。



 「さぁこちらへ、ネルさんが先に待ってます」



 アルサランさんに案内され、教会の講堂から別の部屋に入る。 そこには特に重傷を負った人々がうめき声を上げながら横たわっている。 その中に服に返り血を浴びながらも懸命に治療を続けるネルさんの姿があった。



 「サナト君! 遅いよ! 早くここの傷口押さえて!」



 言われるがまま負傷者の傷口を抑えるがどうも傷口の縫い方が雑だ。 これじゃまた傷が開いてしまう。



 「ネルさん、ここはもっと細く傷を縫っていかないとダメです。 見ててください」



 ネルさんから針と糸を借りて、傷口を細かく縫っていった。



 「すごい! 私の何倍も上手いよ」


 「ネルさん、ここは少し汚すぎますよ、負傷者がいるんだからもっと綺麗にしないと後、体を切るときは出来るだけ刃を火で炙って殺菌してからにしてください。 感染症が広まるのが1番怖いですからね」


 「わ、わかったよ、なんでそんなに医療に詳しいの?」


 「お母さんが下級街で医者の真似事のような事をやってそれであんまり多くはないですけど知識を教え込まれました」



 嘘は付きたくないが、医療隊の隊長ですとは当然言えないので嘘を付くしかない。

 


 「そうなんだね、じゃあ今日は私に教えながら手当てをしてくれない?」


 「もちろんです、俺に教えられる事ならなんでも」



 それからはネルさんに基礎的な事を教えながら負傷者の手当てに当たっていった。


 ネルさんは教えた事をすぐに覚えて途中からは俺と変わらないぐらいのペースで負傷者を手当てしていった。


 「君ならもしかしたら治せるかもしれない、少し来てくれる?」



 大体の負傷者の手当てが終わった頃ネルさんにそう声をかけられ、部屋にあった階段で2階に上がった。



 「これが私の妹」



 ネルさんがそう言って扉を開けた先にはベットに横たわる女の子の姿があった。



 「この子はミカって言って私と双子で生まれたの、私の方が少し先に生まれたからお姉さん。 それで2週間前までは元気だったんだけどいきなり倒れてそれっきり、目を覚さなくてサナトなら何かわからない?」


 「頑張ってやってみます」



 そうは言ったものの外傷以外は俺の技術じゃ見ようがないな、その時、胸と服がザラザラと擦れる感覚が襲う。 


 砂だ、砂が胸から少しずつ漏れ出している。 その砂に手をかざすと微かに操れる。


 その砂を思いつきでミカの前にかざすすると砂がゆっくりとミカの頬に触れて、またゆっくりと手に戻ってきた。


 その時何となくイメージが頭に入ってくる。 言葉では説明出来ないがなんとなく分かる。 ミカは全身をもう何かに侵されている、それを取り除く事が出来れば目を覚ますはずだがこの砂の力は大雑把すぎてそこまでは分からない。



 「ネルさんすみません、何かの病気だと言う事しか分からなかったです」


「やっぱり、病気なんだね、今妹だけじゃなくてボトムサンズの中でも何十人も同じ症状が出てるの」


 「それは大変だ。 早く何とか治療法を見つけないと」


 「そうだね、1秒でも早く見つけないと」



 そう言ったネルさんは寝たきりで痩せ細ってしまったミカさんの手を握り、優しい顔でミカさんを見つめていた。




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