黒液の主人
鎌を突き立てたミカさんの体は粉々になって風に乗って消えた。
「クソ! ベルトワルダ 一回休戦だ。 この黒液をどうにかしないとこの国全体が死んでしまう」
「もちろん私もそのつもりだよ、さてでもどうするか、私の力もこの黒液には効かないし。 蒸発させるにしても死ぬほど時間がかかる出来ないとは言わないが」
「俺がまず教会の中に入って様子を見に行く。 死んだらベルトワルダが俺を引っ張り出してくれ、そうすればセピアが俺を生き返らせられる」
「あんたの能力はセピアとセットでの生き返りだったわね、気持ち悪い能力ね。 さっさと行きなさい。教会内だったら私の能力の範囲内だから、あなたの首が飛んだり、足がなくなったり手が無くなったりしたら引っ張り出してあげるわ」
「出来ればそんな重傷になる前に頼むよ」
俺は黒液の中に片腕を肩まで入れてみる。 腕が溶けるかと思ったらそんな事はなかった、ただの水みたいな感覚だ。
そのまま黒液の中に入っていく。 多少暗くなったけどいつもの教会の中とは何ら変わらない。 でもここに居たはずの負傷者達が居なくなっている。 というかここはメソンそのものだ生と死の狭間。 やっぱりこの黒液はメソンと同じ物質で作られているのかも知れない。
とりあえずは二階のネルさんが寝ていた所に行ってみるか、無事だと良いけど。
二階の階段を水中を泳ぐようにして上がっていく。 水中なのに息が出来る変な感覚だ。 二階の廊下を抜けて突き当たりのネルさんが寝ている部屋の扉を開ける。
「ネルさん!」
そこにはベッドにいつものように寝ているネルさんの姿があった。 俺は思わず声を上げてベッドに駆け寄った。 元々昏睡状態だったネルさんはこの状態を何も知らないように安らかだ。 とりあえずベルトワルダに連れ出してもらおう。
自分の腕を鎌で跳ねるとグッと体を一気に引っ張られて、一瞬で二階の窓を突き破りさっき居た教会の入り口まで連れてこられた。
「何その女の子は?」
「ミカさんが命を落としてまで助けたかった妹のネルさんだよ」
「そうなんだ。 でもこの子死んでるじゃない。 心臓はかすかに動いてるけど脳が動いてない」
「え? 嘘だよ。 私が前に助けたもん寝てるだけだよ」
そう言ってセピアは自分でも確かめる為にネルさんに手を当てた。
「本当だ。 命が宿ってない。 植物と同じみたい」
「結局姉妹揃って死んじゃってバカみたいね」
しばらく俺達は黙り込んでただ黒液を見つめていた。
「君達よく来たね」
そこには黒液から悠々と出てくるアルサラン牧師の姿があった。
「アルサランさん! 何をしてるんですが?」
「なにって、救済だよ」
「救済?」
「そう救済。 この黒液を使って生きてる人間を全員殺して、生の苦しみから解放する。 それが私の目的だ」
「貴様。 自分が何をしてるのか分かってるのか? 潔く死ね!」
ベルトワルダは空間を操作してアルサランの体を服を畳むように織り込んだ。 アルサランの体は何事もなかったように、元に戻っていった。 それは俺が生き返る時とまさに同じだった。




