開戦
17話 開戦
戦いの準備をしている間にすっかり夜が開け日が昇った。
下級街の広場では最後の炊き出しが行われていた。
「今日は最後の炊き出しになるかもしれないからな、大盤振る舞いだ!!」
アレクさんはそういって大盛りの野菜と市場から昨日の夜、セピアの有り金全てを突っ込んで買った肉を炒めている。 そしてその横でいつも通りアイラさんが並んでいる人達に野菜炒めを配っている。
「セピア今からでも城に帰らなくて良いのか? まだ間に合うかもしれないぞ」
「今さら帰るわけないでしょ。 姉さんは必ず戦場に出てくる。止められるのは私だけ、そこで訳を話してどうにか姉さんを和解に乗り気にさせないと姉さんが本気になったら下級街全てがさら地になるかもしれないからね」
「王国最強かベルトワルダはそんなに強いのか?」
「強いとかそういうレベルじゃないよ、姉さんは力そのもの正面から戦ったらまず勝てないね、サナトの鎌がもし当たれば姉さんも死ぬだろうけど流石にやめてほしいかな、一応姉だから」
セピアは冗談っぽく笑みを見せながらそう言った。
「そんな事するわけないだろ、多分鎌が当たらないし、それよりその黒くなった腕戦いの前にどうにかしないと」
「うーん、これかもう良いよ包帯で隠せば見えないし! それともサナトは私がこんな真っ黒の腕じゃ嫌だ?」
「嫌なわけないだろ! でも申し訳なくてさ、そうだ、黒化を吸い取れるなら俺に移す事は出来ないか?」
「出来ると思うけどその後サナトはどうするの?」
「そんなの勿論決まってるだろ」
セピアは少し考えてハッと気づいたように声を出した。
「死ねば良いのか!」
「そう、その通り! さっそく俺に黒化を移してくれ後3時間で12時だから早くしないと」
「わかった!」
セピアは黒化した腕で俺の手を繋ぎ、黒化を移し始めた。 俺は黒化が自分の腕に全て移ったのを確認すると鎌を出して自分の胸を鎌の刃で貫かせた。
意識が落ちるように目を瞑り、再び目を開けた。
「サナト! 寝すぎだよ! もう10回は戦いに巻き込まれて死んでるよ!」
俺が起きた先は確かにさっきと変わらない広場だっただが、そこにはみんなで野菜炒めを食べている幸せな風景は無くて、あちこちの建物からは煙と火が出ていてこの広場では兵士とボトムサンズの人が入り混じって血みどろの戦いを繰り広げていた。
そして俺の目の前には俺を庇いながら戦うアレクさんとアイラさんと俺を抱き抱えるセピアの姿があった。